二度の大火のあとに建てられた町家

吉島家住宅は、岐阜県高山市大新町一丁目51番地にある明治40年(1907年)建築の町家で、昭和41年(1966年)12月5日に国の重要文化財に指定された。

上三之町の人混みから北へ十分ほど歩くと、観光客の数は目に見えて減る。大新町は住宅地で、その静かな通りに高山を代表する町家が二軒並んで建っている。北側が吉島家、南隣が日下部家である。吉島家の玄関上の軒下には大きな杉玉が下がる。造り酒屋であった時代の名残だ。

吉島家は江戸後期頃から生糸と繭の売買で財を成し、のちに金融、酒造業も営んだ。初代とされる休兵衛は文政6年(1823年)に没している。この家の歴史は火事とともにある。明治8年(1875年)の高山の大火で焼け、翌9年に再建。ところが明治38年(1905年)に再び類焼し、本宅表側の店二間通りだけが焼け残った。現在の建物は、四代吉島斐之が明治40年に建てたものである。

大工は分担していた。主屋を川原町の西田伊三郎が、座敷を吉城郡上宝村の内山新造が手がけたと伝わる。

指定が評価したもの

国指定文化財等データベースの記載は、まず寸法から入る。桁行16.7メートル、梁間13.6メートル、北面突出部は桁行5.4メートル、梁間7.3メートル。一部二階、切妻造段違、桟瓦葺で、六畳、縁側および便所が附属する。附指定として板塀一所、犬垣一所、火垣一棟が加えられている。

解説文は、全体に立ちが比較的低く細部の表現も穏やかで、洗練された町家の手法を見せる、と評する。この控えめさこそが評価の中心にある。明治40年の再建は、江戸期の華美を規制する枠が外れ、高山の有力商家が競って家を建てた時期にあたる。その中で吉島家は、目立つ意匠をあえて選ばなかった。

土間の上に組まれた木組み

訪れた人の記憶に残るのは、装飾ではなく構造のほうだろう。暗い入口の土間を抜けると、空間が上へ開ける。大黒柱は土間から棟まで一本で通り、その周囲に梁と束が縦横に組まれて吹抜けを埋める。部材は丁寧に鉋で仕上げられ、漆が塗られている。

光は屋根の高い位置に設けられた天窓から入り、木組みを斜めに横切って落ちる。時刻によっても季節によっても表情が変わるので、雲が動くまで数分待ってみる価値はある。

表構えの読み方

通りに面した表構えには、性格の違う格子が一面に配されている。竪格子窓、格子戸、千本格子の出格子、そして立ちの低い二階には連子窓。入口の大戸の上だけは格子ではなく土壁とし、化粧貫二本を横に通す。

北側にひとつ、由来のある細部がある。出格子が入口の一間手前で入格子に変わり、そこに葬式の際の出棺の場所が確保されている。商いのための家は、同時に死を扱う場所でもあった。

南隣の日下部家住宅は、しばしば吉島家との対比で語られる。日下部家が力強く男性的な木組みを見せるのに対し、吉島家は繊細と評される。二軒とも入館すれば合わせて九十分ほど。高山でこれ以上に分かりやすい建築の教材はそう多くない。

訪ねるにあたって

吉島家住宅は一般公開されている。入館料は個人で大人500円、小中学生300円。30人以上の団体は大人450円、小中学生250円となる。所要時間は30分ほどを見ておけばよい。光の具合がよければもう少し長くなる。

開館時間については、公表されている情報が資料によって一致しない。高山市観光公式サイトは9時30分から15時30分とし、休館日を夏季は月曜と火曜、冬季は月曜から木曜とする。一方、3月から11月は9時から17時、12月から2月は16時30分閉館、休館は12月から2月の火曜とする案内もある。運営側も変更があるとしているため、訪問前に0577-32-0038へ確認するのが確実である。

館内の撮影は個人利用の範囲で概ね可能だが、井戸端のギャラリーでは展示が行われているため、部屋によっては制限がかかることがある。

JR高山駅から徒歩約17分。まちなみバスなら「日下部民芸館口」下車、徒歩1分。車の場合は中部縦貫自動車道の高山インターチェンジから約10分。なお入口にも館内にも段差があり、建物前の道路には水路が通っている。車椅子での自力の見学は難しい。

いつ行くか

敷地内には前庭と裏庭があり、茶室、仏間、本座敷、次の間のそれぞれから眺められるように設計されている。土蔵を背にした裏庭の紅葉が最も見ごたえがある。木組みを静かに見たいのであれば、団体客が大新町まで上がってくる前、開館直後の時間帯がよい。

Q&A

Q吉島家住宅は見学できますか。入館料はいくらですか。
A一般公開されています。入館料は個人で大人500円、小中学生300円、30人以上の団体は大人450円、小中学生250円です。見学の所要時間は30分程度です。
Q吉島家住宅の開館時間と休館日を教えてください。
A公表情報が資料により異なります。高山市観光公式サイトは9時30分から15時30分、休館は夏季が月・火曜、冬季が月曜から木曜とします。別の案内では3月から11月が9時から17時、12月から2月は16時30分閉館とされています。変更があるため、事前に0577-32-0038へお問い合わせください。
Q吉島家住宅はなぜ重要文化財に指定されたのですか。
A昭和41年(1966年)12月5日の指定で、全体の立ちが低く細部の表現が穏やかな、洗練された町家の手法が評価されました。吹抜けに組まれた梁と小屋材も見どころとされ、隣接する日下部家住宅とともに高山の町並景観を形づくっている点も指定の理由に含まれます。
Q吉島家住宅へは高山駅からどう行きますか。
AJR高山駅から徒歩約17分です。まちなみバスの「日下部民芸館口」下車なら徒歩1分。車では中部縦貫自動車道の高山インターチェンジから約10分です。
Q吉島家住宅は誰がいつ建てたのですか。
A現在の建物は明治40年(1907年)、四代吉島斐之が明治38年の類焼後に再建したものです。大工は主屋を川原町の西田伊三郎、座敷を吉城郡上宝村の内山新造が手がけたと伝わります。

基本情報

名称吉島家住宅(よしじまけじゅうたく)/岐阜県高山市大新町
所在地岐阜県高山市大新町一丁目51番地
指定区分重要文化財(建造物)/指定番号 01648
指定年昭和41年(1966年)12月5日
員数1棟(主屋)。附として板塀一所、犬垣一所、火垣一棟
寸法桁行16.7メートル、梁間13.6メートル。北面突出部は桁行5.4メートル、梁間7.3メートル。一部二階、切妻造段違、桟瓦葺
所有者個人所有。国のデータベースに所有者名の記載はない
公開状況一般公開。大人500円、小中学生300円。開館時間・休館日は季節により変動するため電話(0577-32-0038)で確認

参考文献

国指定文化財等データベース(文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/102/1031
高山市 文化財
https://www.city.takayama.lg.jp/kurashi/1000021/1000119/1000847/1000848/1000852.html
飛騨高山旅ガイド(高山市観光公式サイト)
https://www.hidatakayama.or.jp/spot/detail_1128.html

最終更新日: 2026.08.06

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