宮醤油店 ― 城下町佐貫で醤油を造り続ける蔵元
宮醤油店は、千葉県富津市佐貫にある天保5年(1834年)創業の醤油醸造元で、敷地に建つ店舗・蔵・住まいの9棟が平成19年(2007年)にそろって国の登録有形文化財に登録された。読みは「みやしょうゆてん」。商標は「タマサ印」で、店の名よりも「たまさ醤油」で覚えている地元の人も多い。
佐貫は、上総国佐貫藩一万六千石の城下町だった町である。宮醤油店はその町なかで190年余り醤油を造ってきた。千葉県教育委員会の解説によれば、宮家の先祖は伊勢の出身と伝えられる。
製法は、人工的な温度管理をしない天然醸造である。木桶に仕込んだもろみを季節の気温にまかせて熟成させるので、仕込みの時期も熟成の速さも気候に左右される。同社の沿革によると、昭和28年(1953年)に有限会社となり、原料処理から製麹、圧搾、瓶詰めまでの設備を段階的に更新しながら、いまも自社で醤油を仕上げている。
登録された9棟 ― 江戸末期から大正末年まで
宮醤油店の9棟は、平成19年(2007年)7月31日付で登録され、同年8月13日に官報で告示された。登録番号は12-0073から12-0081までの連番である。同社の沿革はこの登録を同年12月の出来事として記しているが、日付は文化庁の記録に従った。
登録基準は、9棟のうち8棟が「国土の歴史的景観に寄与しているもの」。離れだけは座敷の造作の質が評価され、「再現することが容易でないもの」として登録されている。
建てられた時期は、およそ一世紀にわたる。
- 江戸時代末期(文化庁の記録では1830年から1867年の間):店蔵
- 明治5年(1872年):西蔵
- 明治25年(1892年):店舗、脇蔵、主屋
- 明治40年(1907年):旧米蔵、東蔵
- 大正8年(1919年):奥蔵
- 大正14年(1925年):離れ
明治25年は、同社の沿革に「店舗新築」と書かれた年でもある。この年の1月に新しい店舗が落成し、記念の大売り出しが開かれた。店の顔と主屋、脇の蔵が同じ年に整ったことになる。
敷地の配置 ― 通りから奥へ
宮醤油店の敷地は県道に北面している。通りに沿って西から店蔵、店舗、脇蔵の3棟が並び、文化庁の解説はこの3棟が一体となって重厚な表構えを形づくると評している。通りから見えるのは、主にこの表側である。
奥は用途ごとに建物が分かれる。店舗の南には主屋が連続して建ち、その西に家財をしまう奥蔵、南西に座敷の離れが置かれる。主屋の南には中庭を挟んで大きな西蔵がある。東側では、脇蔵の南に旧米蔵、さらにその南に東蔵が続き、醸造の蔵が南北に一列をなす。
同じ土蔵造でも、屋根の骨組みには違いがある。店蔵・西蔵・奥蔵は伝統的な和小屋で組まれているのに対し、脇蔵・旧米蔵・東蔵の小屋組はトラスの形式をとる(文化庁の記録)。明治25年の脇蔵の時点で洋式の小屋組が入っていたことになり、地方の蔵元が新しい技術を取り入れていった跡が建物に残っている。
蔵の多くは今も仕事場である。西蔵には木樽が8つ据えられ、東蔵は9つの木樽を置く諸味蔵として使われ、旧米蔵は米蔵から醤油蔵に転用されている。登録された建物が保存のための器にとどまらず、醸造の現場として使われ続けていることが、宮醤油店の敷地のいちばんの特色である。
見学方法とアクセス
宮醤油店の店舗は営業中の売り場で、誰でも入って醤油を買うことができる。富津市観光協会の案内では、営業時間は午前8時から午後6時(休日は午前9時から)、休業日は元日のみとされる。工場見学は無料で、定員は50名。事前の予約が望ましいが、当日でも受け付けるとある。工場は土曜・日曜・祝日が休みなので、仕込みの現場を見たいなら平日を選ぶのが確実だろう。台風の接近時などには臨時休業することがあり、同社の公式Xで告知される。
主屋・離れ・奥蔵は宮家の住まいに属する建物で、公開されていない。店や蔵の周りで写真を撮りたいときは、作業の妨げにならないよう店の人にひと声かけてからにしたい。
電車ではJR内房線の佐貫町駅で降り、徒歩12分ほど。車の場合は館山自動車道の富津中央インターチェンジから国道127号を佐貫町駅方面へ約3分で、駐車場には普通車10台、または大型車3台まで停められる(いずれも富津市観光協会の案内による)。
参考文献
- 文化庁 国指定文化財等データベース「宮醤油店店舗」
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00006514
- 千葉県教育委員会「宮醤油店店舗ほか」
- https://www.pref.chiba.lg.jp/kyouiku/bunkazai/bunkazai/q111-074.html
- 有限会社宮醤油店 公式サイト
- https://www.miyashoyu.co.jp/
- 有限会社宮醤油店「会社概要」(沿革)
- https://www.miyashoyu.co.jp/profile.html
- 富津市観光協会「有限会社宮醤油店」
- https://www.futtsu-kanko.info/places/miyashoyu/
最終更新日: 2026.09.26
基本情報
| 名称 | 宮醤油店 |
|---|---|
| 所在地 | 千葉県富津市佐貫字西正石247 |
| 所有者 | 個人 |
| 指定 | 登録有形文化財 9件 |
| 座標 | 35.26183, 139.88546 |