最小の建物、紙を旅立たせた場所

コグラの北に近接し、西面して建つのが、製紙所の登録建物で最も小さい旧大工小屋である。建築面積わずか34平方メートル、昭和31年(1956)の建築で、和紙出荷用の梱包木箱を製作する場であったと伝える。

切妻造桟瓦葺の木造平屋で、西面に下屋を架ける小規模な建物だ。しかしその役目は、大きな製造施設が扱わない一面を映す。漉き上げた紙がいかに大滝を離れ、全国の画家や寺社へ運ばれたか、という和紙づくりの結びの局面である。

価値

旧大工小屋は令和3年(2021)2月26日、8棟一括の登録有形文化財の一つとして登録された。基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」。その価値は規模よりも、生業の全体を欠けなく残す点にある。梱包の作業場までとどめる工房は、原料の繊維から出荷用の木箱まで、和紙製造の全工程を伝える。

木箱が重要であったことは、紙の行き先を見れば明らかだ。後年、岩野家は桂離宮の昭和の大修理用の紙や、平山郁夫らの大壁画の用紙を納めた。それほどの紙は、丁寧に箱詰めして送り出さねばならなかった。

見どころ

腰は下見板張、上部を土壁とする。内部は土間床の一室で竪板張の壁とし、束立の和小屋を現す。作業小屋にふさわしい飾らない実直な木組みである。

敷地の中ほどに建つこの小さな建物は、群のなかの一点景をつくる。稼働中の工房の外観として、見学(要予約)と併せて眺めるのがよい。

Q&A

Qこの小屋は何のための建物ですか。
A和紙出荷用の梱包木箱を製作する場であったと伝わります。8棟の登録建物のうち最も小さく、建築面積は34平方メートルです。
Qいつ頃の建築ですか。
A昭和31年(1956)で、群のなかでは新しい時期の建物です。
Q構造の見どころは。
A土間床の一室に下見板張・土壁を組み合わせ、束立の和小屋を現します。作業小屋らしい飾らない木組みが見どころです。
Qなぜこれほど小さな建物を登録するのですか。
A生業の全体像を完結させるためです。梱包の作業場を製造施設とともに残すことで、和紙づくりの全サイクルが保存されます。

基本情報

名称岩野平三郎製紙所旧大工小屋
所在地福井県越前市大滝町30字朝日16他
指定区分登録有形文化財(建造物)
登録年月日令和3年(2021)2月26日
登録番号18-228
員数1棟
建築年代昭和31年(1956)
構造及び形式等木造平屋建、瓦葺、建築面積34㎡
登録基準国土の歴史的景観に寄与しているもの
所有者株式会社岩野平三郎製紙所
公開状況稼働中の工房。外観は街路から鑑賞可。工場見学・お写経体験は要予約

参考文献

文化庁 — 国指定文化財等データベース(登録有形文化財)
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00013726
株式会社岩野平三郎製紙所 公式サイト
https://www.iwanoheizaburouseisisho.com/
ECHIZEN WASHI — 越前和紙工業協同組合
https://echizen-washi.com/people/washimakers/washimakers-767/
越前市観光協会 — 岩野平三郎製紙所
https://www.echizen-tourism.jp/travel_echizen/experience_detail/174

最終更新日: 2026.07.05