心御柱とは

心御柱は、大社造の本殿で平面の中央に立つ特別に太い柱である。大社造の本殿は柱を三列三行、計九本に並べて平面を田の字に割り、その中心の一本を心御柱と呼ぶ。文化庁の出雲大社本殿の解説は、殿内中央の特別に太い柱が古来神聖視されてきたこと、内部がこの柱を通る線で前後に分かれることを記している。

心御柱は屋根や床を支える構造材であると同時に、建物の中心として特別な意味を与えられた柱である。出雲大社本殿では、正面側の中央に立つ柱を宇豆柱と呼び、心御柱と対にして扱うことが多い。宇豆柱は妻の中央に立つ側柱で、心御柱とは位置も役割も異なる。

名前の似た語に、五重塔や三重塔の中心を貫く心柱がある。塔の心柱は相輪を支えて塔の中心に立つ柱で、明王院五重塔の解説が「心柱は二重目で止まり」と書くように、どの層から立つかが塔ごとに記録される。神社本殿の心御柱とは建物の種類も構造上の働きも違うため、記事では両者を混同しないよう書き分けたい。

記録と遺構での手がかり

心御柱は本殿の内部にあり、通常の参拝で目にすることはできない。記録で確かめられるのは、平面の中央に太い柱があること、内部がその柱を境に前後に分かれること、神座にあたる内殿がその奥に置かれることである。

かつての本殿の心御柱は、発掘によって実物が確かめられている。出雲大社の境内では平成12年(2000年)から調査が行われ、宝治2年(1248年)の造営と推定される本殿跡から、中央の心御柱、正面中央の宇豆柱、南東の側柱の柱根が見つかった。島根県教育委員会の資料によれば、柱根はいずれもスギ材で、直径1メートルを超える材を3本束ねて1本の柱とし、束ねた状態の直径は約2.7メートルに達する。九本の柱を田の字に配する平面が、中世の本殿でも守られていたことが分かる。

神魂神社本殿など、他の大社造の本殿でも中央の柱を心御柱と呼ぶ。記事で心御柱に触れるときは、現存の本殿の柱を指すのか、発掘された旧本殿の柱根を指すのかを明記すると、記録との対応がはっきりする。

参考文献

出雲大社本殿|国指定文化財等データベース(文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/102/2971
出雲大社境内遺跡出土品について(教育委員会会議録)|島根県
https://www.pref.shimane.lg.jp/education/kyoiku/iinkai/joho/iinkai_gidai/h20kaigiroku/h20_1431/giketu41.html
島根の史跡 出雲大社|島根県
https://www.pref.shimane.lg.jp/life/bunka/bunkazai/shiseki/shisekidesu/shiseki09.html
明王院五重塔|文化遺産オンライン
https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/195800

最終更新: 2026.09.26