延徳3年に建て替えられた社殿

須波阿須疑神社本殿(すわあずきじんじゃほんでん、正式表記は須波阿湏疑神社)は、福井県今立郡池田町稲荷にある神社本殿で、延徳3年(1491年)の再建、昭和16年(1941年)11月6日に国の重要文化財となった。

まず名称について触れておきたい。正しい表記は「須波阿湏疑神社」だが、「湏」の字がJIS X 0208に含まれないため、ウェブ上では「須波阿須疑神社」という代用表記が広く使われている。両者は同じ神社を指す。地元では池田惣社、あるいはお稲荷さんと呼ばれることが多い。

建物は三間社流造、檜皮葺。正面三間の身舎の前面屋根が長く前へ流れ落ちる形式で、屋根は檜の皮を重ねて葺く。この檜皮葺こそ最初に目を向けたい部分で、厚みのある柔らかな軒先は手間も費用もかかる仕事であり、造営に相応の後ろ盾があったことを示す。

その後ろ盾は社伝に記されている。池田時忠が社域の復興に努め、主君である一乗谷城主・朝倉貞景の力を得て延徳3年に再建したのが、現存する本殿であると伝わる。文化庁の記録では指定番号01027、室町後期の1棟として登録され、寸法の記載はない。

指定の理由と、残ったという事実

福井県は中世の建築を数多く失っている。そのなかでこの本殿は、県内最古の神社本殿建築とされることが多い。残ったのは偶然だけではない。天正2年(1574年)、一向一揆によって拝殿ほか諸殿が焼失したが、本殿は難を免れたと社伝は記す。

指定は昭和16年、当時の国宝保存法によるものだった。この時代の「国宝」は現在の国宝と重要文化財の両方を含む区分で、昭和25年(1950年)に文化財保護法が施行されると、旧法の国宝はいったん重要文化財となった。古い案内書に「旧国宝」と書かれているのは、そのためである。

社伝はこの社殿を、和様・唐様・天竺様の三様式が溶け合った室町中期を代表する建築と説明し、図案化された彫刻の冴えにも価値を認めている。ただしこの評価は神社および県の観光資料に由来するもので、文化庁データベースの記載は構造形式のみと簡潔である。

境内には他の文化財もある。能面(天神)は国指定、能面(中年女)と稲荷の大杉は県指定。祭神は倉稲魂命・大野手比売命・建御名方命の三座で、社名そのものが二神の名を重ねている。「すわ」は建御名方命、「あづき」は山畑での小豆の生産とも結びつく大野手比売命を指す。『延喜式神名帳』の越前国今立郡の条に「須波阿湏疑神社三座」と載る式内社の論社である。

参道を歩く

本殿の見え方について、先に伝えておきたい。本殿は拝殿の後方、石段を上った鳥居の奥にあり、覆屋のなかに納まっている。姿は見えるが、露出した建物を眺めるようにはいかない。檜皮葺と室町の木組みが福井の冬をそのまま受けては保たないからこその覆屋である。参拝は自由で拝観料はなく、本殿内部は公開されていない。

境内入口は西向き。小さな石橋と朱の大きな一之鳥居があり、参道は東へ100メートル以上続く。途中に立つのが、地元で赤山門と呼ばれる楼門で、嘉永3年(1850年)の再建、池田町の文化財に指定されている。二之鳥居をくぐって石段を上ると拝殿。元禄2年(1689年)の再建で、こちらも町指定である。この拝殿は能舞台を兼ねており、大正期を最後に能の奉納は途絶えた。

本殿の先、裏山の中腹まで上ると稲荷の大杉が立つ。高さおよそ40メートル、幹回りおよそ10メートル、樹齢は千数百年といわれる県指定の御神木で、境内で最も写真に撮られている木でもある。

訪問日を選ぶなら二つの日付を覚えておきたい。2月6日の能面まつりは、能の奉納が途絶えたのちに残った行事で、参拝者に小豆粥がふるまわれる。6月9日から11日までの池田大祭は、かつて48ヶ村の惣社であった当社の例大祭で、10日に神輿渡御、11日に子ども相撲が行われる。この2日間は神社周辺の国道476号で交通規制が敷かれるため、車で向かう場合は事前に町の案内を確認しておくとよい。

池田町は山あいの町で、公共交通の便は多くない。多くの参拝者は車を使う。神社は稲荷地区の国道476号沿いにあり、越前市(武生)方面からおよそ30分。境内での撮影に制限は設けられていないが、ここは博物館ではなく祭祀の場であるから、神事の最中は控え、建物の内部を撮る場合は社務所に一言かけたい。

Q&A

Q須波阿須疑神社本殿は間近で見学できますか。拝観料は必要ですか。
A境内は自由に参拝でき、拝観料はかかりません。本殿は拝殿の後方、石段を上った位置にあり覆屋に納まっているため、覆屋の外から姿を見る形になります。本殿の内部は公開されていません。
Q須波阿須疑神社本殿はいつ建てられ、いつ重要文化財に指定されたのですか。
A室町後期の延徳3年(1491年)に再建されました。指定は昭和16年(1941年)11月6日で、当時の国宝保存法によるものです。昭和25年の文化財保護法施行にともない、現在の重要文化財となりました。
Q須波阿須疑神社は、なぜ「須波阿湏疑神社」とも書かれるのですか。
A正式表記は「須波阿湏疑神社」ですが、「湏」の字が旧来の文字コード(JIS X 0208)に含まれないため、ウェブ上では「須」で代用されてきました。どちらも池田町稲荷の同じ神社を指し、読みは「すわあずき」です。
Q須波阿須疑神社の境内には本殿のほかに何がありますか。
A嘉永3年(1850年)再建の赤山門(楼門)と元禄2年(1689年)再建の拝殿がいずれも池田町の文化財で、拝殿は能舞台を兼ねていました。本殿の奥、裏山には高さおよそ40メートルの県指定・稲荷の大杉が立ちます。
Q須波阿須疑神社の祭りはいつ行われますか。
A2月6日に能面まつりが行われ、参拝者に小豆粥がふるまわれます。例大祭の池田大祭は6月9日から11日までで、10日に例大祭と神輿渡御があります。祭りの期間中は神社周辺の国道476号に交通規制がかかります。

基本情報

名称須波阿須疑神社本殿(正式表記:須波阿湏疑神社本殿)
所在地福井県今立郡池田町稲荷
指定区分重要文化財(建造物)/指定番号 01027
指定年昭和16年(1941年)11月6日
員数1棟
寸法三間社流造、檜皮葺(文化庁データベースに寸法の記載なし)
所有者須波阿須疑神社
公開状況境内は自由参拝、拝観料なし。本殿は覆屋内にあり内部非公開。

参考文献

文化庁 国指定文化財等データベース
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/102/834
文化遺産オンライン
https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/121644
福井県神社庁 須波阿須疑神社
https://www.jinja-fukui.jp/detail/index.php?ID=20151027_155622
いい池田.jp 須波阿須疑神社・稲荷の大杉
https://www.e-ikeda.jp/see/p004020.html
ふくいドットコム 須波阿湏疑神社
https://www.fuku-e.com/spot/detail_1083.html

最終更新日: 2026.08.24