桔木とは
桔木は、小屋裏に隠して仕込み、てこの原理で軒先を持ち上げる材である。棟側を屋根の重さで押さえ、軒側を跳ね上げる。外からは見えない。
組物に頼らずに深い軒を支えられる点が要点である。三手先のように段を重ねて持ち出す方法は手間がかかるうえ、外観に現れる。桔木は小屋裏で処理するため、軒下の意匠を変えずに軒を出せる。
岡山県の本山寺三重塔は承応元年の建築で、重要文化財の解説に「津山藩主森氏によって再建された三重塔。外部は古式で正統的な手法をもつが、内部の構造は桔木に頼った軒の支持方法や、手先肘木の繋ぎ方などに新しい手法がみられる。近世的構造手法を取り入れた初期の塔の遺構」と記されている。
外部は古式、内部は新しい手法という対比が、この部材の性格を示している。外から見える部分は伝統的なまま、見えない小屋裏で新しい構造を採る。
近代の用法
垂下がりを防ぐためにも使われる。兵庫県の旧来住家住宅主屋は大正7年の建築で、「外観はつし二階に虫籠窓を開けた伝統的形式を採るが、内部には中廊下型に近い間取や、軒や鴨居の垂下がり防止用に桔木や鉄棒を使用するなど近代的手法が採られている点に特徴がある。また、銘木や吟味された良材がふんだんに用いられていることも特筆される」と解説されている。
ここでも外観は伝統的、内部は近代的という対比が使われている。桔木と鉄棒が並べて挙げられており、同じ目的のために新旧の材が併用されている。
鴨居の垂下がりにも用いるのは、開口を広く取ると上の材がたわむためである。柱を減らして広い開口を得る近代の平面と、桔木のような補強は結び付いている。
現地では確かめにくい。小屋裏に隠れるため、天井を張った建物では見えない。解体修理や小屋裏の調査で確認されるもので、記録の記述に頼ることになる。
参考文献
- 文化遺産オンライン 本山寺三重塔/内部の構造は桔木に頼った軒の支持方法など、近世的構造手法を取り入れた初期の塔
- https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/195760
- 国指定文化財等データベース(文化庁)旧来住家住宅主屋/軒や鴨居の垂下がり防止用に桔木や鉄棒を使用するなど近代的手法
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00002673
- 文化庁 文化財の紹介 国宝・重要文化財(建造物)
- https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkazai/shokai/yukei_kenzobutsu/kokuho_bunkazai.html
最終更新: 2026.09.11