寿美吉旅館主屋(旧住質店店舗兼主屋)― 大正の面影を今に伝える飛騨高山の登録有形文化財の宿
岐阜県高山市の中心部、宮川の西岸に佇む寿美吉旅館(すみよしりょかん)は、大正後期に質店の店舗兼住居として建てられた木造二階建ての町家建築です。昭和25年(1950年)に旅館として創業して以来、三代にわたり70年以上営業を続けてきました。2024年(令和6年)には、主屋・厨房棟・土蔵の3棟が国の登録有形文化財(建造物)に登録され、その歴史的・建築的価値が改めて認められました。飛騨の匠の技が随所に光る趣深い建物に実際に宿泊できる、全国的にも貴重な文化財の宿です。
歴史 ― 質店から旅館へ
寿美吉旅館の建物は、大正後期に「住質店(すみしちてん)」という質屋の店舗兼住居として建築されました。質店としての営業を経て、昭和25年(1950年)に旅館業へと転換し、以来、南家が三代にわたって経営を受け継いでいます。
高山の中心部にありながらも裏通りに面していたことが幸いし、周辺地域の近代化による建て替えの波を免れ、大正期の建築がほぼそのままの形で残されています。料理旅館として地元の方々にも長く愛されてきたことで、この建物は「奇跡的に残った」と評されることもあります。先代が収集した骨董品の数々が館内を彩り、海外からの宿泊客には「アンティーク・イン」の愛称で親しまれています。
登録有形文化財としての価値
令和6年(2024年)7月、文化庁の文化審議会の答申により、寿美吉旅館の主屋・厨房棟・土蔵の3棟が国の登録有形文化財(建造物)に登録されました。高山市内での登録は令和3年度の旧須田歯科医院以来で、市内の登録有形文化財は計22件となりました。
主屋は、伝統的な高山の町家の型式を踏襲しながら近代における展開を示す建築として評価されています。一階正面の出格子は、上部を長方形、下部を正方形に組む高山に特徴的な縦格子を用いており、通りの歴史的な景観を今に伝えています。また、玄関上部の吹き抜けに見られる整然とした梁組は、飛騨の匠の高い木工技術を象徴するもので、大きな見応えがあります。
厨房棟は、主屋の北側に接して建つ旧味噌蔵で、切妻造鉄板葺の置屋根形式の屋根を持ちます。一階を厨房、二階を納戸として使用し、主屋とともに通りの景観に寄与しています。土蔵は、主屋の南側に接する旧質蔵で、厳重なつくりの二階建て。主屋室内に向けて付けられた両開きの掛子塗扉は黒漆喰で装飾されており、高い左官技術がうかがえます。
敷地の制約により路地に面して雁行して配置されたこれら3棟は、特色ある路地景観を形成しており、高山の町並みの歴史的・空間的な魅力を伝える貴重な存在です。
見どころ・魅力
出格子の外観
主屋一階正面に設けられた出格子は、寿美吉旅館を象徴する意匠です。上部を長方形、下部を正方形に組む高山独特の縦格子は、光と風を取り込みながらも内部のプライバシーを守る機能を備えています。通りに面したこの格子の佇まいは、大正期の高山の商家の雰囲気を色濃く伝えています。
吹き抜けの梁組
玄関の土間から見上げると、二階まで吹き抜けた空間に整然と組まれた太い梁が広がります。古くから「飛騨の匠」と称えられた飛騨の木工職人の高い技術が凝縮された空間であり、良材を用いた繊細かつ力強い構造美に圧倒されます。ロビーには囲炉裏が設けられ、骨董品のコレクションとともに歴史の薫りを感じることができます。
骨董品コレクション
先代の主人が長年にわたり収集した骨董品が館内随所に展示されています。鎧兜、御所人形をはじめとする貴重な品々が、旧質蔵(現在の土蔵)に数多く保管されており、骨董品を目当てに訪れるお客様もいらっしゃいます。まるで小さな博物館のような雰囲気の中で過ごす時間は、他では味わえない特別な体験です。
客室と浴場
客室は全8室、すべて純和室です。飛騨の匠の建築様式をそのまま残す各室は、良材を用い隅々まで繊細な技術が施されています。浴場は宮川に面した檜風呂と御影石風呂の2種類があり、鍵をかけて家族風呂としても利用可能です。
飛騨の郷土料理
夕食は飛騨牛すき焼きを中心とした郷土色豊かな会席料理。お米は高山市内の契約農家から直接仕入れたコシヒカリを使用しています。朝食の名物は旅館特製の朴葉味噌で、朴の葉の上で味噌と季節の野菜・茸を炭火で焼く飛騨の伝統料理をお部屋でゆっくり楽しめます。
周辺情報
寿美吉旅館は高山市の中心部に位置しており、主要な観光スポットへのアクセスに大変便利です。
- 宮川朝市 ― 旅館から約100メートル、宮川の対岸で毎朝開催される日本三大朝市のひとつ。新鮮な野菜、果物、漬物、民芸品など約40店舗が軒を連ねます。
