愛山荘とは

愛山荘は、福井県越前市若竹町にある大正5年(1916年)建築の邸宅で、主屋・離れ・蔵座敷・茶室など9件が平成29年(2017年)に登録有形文化財に登録された。読みは「あいざんそう」。「越前富士」とも呼ばれる日野山がよく見える土地であることから、山を愛でる家としてこの名が付いたとされる。

ハピラインふくいの武生駅から南西へ入った市街地に、5,000平方メートルを超える敷地を構える。北の端に主屋が建ち、南へ向かって蔵座敷と石蔵が廊下でつながり、東寄りの庭に茶室と待合、街路に面した西側に2棟の土蔵と門が並ぶ。

ひとつの家が、大正5年(1916年)から昭和17年(1942年)までの四半世紀あまりをかけて少しずつ建て増され、いまの構えになった。大正期の数寄屋風の住まいに、昭和初期の蔵座敷や石造の蔵が加わっていく過程を、1か所でたどれるのが愛山荘の面白さである。

成り立ち

文化庁の登録データで年代を並べると、いちばん早いのは主屋で、大正5年(1916年)の建築である。一の蔵・二の蔵・門及び塀と、離れのうち「旧離れ」と呼ばれる六畳一間も同じ頃に建てられた。もとは個人の邸宅として営まれた家である。

昭和3年(1928年)には主屋の南西に蔵座敷が建ち、同じ頃に茶室と腰掛の待合が庭に加わった。昭和11年(1936年)には敷地のいちばん南に笏谷石を積んだ石蔵が建ち、昭和17年(1942年)には離れが増築されている。茶室と待合は昭和後期(1966年から1989年のあいだ)に改修を受けた。

その後、愛山荘は持ち主を替えながら維持されてきた。現在の所有者は小野谷機工株式会社である。一時は老朽化が進んだが、修復を経て2025年11月4日に料理店「古志の国 愛山荘」として再び開かれ、主屋と離れの座敷が客席に、二の蔵が越前打刃物や越前焼など地元の伝統工芸を並べるギャラリーになっている。

日野山と「愛山」の名

日野山は越前市の南東にそびえる山で、整った円錐形から「越前富士」と呼ばれる。長徳2年(996年)に父の藤原為時が越前守に任じられた際、紫式部も越前国府のあった武生に下り、この山の雪を歌に詠んだ。「ここにかく日野の杉むら埋む雪小塩の松に今日やまがへる」という一首で、愛山荘の公式サイトも冒頭にこの歌を掲げている。

愛山荘の主屋は、2階の東面に板縁を設けて日野山を正面に据える。1階が庭へ、2階が山へ開くという二重の眺めが、この家の名前の由来と重なっている。

敷地の構成と歩く順序

建物の位置関係は、文化庁の解説文を突き合わせるとおおむね読み取れる。敷地の北端に主屋があり、東へ廊下で離れがつながる。主屋の南西には渡り廊下で蔵座敷がつながり、蔵座敷からさらに渡り廊下が延びて、敷地の南端の石蔵に達する。主屋・離れ・蔵座敷・石蔵の4棟が、廊下で1本の動線になっている。

茶室は蔵座敷の東に建ち、その南西に腰掛の待合が置かれる。待合は茶室に対してわずかに北へ向きを振ってあり、腰掛けた客の視線が庭へ抜けるよう据えられている。蔵座敷・茶室・待合の3棟は、いずれも昭和3年(1928年)頃の一連の造作とみられる。

西側は街路に面する。北西の角に一の蔵、その南に門及び塀、さらに二の蔵が続き、漆喰の白壁と黒漆喰、板壁と瓦屋根が道からの愛山荘の顔をつくる。一の蔵は街路側に扉口を1か所開けるだけで、窓はすべて敷地の内側に向けている。

庭は日野山を借景に取り込んだ回遊式で、池泉と石灯籠が配され、梅の木はおよそ100本を数えるという。愛山荘を歩くなら、主屋の縁側から庭を眺め、廊下伝いに蔵座敷と石蔵へ、それから庭へ降りて茶室と待合、最後に西の蔵と門を街路側から見る順が、建てられた順序にもほぼ沿っていて分かりやすい。

