方杖とは

方杖は、柱と梁、あるいは壁と軒桁のように直角に交わる二つの材の隅に、斜めに入れる短い部材である。隅を三角形にふさぐことで、上からの重さを受け止め、横から押されたときに骨組みが傾くのを防ぐ。「頬杖」とも書き、文化庁の記録でも両方の表記が使われる。

使い方は大きく二つある。一つは張り出した軒を下から支える使い方で、雪の重みがかかる地方の土蔵によく見られる。福井県大野市の旧内山家住宅(明治15年頃)では、衣装蔵の解説が「方杖で深い軒を支える」と書いて豪雪地に適応したつくりとし、隣の米蔵では同じ役割の材を「深い軒を頬杖で支える」と書く。表記は違っても同じ部材である。

もう一つは、柱と梁や頭貫の隅を固める使い方である。壁のない吹き放しの建物では、横からの力を壁で受け止められない。三重県四日市市の石川酒造井戸屋形(明治後期)は、内側へ傾けて立てた4本の柱の上部を、頭貫と方杖で固めている。

見るときの手がかり

軒下を見上げ、壁や柱から斜めに出て軒桁を受ける材があれば方杖である。似た役割の持送りは壁から突き出した片持ちの材で、腕木も柱から水平に出して軒先の桁を受ける。斜めに入るか水平に出るかで見分けられる。

近代の建物では、方杖が大きな架構の一部になる。大阪府和泉市の佐竹ガラス作業場(昭和初期)では、四方に方杖を付けた柱がキングポストトラス形式の小屋組を受ける。

橋にも同じ原理が使われる。宮崎県日南市の花峯橋は、斜めに広がる木造の橋脚で主桁を支える方杖橋で、文化庁は現存する数少ない木造方杖形式の道路橋の一つとしている。

参考文献

国指定文化財等データベース(文化庁)旧内山家住宅衣装蔵
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00012326
国指定文化財等データベース(文化庁)旧内山家住宅米蔵
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00012327
国指定文化財等データベース(文化庁)石川酒造井戸屋形
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00009491
国指定文化財等データベース(文化庁)佐竹ガラス作業場
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00002157
文化遺産オンライン(文化庁)花峯橋
https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/183843

最終更新: 2026.10.04