長浜の港に建つ回漕店の店舗兼住居
末永家住宅旧主屋は、愛媛県大洲市長浜甲309にある明治17年(1884年)建築の商家建築で、平成15年(2003年)1月31日に登録有形文化財に登録された。
長浜は肱川が伊予灘に注ぐ河口の町である。大洲盆地から川を下ってきた木材や木蝋、和紙、米はこの地で川船から海船へ積み替えられた。末永家は代々その積み替えを担う回漕業を営み、長浜きっての資産家となった家である。
末永家住宅旧主屋の1階は、家業である末永商店の店舗と住居を兼ねてつくられている。2階は当初は物置で、のちに天井を張って居室に改められた。外から見上げたときに上下の階の性格がそろわないのは、はじめからそろえるつもりで建てていないためである。
構造は土蔵造。本来は蔵に用いる厚い塗り壁の工法を2階建の主屋に持ち込み、屋根は瓦葺、建築面積は177平方メートルを測る。文化庁の記録は、棟梁を地元の隅田弥太郎と伝える旨を記している。
登録が評価したもの
末永家住宅旧主屋の登録番号は38-0037、登録基準は「造形の規範となっているもの」である。間取りそのものに珍しさはない。評価の中心は外壁の扱いにあり、日々商いをする店構えに、防火のための蔵の仕上げを与えたうえで、さらに装飾を重ねている点にある。
1階には石を用いる。その上、2階の腰部にはなまこ壁を張る。平瓦を並べ、目地を白漆喰で盛り上げて格子状に走らせる仕上げである。2階の屋根を受けるのは持ち送りで、窓廻りは漆喰細工で立体的に造形されている。主要な壁面は黒漆喰、開口部には格子が入る。
内陸の内子町で商家の並ぶ通りを歩いたことがあれば、この語彙には見覚えがあるはずだ。本芳我家住宅も、格子付窓、黒漆喰、なまこ壁という同じ組み合わせを用いている。ただし長浜には保存地区も町並みの連なりも残っていない。末永家住宅旧主屋は、かつてこの沿岸で広く行われた造りを、いま単独で示す一件である。
文化庁の解説文は、外観に加えて「内部装飾にも見るべきものがある」と書き添えている。台帳の記述としては珍しい言い方で、内側の造作が付け足しの扱いを受けていないことをうかがわせる。
建物の見どころ
できれば午前中に訪ねたい。正面は東からの低い光が壁を斜めに舐める向きに立っており、なまこ壁の格子は目地が影を落としてはじめて形になる。真昼の光では灰色の網目に見えてしまう。
持ち送りは、木組みをそのまま露出させたものではない。漆喰で包んで形を整えてあり、木と塗りの境目が消えている。窓廻りも同じ手つきで、漆喰を盛り上げて枠をつくり出している。時間と費用を与えられた左官の仕事であり、末永家住宅旧主屋はその両方を出せる家の建物だった。
敷地は通りから奥へ延びる。末永家住宅旧主屋の背後、敷地北側には昭和2年(1927年)の百帖座敷が建つ。木造平屋建の接客用の建物で、同じ日に別件として登録されている。表に商いの顔、奥に客をもてなす座敷という配置を、43年の隔たりごと順に見ていくと、それぞれの役割がはっきりする。敷地全体は「百帖浜屋敷」の愛称でも案内される。
敷地内の広場には、末永家と長浜の海運についての解説パネルが置かれ、回漕店が動いていた当時の写真も見られる。
末永家住宅旧主屋の見学方法
敷地は毎日午前9時から午後5時まで開いており、入場は無料である。年末年始は12月29日から1月3日まで閉まる。駐車場がある。
末永家住宅旧主屋の外観は敷地の内側から間近に見ることができ、左官仕事を見るならこの距離が要る。内部は随時公開ではないため、中を見たい場合は大洲市の文化財担当課(電話0893-57-9993)に事前に相談してほしい。所有者は大洲市である。
屋外の撮影に制限はなく、広場の解説パネルも自由に読める。内部の撮影、三脚の使用、業務目的の撮影については、事前に市へ確認すること。
鉄道ならJR予讃線の伊予長浜駅から徒歩約10分。駅を出て河口と旧市街の方向へ歩けば、港の街路の内陸側にあたる。車の場合は大洲市街から国道378号が肱川沿いに海まで下る。肱川に架かる赤い可動橋、長浜大橋までは徒歩で数分の距離で、この港が何を運んでいたかを考えるにはあわせて見ておきたい。
Q&A
- 末永家住宅旧主屋は見学できますか。開いている時間と料金は?
- 見学できます。敷地は毎日午前9時から午後5時まで開いており、料金は無料です。12月29日から1月3日までは閉まります。
- 末永家住宅旧主屋へのアクセスは。最寄り駅から何分かかりますか?
- JR予讃線の伊予長浜駅から徒歩約10分です。車の場合は大洲市街から国道378号を長浜方面へ。敷地に駐車場があります。
- 末永家住宅旧主屋の内部は公開されていますか?
- 内部は随時公開ではありません。大洲市の文化財担当課(電話0893-57-9993)へ事前にお問い合わせください。敷地と外観は手続きなしで見学できます。
- 末永家住宅旧主屋は写真撮影できますか?
- 敷地からの外観撮影に制限はありません。内部の撮影や三脚の使用、業務目的の撮影は、事前に大洲市へご確認ください。
- 末永家住宅旧主屋はいつ建てられ、何に使われていた建物ですか?
- 明治17年(1884年)、長浜で回漕業を営んだ末永家が建てました。1階は末永商店の店舗兼住居、2階は当初物置で、のちに天井を張って居室に改められています。
基本情報
| 名称 | 末永家住宅旧主屋 |
|---|---|
| 所在地 | 愛媛県大洲市長浜甲309 |
| 指定区分 | 登録有形文化財(建造物) |
| 指定年 | 平成15年(2003年)1月31日登録 |
| 員数 | 1棟 |
| 寸法 | 建築面積177平方メートル、土蔵造2階建、瓦葺 |
| 所有者 | 大洲市 |
| 公開状況 | 敷地は午前9時から午後5時まで公開、無料。内部は事前問合せ |
参考文献
- 文化庁 国指定文化財等データベース「末永家住宅旧主屋」
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00003160
- 大洲市「わがまちの文化財 末永家住宅旧主屋」
- https://www.city.ozu.ehime.jp/site/bunkazai/0272.html
- 大洲市公式観光情報 VisitOzu「末永家住宅旧主屋」
- https://jp.visitozu.com/archives/highlight/182
最終更新日: 2026.09.05