クイーンポストトラスとは
クイーンポストトラスは、洋小屋に用いるトラスの一つで、水平の陸梁の上に左右二本の束を立て、その頂部どうしを水平の材でつなぎ、束の頂部から陸梁の両端へ斜めの合掌を下ろした形をとる。二本の束は陸梁を吊り上げる役目をもち、吊束とも呼ばれる。日本語では対束トラスともいう。
近い型のキングポストトラスは、陸梁の中央に一本の真束を立て、その頂部で左右の合掌を受ける。キングポストトラスは構成が単純で、比較的小さな梁間に広く使われた。クイーンポストトラスは、中央に束がなく、二本の束のあいだに空間ができるため、より広い梁間に向き、小屋裏を物置などに使いやすい。
どちらも陸梁、合掌、束を三角形に組んで荷重を受ける点は共通する。型の違いは、束の本数と配置、それに伴う斜材の入り方にある。
記録と実物で見分ける手がかり
記録では「小屋組はクイーンポストトラスである」のように、型の名前で書かれる。千葉県の飯沼本家の甲子蔵は、桁行16間、梁間9間の大規模な酒蔵で、切妻造の屋根に越屋根を付け、小屋組をクイーンポストトラスとする。梁間9間という広い空間を、中間に柱を立てずに覆うための選択と読むことができる。
比較のために、キングポストトラスの記録も挙げておく。北海道栗山町の小林酒造三番蔵は煉瓦造2階建の蔵で小屋をキングポストトラスとし、香川県のJR琴平駅旅客上屋二号も小屋組をキングポストトラスと記している。梁間4間半や5.5メートル程度の建物にはキングポストトラス、梁間9間の甲子蔵にはクイーンポストトラスという対比が、型の選び方の目安になる。
記録に「洋小屋」「トラス組」としか書かれていない建物でも、実際にはクイーンポストトラスやキングポストトラスであることが多い。記事で型の名前を書くのは、記録や修理報告に型が明記されている場合に限りたい。
現地では、小屋裏の三角形の中央を見る。中央に一本の束があればキングポストトラス、左右に二本の束が立ち、そのあいだが開いていればクイーンポストトラスである。
参考文献
- 飯沼本家甲子蔵|国指定文化財等データベース(文化庁)
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00011883
- 小林酒造三番蔵|国指定文化財等データベース(文化庁)
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00005722
- JR琴平駅旅客上屋二号|国指定文化財等データベース(文化庁)
- https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00009385
最終更新: 2026.09.26