種子とは
種子は、仏や菩薩を梵字(古代インドの文字)一字で表したものである。「しゅじ」と読み、種字とも書く。一字の中に仏の働きのすべてが含まれるという考え方から、この名があるとされる。仏像や仏画の代わりに、あるいはそれと並んで、仏そのものを表す文字として用いられる。
仏ごとに決まった字がある。さいたま市の解説は、板碑に刻まれる種子として、阿弥陀如来を表す「キリーク」が大多数で、大日如来を表す「バン」「アーンク」などもあると説明している。世田谷区の阿弥陀三尊種子板碑は、中央に主尊の「キリーク」、その下に脇侍の観音を表す「サ」と勢至を表す「サク」を刻む。種子を読めば、その石塔や供養がどの仏に向けられたものかが分かる。
記録と実物で見分ける手がかり
種子は、板碑、宝篋印塔、五輪塔、宝塔などの石塔に多く刻まれる。関東地方の板碑では、頭部を山形にした石の上部に種子を大きく刻み、その下に年紀や願文を記すのが一般的で、川崎市の文永四年銘阿弥陀如来種子板碑は、二条線の下に梵字で表した阿弥陀如来の種子と蓮華座を彫り込み、その下に文永4年(1267年)の紀年銘を刻む。宝篋印塔では、方形の塔身の四面に四仏の種子を一字ずつ刻むことが多い。兵庫県加古川市指定の石造宝篋印塔は、塔身の四方に金剛界四仏の種子を刻む。
文化財の名称に「阿弥陀如来種子板碑」「阿弥陀三尊種子板碑」のように種子の語が入ることがある。記事では、どの仏の種子が、塔のどの部分に刻まれているかを、記録や自治体の解説で確かめて書きたい。現地では、石の面に一字ずつ大きく彫られた梵字を探す。風化で読みにくいことも多い。
参考文献
- 与野の板碑|さいたま市
- https://www.city.saitama.lg.jp/004/005/004/005/yono/yonokyodo_tenjikaisetsu/p081673.html
- 阿弥陀三尊種子板碑|世田谷区
- https://www.city.setagaya.lg.jp/02059/3430.html
- 文永四年銘阿弥陀如来種子板碑の指定に係る諮問について|川崎市
- https://www.city.kawasaki.jp/880/cmsfiles/contents/0000137/137430/040208gian39.pdf
- 石造宝篋印塔(加古川市指定)|文化遺産オンライン
- https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/229238
最終更新: 2026.09.27