新長谷寺とは

新長谷寺(しんちょうこくじ)は、岐阜県関市長谷寺町にある真言宗智山派の寺院で、長禄4年(1460年)に再建された本堂をはじめ、境内の建造物8棟が国の重要文化財に指定されている。山号は吉田山。地元では「吉田観音(きったかんのん)」、あるいは単に「観音さま」と呼ばれ、古い堂塔がまとまって残ることから「美濃の法隆寺」の異名もある。

寺名に「長谷寺」の字を含むが、読みは「はせでら」ではない。文化庁の国指定文化財等データベースも、岐阜県と関市の文化財案内も「しんちょうこくじ」で統一している。所在地の町名「長谷寺町」のほうは「はせでらちょう」と読むので、現地で混乱しやすい。

寺号の由来について、関市観光協会の案内は、本尊が大和国の長谷寺(奈良県)の観音と同じ木から造られた尊像と伝わることから、「新長谷寺」の号を賜ったと説明している。その本尊、木造十一面観音立像も重要文化財である。

新長谷寺の由緒と沿革

岐阜県の解説によれば、新長谷寺を開いたのは、弘法大師空海から数えて4代目の法孫にあたる護忍上人である。開創の年は『日本大百科全書』の項目で貞応元年(1222年)とされ、後堀河天皇の勅願によると伝わる。同じ項目には、大和の長谷寺で修行していた護忍が夢のお告げを受けて観音像を得た、という縁起も紹介されている。

その後の歩みは焼失と再興の繰り返しだった。同事典は、正安2年(1300年)に焼けて再建され、室町時代中期にも火災に遭ったのち補修を経て諸堂が整ったと記す。

いま境内に立つ堂塔は、この再興期以降のものである。文化庁のデータベースでは本堂が長禄4年(1460年)、三重塔が寛正4年(1463年)の建立で、釈迦堂・阿弥陀堂・大師堂・鎮守堂・薬師堂の5棟は室町時代後期、客殿だけが江戸時代前期とされる。

国の指定は2度に分かれている。本堂と三重塔が明治42年(1909年)4月5日に、残る6棟が昭和28年(1953年)11月14日に重要文化財となった。関市の案内によると、新長谷寺は建造物と彫刻をあわせて10件の重要文化財を所有している。

新長谷寺の伽藍配置と歩く順序

関市の案内は、本堂を中心とする全25棟の建物の配置を総称して「七堂(悉堂)伽藍」と呼ぶ。岐阜県の解説は、総門のはるか先に楼門が見え、そこをくぐって少し進むと、本堂を中心に檜皮葺の堂塔が左右へ整然と広がる、と境内の見え方を描いている。

文化庁データベースの地図に示された各棟の位置を本堂から測ると、配置の骨格が読める。

  • 本堂の西側:大師堂(約17メートル)、阿弥陀堂、釈迦堂が北から南へ一列に並ぶ
  • 本堂の東側:薬師堂(約23メートル)が真横に、三重塔がその南寄りに立つ
  • 鎮守堂:本堂の北東、境内の奥にあたる位置
  • 客殿:本堂から南西へ約90メートル離れた位置

客殿を除く7棟は、本堂から35メートル以内に収まる。楼門を抜けて本堂に参ったら、西の3棟を北から順にたどり、東へ回って三重塔と薬師堂、最後に奥の鎮守堂を見る、という順路が歩きやすい。客殿は予約した時間に合わせて訪ねる。

屋根の形の違いが見分けの手がかりになる。入母屋造は本堂と阿弥陀堂、寄棟造は釈迦堂・大師堂・薬師堂、流造は鎮守堂で、檜皮葺でないのは銅板葺の客殿だけである。各棟の構造と見どころは、それぞれのページで詳しく扱っている。

新長谷寺の拝観と撮影の決まり

新長谷寺では、総門より内側の境内での写真撮影が禁止されている。関市、関市観光協会、岐阜県観光連盟の案内がそろってこの注意を掲げており、関市が令和8年(2026年)3月に開いた特別公開でも、建物の内部を含む敷地内は撮影禁止とされた。カメラやスマートフォンは総門の手前でしまっておきたい。

公表されている料金は、客殿の入館料300円(要予約)だけである。境内の拝観時間は関市や観光協会の案内に記載がないため、客殿の予約とあわせて新長谷寺(電話0575-22-3464)へ事前に確かめておくと確実だ。堂の内部を見られる機会は限られ、釈迦堂のように通常は非公開の堂もある。

新長谷寺への交通

最寄り駅は長良川鉄道の関口駅。新長谷寺までの徒歩の所要時間は、関市の案内が約10分、関市観光協会と岐阜県観光連盟の案内が約15分としており、10〜15分を見込んでおけばよい。

車の場合は、東海北陸自動車道の関インターチェンジから10分ほど。関市観光協会によれば、寺の駐車場は大型バス7台、普通車30台分ある。所在地は岐阜県関市長谷寺町1。

新長谷寺の年中行事

毎年2月18日は、本尊の十一面観音の初法要「初観音」の日で、商売繁盛や五穀豊穣などを願う大祈祷が行われる。8月9日の「九万九千日」は、この日に一心に参れば九万九千日分の功徳が得られるという言い伝えにちなむ行事で、新長谷寺の境内と参道が参拝者でにぎわう。関市観光協会の案内は「久万九千日(くまくせんにち)」と表記している。

どちらの日も人出が多い。堂塔の細部を落ち着いて見たいなら、行事の日を外して訪ねるほうがよい。

参考文献

文化庁 国指定文化財等データベース「新長谷寺本堂」
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/102/1045
文化庁 国指定文化財等データベース「新長谷寺三重塔」
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/102/1046
文化庁 国指定文化財等データベース「新長谷寺客殿」
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/102/1052
文化遺産オンライン「新長谷寺本堂」
https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/155585
岐阜県 文化伝承課「新長谷寺本堂 附厨子」
https://www.pref.gifu.lg.jp/page/351259.html
関市「新長谷寺〈しんちょうこくじ〉(吉田観音〈きったかんのん〉)」
https://www.city.seki.lg.jp/kanko/0000001511.html
関市「関市の重要文化財【国指定・国登録・岐阜県指定】」
https://www.city.seki.lg.jp/kanko/0000006024.html
関市「新長谷寺『朝鮮仏画』特別公開【終了】」
https://www.city.seki.lg.jp/kanko/0000022811.html
関市観光協会 せき観光ナビ「新長谷寺(吉田観音)」
https://sekikanko.jp/spot/detail_1048.html
岐阜県観光連盟 岐阜の旅ガイド「新長谷寺(吉田観音)」
https://www.kankou-gifu.jp/spot/detail_7136.html
コトバンク(日本大百科全書)「新長谷寺」
https://kotobank.jp/word/%E6%96%B0%E9%95%B7%E8%B0%B7%E5%AF%BA-82433

最終更新日: 2026.09.16

基本情報

名称新長谷寺
所在地岐阜県関市長谷寺町
所有者新長谷寺
指定重要文化財 8件
座標35.48490, 136.92326