紙づくりが始まる場所

敷地東辺に西面して建つのが煮釜場、紙づくりの始まる建物である。昭和27年(1952)の建築で、楮・三椏・雁皮・麻といった原料の植物繊維を、紙になる前に煮沸し洗浄する場だ。

片流れ鉄板葺で南北に長い平面をとる。鉄板葺は瓦葺の多いこの工房のなかでは珍しい。敷地の高低なりに、北半を南半より一段低くつくり、傾斜地に率直に応える。

価値

煮釜場は令和3年(2021)2月26日、8棟一括の登録有形文化財の一つとして登録された。基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」。製紙工程を建物ごとに並べるこの工房群の、いわば開幕の一場面である。

ここでの作業が後のすべてを左右する。煮ることで繊維をほぐし清め、職人はぬるま湯のなかで塵や不純物を手作業で取り除く。冬には厳しい根気仕事だ。この地味な最初の一歩の上に、麻を主原料とする雲肌麻紙をはじめとする名高い紙の品質が成り立つ。

見どころ

外壁は竪板張とする。内部は北半を二室、南半を一室に区分し、南半に釜場と洗い場を設ける。北へ一段下がる段差のある床は、地形と争わず地形に沿ってつくられたことを最もよく示す。

北のコグラとともに、煮釜場は敷地東辺の沿道景観を構成する。稼働中の工房の一部であり、街路から眺め、叩解・漉き・圧搾・乾燥へと続く工程の最初の一駅として理解したい。

Q&A

Q煮釜場では何をするのですか。
A楮・三椏・雁皮・麻などの原料繊維を煮て洗う、紙づくりの最初の工程を担います。その後、塵などを手作業で取り除いてから叩解に進みます。
Qなぜ金属屋根なのですか。
A片流れの鉄板葺で、瓦葺の多いこの工房では珍しい形式です。床は地形の傾斜なりに北へ一段下げてあります。
Qいつ頃の建築ですか。
A昭和27年(1952)です。敷地東辺に西面して建ちます。
Qどんな原料を使いますか。
A楮・三椏・雁皮・麻という日本古来の原料を用い、これが紙の強さと風合いを生みます。

基本情報

名称岩野平三郎製紙所煮釜場
所在地福井県越前市大滝町30字朝日16他
指定区分登録有形文化財(建造物)
登録年月日令和3年(2021)2月26日
登録番号18-223
員数1棟
建築年代昭和27年(1952)
構造及び形式等木造平屋建、鉄板葺、建築面積40㎡
登録基準国土の歴史的景観に寄与しているもの
所有者株式会社岩野平三郎製紙所
公開状況稼働中の工房。外観は街路から鑑賞可。工場見学・お写経体験は要予約

参考文献

文化庁 — 国指定文化財等データベース(登録有形文化財)
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00013721
株式会社岩野平三郎製紙所 公式サイト
https://www.iwanoheizaburouseisisho.com/
ECHIZEN WASHI — 越前和紙工業協同組合
https://echizen-washi.com/people/washimakers/washimakers-767/
越前市観光協会 — 岩野平三郎製紙所
https://www.echizen-tourism.jp/travel_echizen/experience_detail/174

最終更新日: 2026.07.05