八畳ほどの床面積をもつ天守の正面

松山城玄関は、愛媛県松山市丸之内にある松山城本壇で玄関多聞櫓の南面に接続する木造平屋建の建物で、2019年9月10日に登録有形文化財に登録された昭和期の復元建造物である。

建築面積は8.9平方メートル。松山城の登録建造物16棟のなかで最も小さく、五畳ほどの広さしかない。もっとも、この建物に何かを収める役目はなかった。玄関とは格式ある者が外気から建物の内へ移る地点を示す装置であり、造作のすべてがその一点に費やされている。

構成は単純で、来訪者を迎える式台と、そこから玄関多聞櫓へ上がる階段からなる。両者にひと続きの屋根をかける。先代の玄関は昭和8年(1933年)の放火で本壇の他の棟とともに焼失した。現在の建物について、文化庁の国指定文化財等データベースは建築年代を昭和42年(1967年)と記録し、松山市は昭和43年(1968年)5月27日竣工としている。

玄関一棟が登録された理由

1996年に始まった登録制度は、国土の歴史的景観に寄与する建造物を対象とする。松山城で現存する21棟が受けている重要文化財の指定とは別の枠組みである。松山城玄関が登録されたのは、これが本壇という一組を完結させる部材だからだ。この一棟を欠くと、本壇は防御の箱を四隅に並べただけの構成になり、格式ある者がどこから入ったのかが読み取れなくなる。

復元の下敷きになったのは、昭和10年(1935年)の旧国宝指定の直後に文部省が作成した焼失9棟の基本設計である。焼ける前の実測に基づく図面であるため、装飾の細部まで昭和40年代の創作ではなく、幕末の姿を写している。

見どころ

まず屋根を見たい。上り勾配で立ち上がり、先端を軒唐破風で納める。うねる曲線をもつこの破風は、本来は寺院の入口や大名屋敷に使われるものだ。漆喰と下見板と狭間ばかりの山頂で、この一本の曲線だけが用途の違いを告げている。屋根は本瓦葺

式台は側面に壁を設けず開放してある。骨組みそのものが意匠になるという考え方で、正面の柱の上には虹梁が渡り、その上に蟇股が載る。小壁には筬欄間が入り、機織りの筬に見立てた細かい縦格子が並ぶ。

そして紋を探すとよい。松平家の三つ葉葵が、蟇股に、鬼瓦に、唐破風の先端から下がる兎ノ毛通しに、繰り返し現れる。江戸時代までの天守が残る全国12城のうち、瓦にこの紋をもつのは松山城だけである。藩主家が徳川家康の異父弟の系統にあたるためだ。9平方メートルに満たない玄関にそれを集中させたのは、明らかに意図された配置である。

見学方法

松山城玄関は本壇の内側に建ち、観覧順路が横切る中庭から眺める形になる。開場は午前9時から午後5時まで。8月は午後5時30分まで、12月と1月は午後4時30分までで、入場は閉場30分前に締め切られる。休みは12月第3水曜日のみ。観覧料は大人520円、小学生160円である。

山頂へは、松山市駅またはJR松山駅から伊予鉄道の市内電車で約10分の大街道電停で降り、徒歩5分のロープウェイ東雲口駅舎へ。ロープウェイとリフトは共通券で往復大人520円、小人260円。山頂駅から天守きっぷ売場までは徒歩約10分である。東雲口から歩いて登る場合は約30分をみておきたい。

個人の記念撮影に制限はない。建物が小さいため、中庭の反対側から標準的な画角で唐破風まで収まる。ライブ配信、ドローン、大型機材の使用は禁止で、営利目的の撮影は松山城総合事務所への事前申請が必要である。

Q&A

Q松山城玄関とはどのような建物ですか。
A天守の正式な入口にあたる建物です。来訪者を迎える式台と、玄関多聞櫓へ上がる階段からなり、両者に唐破風の屋根をかけています。
Q松山城玄関の大きさはどれくらいですか。
A建築面積8.9平方メートルで、松山城の登録有形文化財16棟のなかで最も小さい建物です。
Q松山城玄関は無料で見られますか。
Aいいえ。本壇の中庭に面しているため、520円の天守観覧券が必要です。無料で入れる本丸広場からは見えません。
Q松山城玄関にはどの家紋が付いていますか。
A松平家の三つ葉葵です。蟇股、鬼瓦、唐破風の兎ノ毛通しにあしらわれています。
Q松山城玄関は江戸時代の建物ですか。
Aいいえ。昭和8年(1933年)の放火で焼失し、現在の建物は焼失前の基本設計図に基づく昭和40年代の木造復元です。

基本データ

名称松山城玄関
所在地愛媛県松山市丸之内1
指定区分登録有形文化財(建造物)
指定年2019年9月10日 登録
員数1棟
寸法木造平屋建、瓦葺、建築面積8.9平方メートル
所有者松山市
公開状況本壇の中庭から見学可。午前9時から午後5時、観覧料520円

参考文献

文化庁 国指定文化財等データベース「松山城玄関」
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00012998
松山市「松山城玄関」(国登録文化財)
https://www.city.matsuyama.ehime.jp/kanko/kankoguide/rekishibunka/bunkazai/kunitouroku/shiro_genkan.html
松山城総合事務所「建築と文化財」
https://www.matsuyamajo.jp/discover/connection.html
松山城総合事務所「松山城の観覧ガイド」
https://www.matsuyamajo.jp/guide/

最終更新日: 2026.09.03