登録の内容

愛山荘の9件は平成29年(2017年)6月28日にそろって登録され、登録番号は18-0168から18-0176までの連番になっている。登録基準の内訳は、主屋・離れ・石蔵・茶室の4件が「造形の規範となっているもの」、蔵座敷・一の蔵・二の蔵・待合・門及び塀の5件が「国土の歴史的景観に寄与しているもの」である。

  • 主屋:大正5年(1916年)、木造2階建、建築面積245平方メートル
  • 離れ:大正5年(1916年)頃、昭和17年(1942年)増築、木造平屋建、建築面積151平方メートル
  • 蔵座敷:昭和3年(1928年)、土蔵造2階建、建築面積51平方メートル
  • 一の蔵:大正5年(1916年)頃、土蔵造2階建、建築面積47平方メートル
  • 二の蔵:大正5年(1916年)頃、土蔵造2階建、建築面積74平方メートル
  • 石蔵:昭和11年(1936年)、石造2階建、建築面積63平方メートル
  • 茶室:昭和3年(1928年)頃、木造平屋建、建築面積33平方メートル
  • 待合:昭和3年(1928年)頃、木造平屋建、建築面積4.7平方メートル
  • 門及び塀:大正5年(1916年)頃、門は間口1.8メートル、塀は延長6.2メートル

越前市の文化財一覧では、二の蔵が街路に面する向きと、茶室・待合の建築面積の記載が文化庁のデータベースと食い違っている。本ページと各棟のページは文化庁の値に従った。

愛山荘を訪れる

愛山荘の最寄り駅はハピラインふくいの武生駅で、歩いて17分ほど。福井鉄道福武線のたけふ新駅からは徒歩20分ほどになる。北陸新幹線の越前たけふ駅と北陸自動車道の武生インターチェンジからは、どちらも車で10分ほど。無料駐車場が60台分あり、大型バスも停められる。登録上の所在地は「若竹町14字天野1-4」だが、地図検索や郵便では「越前市若竹町6-27」を使う。

現在の愛山荘は料理店として営業している。昼の部は午前11時から午後3時(ラストオーダー午後2時30分)、夜の部は午後6時から午後9時30分(ラストオーダー午後8時30分)。月曜日が定休で、月曜が祝日の場合は翌火曜日が休みになる。予約は電話(0778-29-3590)かウェブで受け付けており、空席があれば予約なしでも入れる。

公式サイトの案内は料理店としてのもので、食事をせずに建物や庭だけを見学できるかどうかは示されていない。食事の前後に庭を歩き、二の蔵のギャラリーをのぞくことはできる。建物の見学だけを希望する場合や、室内で写真を撮りたい場合は、事前に電話で確かめておくのが確実である。営業時間と定休日は2026年9月26日に公式サイトで確認した。

参考文献

国指定文化財等データベース 愛山荘主屋
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00011677
国指定文化財等データベース 愛山荘離れ
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00011678
国指定文化財等データベース 愛山荘蔵座敷
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00011679
国指定文化財等データベース 愛山荘一の蔵
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00011680
国指定文化財等データベース 愛山荘二の蔵
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00011681
国指定文化財等データベース 愛山荘石蔵
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00011682
国指定文化財等データベース 愛山荘茶室
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00011683
国指定文化財等データベース 愛山荘待合
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00011684
国指定文化財等データベース 愛山荘門及び塀
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00011685
文化遺産オンライン 愛山荘主屋
https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/289613
文化財指定別一覧(越前市)
https://www.city.echizen.lg.jp/office/090/030/shiteibunkazai/siteibetu.html
古志の国 愛山荘 公式サイト
https://aizansou.com/
古志の国 愛山荘 アクセス
https://aizansou.com/access/
大正時代の文化財建築で舌鼓「古志の国 愛山荘」が越前市にリニューアルオープン(ふくいドットコム)
https://www.fuku-e.com/fukutabi/detail_878.html
国登録有形文化財「愛山荘」使った懐石料理店、越前市にオープン(福井新聞)
https://www.fukuishimbun.co.jp/articles/-/2449289

最終更新日: 2026.09.26

基本情報

名称愛山荘
所在地福井県越前市若竹町14字天野1-4
所有者小野谷機工株式会社
指定登録有形文化財 9件
座標35.89454, 136.16715