三一平方メートルの小屋に凝らされた造作
金原家住宅離れ(かねはらけじゅうたくはなれ)は、広島県東広島市西条町下三永字土壇原にある建築面積31平方メートルの木造平屋建の離れで、大正期(1912〜1926年)の建築、平成24年(2012年)8月13日に国の登録有形文化財(建造物)に登録された。
主屋の西側に位置し、渡廊下を介して結ばれる。この渡廊下は登録原簿の構造欄にも記載され、離れの一部として扱われている。屋根は主屋と同じく入母屋造桟瓦葺。
平面は一文で述べ尽くせる。トコと棚を備えた六畳の主室と、これに並ぶ次の間。南側に便所。それだけである。
離れという建物の型
離れは、主屋と棟を分けながら同じ家に属する建物を指す。隠居した当主の居室、所帯を持った子の住まい、日常の生活空間を通さずに通したい客のための座敷、あるいは主人が茶や書に向かうための室として、時代ごとに用途を変えながら建てられてきた。
この建物型には固有の設計論理がある。規模が小さく、独立し、家全体の間取りを拘束しない。だからこそ資力のある施主が意匠に踏み込みやすい。規模を抑えることが、細部の贅を許すのである。日本の住宅建築における小規模造作の精華は、主屋の座敷よりもむしろこの種の建物に残ることが多い。
当離れの解説文も、小規模ながら瀟洒なつくりと評し、その根拠として二つの意匠を挙げる。
ひとつは渡廊下の花頭窓。上枠を釣鐘状の曲線に、頂部を尖らせて刳り抜く窓形式で、鎌倉期に禅宗建築とともに日本に入り、仏堂の窓として定着したのち、茶の湯を経て住宅へ広がった。教養の記号として扱われた窓である。渡廊下は通り抜ける場所にすぎない。そこに花頭窓を穿つということは、主屋から離れへ歩く数歩そのものを、施主が造作の対象と見なしていたことを意味する。
もうひとつは便所である。便所の壁に、木瓜形に刳った竹格子窓を設ける。木瓜は瓜の断面に由来する四弁の輪郭で、家紋の意匠として親しまれてきた。竹を組んだ意匠窓を、よりによって便所の壁に開ける。この一点が、この小さな建物に注がれた手間の水準を端的に示している。
登録の位置づけと周辺
当住宅の3棟は、平成24年8月13日の第73回登録で同時に登載された。離れの登録番号は34-0131で、主屋の34-0130と門の34-0132に挟まれる。いずれも登録基準の第一号「造形の規範となっているもの」による。
原簿は離れについても平成9年(1997年)の移築を記す。主屋と同じ扱いである。複数棟を一括して移す場合、建物相互の配置関係は保たれるのが通例であり、「主屋西側に渡廊下を介して建ち」という解説文の記述は、旧地での配置が新しい敷地でも再現されたことを示唆する。ただし移築前の所在地は原簿に記載がない。
実際的な情報は多くない。当住宅は個人所有で、公開日・拝観時間・拝観料のいずれも公表されておらず、文化庁のデータベースにも所有者名・管理団体の記載がない。登録有形文化財の制度は公開を義務づけない。この離れは、現に人の暮らす住宅の一部として扱うべき建物である。
所在地は東広島市の南寄り、西条町下三永字土壇原286-5。JR山陽本線の西条駅から南へおよそ4キロメートルの位置にある。周辺には明治から大正にかけて整備された三永水源地があり、堰堤沿いの桜と、5月初旬に見ごろを迎える藤棚が地元では知られている。
Q&A
- 金原家住宅離れは見学できますか。
- 公開に関する情報は公表されていません。国指定文化財等データベースにも所有者名・管理団体・公開状況の記載がありません。登録有形文化財には現に使用中の個人住宅が多く含まれ、所有者に公開の義務はありません。
- 離れとは何であり、金原家住宅離れは主屋とどうつながっていますか。
- 離れは主屋と棟を分けつつ同じ家に属する建物で、隠居所、子の住まい、客座敷、茶や書のための室などに用いられてきました。当離れは主屋の西側に建ち、屋根のある渡廊下で主屋と結ばれます。この渡廊下は登録原簿の構造欄にも記載されています。
- 金原家住宅離れの規模と間取りはどのようなものですか。
- 建築面積31平方メートル、木造平屋建です。主屋の231平方メートルと比べると小規模にあたります。トコと棚を備えた六畳の主室、これに並ぶ次の間、南側の便所という構成です。
- 金原家住宅離れの見どころとされる意匠は何ですか。
- 解説文は二点を挙げます。渡廊下の花頭窓と、便所壁に穿たれた木瓜形の竹格子窓です。花頭窓は禅宗建築由来の窓形式が住宅に転用されたもの、木瓜形の竹格子窓は便所という部位に意匠を凝らした例として注目されます。
- 金原家住宅離れはいつ建てられ、いつ登録されましたか。
- 大正期(1912〜1926年)の建築で、平成9年(1997年)に現在地へ移築され、平成24年(2012年)8月13日に登録番号34-0131で登録されました。移築前の所在地は原簿に記載がありません。
基本データ
| 名称 | 金原家住宅離れ(かねはらけじゅうたくはなれ) |
|---|---|
| 所在地 | 広島県東広島市西条町下三永字土壇原286-5 |
| 指定区分 | 登録有形文化財(建造物) 登録番号34-0131 第73回登録 |
| 指定年 | 平成24年(2012年)8月13日登録・同日告示 |
| 員数 | 1棟 |
| 寸法 | 建築面積31平方メートル、木造平屋建、瓦葺、渡廊下付 |
| 所有者 | 個人(国指定文化財等データベースに所有者名の記載なし) |
| 公開状況 | 非公開。公開に関する情報の公表なし |
参考文献
- 文化庁 国指定文化財等データベース 金原家住宅離れ
- https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00009377
- 文化遺産オンライン 金原家住宅離れ
- https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/277910
- 東広島市 市内の指定・登録文化財
- https://www.city.higashihiroshima.lg.jp/soshiki/kyoikuiinkaishogaigakushu/3/11/bunkazai/index.html
- 広島県教育委員会 広島県の文化財
- https://www.pref.hiroshima.lg.jp/site/bunkazai/
最終更新日: 2026.08.04