校庭の隅に積まれた川石の円錐
旧鈍川小学校二宮金次郎像台座は、愛媛県今治市玉川町鈍川にある昭和11年(1936年)の石造及びコンクリート造の工作物で、平成15年(2003年)1月31日に登録有形文化財(建造物)となった。登録の告示は同年2月26日。面積7.5平方メートルの1基で、所有者は今治市である。
置かれているのは鈍川運動公園の一角で、この運動公園は旧鈍川小学校のグラウンドをそのまま使っている。つまり台座は建てられた場所から動いていない。形が変わっている。角柱や方形の壇ではなく、丸い川石を積み上げて底辺およそ4メートル、高さおよそ3メートルの円錐状に立ち上げ、富士山の姿にならわせた。頂部からは細い円柱が伸び、その上に像を戴く構えになっている。
登録されているのは台座だけである。薪を背負って本を読む二宮金次郎の像そのものは登録の対象に入っていない。二宮金次郎、のちの二宮尊徳は19世紀前半に各地の農村復興に携わった人物で、その姿は勤勉と学びの象徴として全国の学校に置かれた。
使う人の手で積まれたということ
旧鈍川小学校二宮金次郎像台座が登録に至った理由は、記念する対象よりも、その作り方にある。文化庁の記録によれば、当時の校長と教師、そして児童が学校の下手を流れる川の河原へ下りて石を拾い集め、運び上げた。集まった玉石をモルタルで練り積みにして円錐に仕上げたのが、この台座である。
切り出した石はどこにも使われていない。業者に発注した部材もない。適用された登録基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」で、愛媛県の文化財紹介は、この台座が鈍川地区の目印であり続けてきたことに触れている。
正面には円形のレリーフが埋め込まれ、「恩」の一字が刻まれる。親や師、地域から受けたものを指す語である。子どもたち自身が運んだ石の山に、その一字を目の高さで据えた。教えを言葉で説く代わりに、石を積む労働そのものに置き換えたと見ることもできる。
石の積み方を見る
近づくと材料の素性がわかる。石はどれも角がとれて丸く、拳から頭ほどの大きさで、切石の平らな面がひとつもない。丸い石は横の筋を通して積めないため、隙間はモルタルで埋めるほかなく、その灰色の目地が円錐の全面に細かい網の模様をつくる。
横から回り込んでみたい。正面から見た旧鈍川小学校二宮金次郎像台座はきれいな三角形だが、側面に立つと裾がわずかに反り、火山の裾野のような曲線を描く。地面との際には、やや大きく平たい石が輪状に据えられて基礎をつくっている。
頂部の円柱も同じ川石で組まれているが、径が急に細くなる。その下のふくらみに「恩」のレリーフがはまる。背後にはグラウンドのバックネットが立っており、ここが保存を目的とした場所ではなく、今も使われている運動公園であることを思い出させる。
行き方と見学
屋外の公園にあるため、入場料も門も開園時間の設定もない。撮影の制限もない。ただしグラウンドは競技に使われているので、試合や行事のある日はプレー区域を避けて見学したい。
車なら今治市街から国道317号を南へおよそ30分、鈍川温泉郷へ向かう道の途中にあたる。公共交通ではJR今治駅前からせとうちバスの神子森方面行きに乗り、鈍川地区までおよそ40分。便数は少ないので、出かける前に時刻表を確かめておいたほうがよい。
登録上の所在地は今治市玉川町鈍川丙245-1である。地名の「鈍川」は「にぶかわ」と読む。旧鈍川小学校二宮金次郎像台座の英語表記でも Nibukawa を用いる。
Q&A
- 旧鈍川小学校二宮金次郎像台座は自由に見学できますか。料金は?
- 見学できます。鈍川運動公園の一角にあり、柵も料金も見学時間の設定もありません。グラウンドが使用されている日は、プレー区域を避けてください。
- 旧鈍川小学校二宮金次郎像台座へは今治からどう行きますか?
- 車では今治市街から国道317号を南へおよそ30分です。公共交通ではJR今治駅前からせとうちバスの神子森方面行きでおよそ40分ですが、便数が少ないため時刻表の確認が必要です。
- 旧鈍川小学校二宮金次郎像台座は像ではなく台座だけが登録されているのですか?
- そのとおりです。登録の対象は工作物としての台座です。昭和11年(1936年)に当時の校長・教師・児童が学校の下を流れる川から拾い集めた石で積み上げたもので、その造り方が記録されています。
- 旧鈍川小学校二宮金次郎像台座の大きさはどのくらいですか?
- 底辺およそ4メートル、高さおよそ3メートル、面積7.5平方メートルです。石造及びコンクリート造で、富士山にならった円錐状に積まれています。
- 旧鈍川小学校二宮金次郎像台座の正面にある文字は何ですか?
- 円形のレリーフに刻まれた「恩」の一字です。親や師、地域から受けたものへの感謝を指す語で、当時の道徳教育の中心にあった考え方を表しています。
基本情報
| 名称 | 旧鈍川小学校二宮金次郎像台座 |
|---|---|
| 所在地 | 愛媛県今治市玉川町鈍川丙245-1 |
| 指定区分 | 登録有形文化財(建造物) |
| 指定年 | 平成15年(2003年)1月31日登録 |
| 員数 | 1基 |
| 寸法 | 底辺およそ4メートル、高さおよそ3メートル、面積7.5平方メートル。石造及びコンクリート造 |
| 所有者 | 今治市 |
| 公開状況 | 屋外の公園内で常時見学可。見学料なし |
参考文献
- 文化庁 国指定文化財等データベース 旧鈍川小学校二宮金次郎像台座
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00003150
- 愛媛県 えひめの文化財(たから) 旧鈍川小学校二宮金次郎像台座
- https://www.pref.ehime.jp/ehimenotakara/612.html
- 文化遺産オンライン 旧鈍川小学校二宮金次郎像台座
- https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/187880
- 今治市 住所表示一覧(町名の読み)
- https://www.city.imabari.ehime.jp/siminka/jukyohyoji/jukyohyoji.pdf
最終更新日: 2026.09.05