- 古い町並み(さんまち通り) ― 徒歩約7〜8分。江戸時代の面影を残す商家町で、造り酒屋、カフェ、飛騨牛グルメの食べ歩きが楽しめます。国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されています。
- 高山陣屋 ― 全国で唯一現存する江戸時代の郡代役所。国の史跡に指定されており、当時の行政の様子を知ることができます。
- 吉島家住宅・日下部民藝館 ― 飛騨の匠の技を今に伝える見事な商家建築。いずれも徒歩圏内で見学可能です。
- 櫻山八幡宮・高山祭屋台会館 ― ユネスコ無形文化遺産に登録された高山祭の豪華絢爛な屋台を常設展示しています。
四季の楽しみ
寿美吉旅館では四季折々の風情を楽しむことができます。春は宮川沿いの桜並木が美しく咲き誇り、4月中旬と10月中旬には絢爛たる高山祭が開催されます。夏は緑深い山々と活気あるまつりの雰囲気を楽しめます。秋は紅葉に染まる山々と、朝市に並ぶ新米やりんごが季節の到来を告げます。冬は雪化粧をまとった古い町並みが格別の美しさを見せ、館内の囲炉裏がひときわ温かく感じられる季節です。
Q&A
- 文化財に登録された建物に実際に泊まれるのですか?
- はい、寿美吉旅館は現在も旅館として営業しておりますので、国の登録有形文化財に泊まるという貴重な体験ができます。歴史的価値を大切に守りながら、快適な宿泊環境を整えています。
- 外国語での対応は可能ですか?
- 主な対応は日本語となりますが、以前から多くの海外のお客様を迎えており、海外のガイドブックにも掲載された実績があります。館内にはWi-Fiが完備されているため、翻訳アプリなどを活用しながらコミュニケーションが可能です。
- 高山駅からのアクセスを教えてください。
- JR高山駅の乗鞍口(東口)から徒歩約10〜15分、お車で約3〜5分です。無料駐車場(8台分)がございます。
- 食事はどのようなものが出ますか?
- 夕食は飛騨牛すき焼きを中心とした郷土料理の会席です。朝食は旅館特製の朴葉味噌定食をお部屋または個室でお召し上がりいただけます。1泊朝食付きプランと1泊2食付きプランをお選びいただけます。
- おすすめの季節はいつですか?
- どの季節にもそれぞれの魅力があります。春(4月)は宮川沿いの桜、秋(10月下旬〜11月)は紅葉が見事です。4月中旬と10月中旬には高山祭が開催されます。冬の雪景色も格別の風情があり、宮川朝市は通年で開催されています。
基本情報
| 名称 | 寿美吉旅館主屋(旧住質店店舗兼主屋) |
|---|---|
| 文化財指定 | 国登録有形文化財(建造物)― 令和6年(2024年)登録 |
| 建築年代 | 大正後期(推定) |
| 構造 | 木造二階建て、高山の伝統的町家様式 |
| 旧用途 | 質店の店舗兼住居(住質店) |
| 現用途 | 旅館(昭和25年〈1950年〉創業) |
| 所在地 | 〒506-0011 岐阜県高山市本町四丁目21 |
| 電話番号 | 0577-32-0228 |
| アクセス | JR高山駅乗鞍口(東口)より徒歩約10〜15分、車で約3分 |
| 客室数 | 8室(全室和室) |
| チェックイン/チェックアウト | チェックイン 15:00 / チェックアウト 10:00 |
| 駐車場 | 8台(無料) |
| 関連文化財 | 寿美吉旅館厨房棟(旧住質店味噌蔵)、寿美吉旅館土蔵(旧住質店質蔵) |
参考文献
- 寿美吉旅館主屋(旧住質店店舗兼主屋) ― 文化遺産オンライン
- https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/576235
- 岐阜県高山市の旅館が国の登録有形文化財(建造物)に登録 ― 高山市プレスリリース(PR TIMES)
- https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000125.000124925.html
- 景観重要建造物の指定について ― 高山市公式サイト
- https://www.city.takayama.lg.jp/shisei/1000061/1005212/1004120.html
- 壽美吉旅館(Sumiyoshi Ryokan) ― 公式サイト
- http://www.sumiyoshi-ryokan.com/
- 有形文化財の宿 寿美吉旅館 ― 飛騨高山旅館ホテル協同組合
- https://www.takayamaryokan.jp/yado/37.html
- 寿美吉旅館(岐阜県・高山市)南 恒輔さん ― 観光経済新聞
- https://www.kankokeizai.com/寿美吉旅館
最終更新日: 2026.03.23