山あいの酒蔵に立つ高さ20メートルの煉瓦煙突
佐々木酒造煉瓦煙突は、愛媛県伊予郡砥部町総津にある明治後期の煉瓦造煙突で、2004年に登録有形文化財となった。主屋の南西に位置する醸造蔵、その南端から高さ20メートルの塔が立ち上がる。周囲にこれより高いものは、しばらく歩いても見当たらない。
総津は砥部町の山間部にあたる。町の名を知られた窯場からはかなり南へ入った場所で、谷は狭く、家々の背は低い。そこに20メートルの煉瓦の塔が立てば、何のための建物かを知る前から目印として働く。文化庁の解説もその点を書いている。国道からも容易に確認でき、地区の目印的な存在になっている、と。
明治は1868年から1912年まで。この煙突はその後半に建てられたと記録されるが、国指定文化財等データベースにそれ以上細かい年は載っていない。
佐々木酒造煉瓦煙突が登録された理由
登録基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」。佐々木酒造煉瓦煙突の登録年月日は2004年3月2日、告示は同年3月29日で、登録番号は38-0060である。分類は建築物ではなく工作物、種別は産業2次。住宅や社寺とは別の引き出しに入る、産業設備としての登録である。
この種の煉瓦煙突は、かつての日本の酒蔵にとって当たり前の設備だった。薪や石炭を焚くボイラーには通風が要り、通風を得るには高さが要る。20世紀を通じて燃料が変わり、蔵の統合や廃業が進むと、多くの煙突は姿を消した。使われない組積造の煙突は地震国では危険物であり、維持にも金がかかるからである。残っているものは、たいてい蔵が動き続けたから残った。
2004年3月2日の同じ登録では、佐々木酒造主屋も対象になっている。1908年頃の建築で、木造2階建、瓦葺、建築面積は165平方メートル。煙突と主屋はひとつの稼働する施設の一部として評価されており、煙突の解説が周囲の建物を基準に位置を説明しているのはそのためだ。登録有形文化財は建造物を保護するが、敷地を博物館に変えるものではない。
佐々木酒造煉瓦煙突の見どころ
まず足元から見たい。佐々木酒造煉瓦煙突の基部は方形で、国指定文化財等データベースは一辺の幅を煉瓦の長手6枚半と記録している。日本の並形煉瓦の長手はおよそ21センチだから、一辺は1.4メートル前後になる計算だ。ここから上へ細くなっていくのだが、その逓減は直線的な円錐ではない。緩やかなカーブを描き、絞られては緩み、また絞られる。
面白いのは頂部の積み方である。上端で平らに納めず、煉瓦の段を一段ずつ外へ持ち出して積み、柱頭の飾りに似た広がりをつくっている。煙突の天辺は遠くからいちばんよく見える部分で、職人が手を入れるのはそこだ。おかげでこの煙突は、谷底からでも案内板を読まずに見分けがつく。
横から日が差す時間帯には、煉瓦そのものも見ておきたい。この時期の手作り煉瓦は焼きの回ごとに色が振れる。加えて、上へ細くなる塔の目地は、一段ごとに切り方と詰め方を変えなければ通らない。まっすぐな壁が許してくれる誤差が、ここにはない。
佐々木酒造煉瓦煙突の見学方法
佐々木酒造煉瓦煙突は酒造の私有地に立っており、見学できるのは外観のみである。内部に入ることはできず、料金の設定もない。塔が高いので敷地の前を通る公道からも見え、姿を眺めるだけなら敷地に入る必要はない。公道からの撮影に制限はない。
砥部町はこの場所を「陶街道五十三次」の29番「佐々木酒造の主屋と煉瓦煙突」として案内しており、ルートのスタンプ台が玄関横に置かれている。町の案内は営業時間・定休日をいずれも「不定」とし、駐車は2台分と記す。中を見せてもらいたい場合は、いきなり訪ねるのではなく、電話(089-969-2005)で先に確認するのが確実である。
住所は愛媛県伊予郡砥部町総津785。砥部町中心部から南の山へ入った旧広田地区にあたり、松山市街からは南へ向かう国道経由で車でおよそ1時間。近くに鉄道駅はなく、谷筋のバスも本数が限られるため、自動車で向かうのが現実的である。
Q&A
- 佐々木酒造煉瓦煙突は見学できますか。料金はかかりますか。
- 見学できるのは外観のみで、料金はかかりません。酒造の敷地内に立っていますが、塔が高いため、敷地外の公道からも姿を見ることができます。
- 佐々木酒造煉瓦煙突の高さと建てられた時期を教えてください。
- 高さは20メートル、建築時期は明治後期、つまり1912年より前の数十年のうちです。国指定文化財等データベースには、これ以上正確な年は記載されていません。
- 佐々木酒造煉瓦煙突はいつ登録有形文化財になりましたか。
- 2004年3月2日に登録有形文化財として登録され、告示は同年3月29日に出ています。佐々木酒造主屋も同じ日に登録されました。
- 佐々木酒造煉瓦煙突に駐車場はありますか。
- 砥部町の案内では駐車は2台分です。この場所は町の「陶街道五十三次」の29番にあたります。営業時間が不定のため、わざわざ訪ねる場合は電話(089-969-2005)で先に確認してください。
- 佐々木酒造煉瓦煙突ではどこを見ればよいですか。
- 一辺が煉瓦の長手6枚半という方形の基部、緩やかなカーブを描く逓減、そして煉瓦の段を外へ持ち出して柱頭飾りのような形をつくった頂部です。
基本データ
| 名称 | 佐々木酒造煉瓦煙突 |
|---|---|
| 所在地 | 愛媛県伊予郡砥部町総津785 |
| 指定区分 | 登録有形文化財 |
| 指定年 | 2004年(平成16年)登録 |
| 員数 | 1棟 |
| 寸法 | 高さ20メートル |
| 所有者 | 不明(国指定文化財等データベースに所有者名の記載なし) |
| 公開状況 | 外観のみ見学可。内部は非公開で、敷地は私有地。 |
参考文献
- 国指定文化財等データベース(文化庁)佐々木酒造煉瓦煙突
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00004059
- 国指定文化財等データベース(文化庁)佐々木酒造主屋
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00004058
- 砥部町 陶街道五十三次(二十七から三十九)
- https://www.town.tobe.ehime.jp/kankosaito/access/tobe_toukaidou/3856.html
- 砥部町 陶街道五十三次一覧
- https://www.town.tobe.ehime.jp/soshikikarasagasu/shoukoukannkouka/kankou/tobe_toukaidou/3726.html
最終更新日: 2026.09.05