信岡家住宅とは
信岡家住宅は、広島県福山市新市町戸手の旧福山府中街道沿いにある旧家の屋敷で、文化5年(1808年)の西の蔵から昭和初期の茶室まで、敷地に建つ8棟が平成20年(2008年)4月18日に登録有形文化財となった。
屋敷を構えた信岡家は、福山観光コンベンション協会の紹介によれば、江戸時代に庄屋を代々務めた家である。主屋の座敷には本願寺から下された仏壇が納められており、文化庁はこの主屋を「地方における有力真宗門徒の住宅」の姿を伝えるものと評している。村の行政を担う家であると同時に、浄土真宗の信仰を厚く支えた家でもあった。
登録された8棟は、主屋、東の蔵、西の蔵、炭小屋、茶室及び腰掛、井戸屋形、中門及び塀、長屋門である。住まいの中心となる主屋、米や道具を納めた2棟の蔵、燃料や材木を置いた小屋、水を汲む井戸の覆屋、客を迎えるための茶室と門、そして街道に面した長屋門がそろう。庄屋の屋敷が暮らしと仕事のために備えた建物が、江戸時代後期から昭和初期までの年代の幅で一通り残っている。
現在、長屋門と茶室は「信岡フラットミュージアム」として、展示や教室などの催しに使われている。
屋敷の年代
文化庁のデータベースに記された年代を古い順に並べると、信岡家住宅はおよそ1世紀半をかけて今の構成になったことがわかる。
- 西の蔵:文化5年(1808年)
- 主屋・東の蔵:文政9年(1826年)
- 炭小屋:江戸時代末期。昭和初期に改修
- 中門及び塀:江戸時代末期
- 井戸屋形:慶応4年(1868年)
- 長屋門:明治時代初期
- 茶室及び腰掛:昭和初期。昭和30年(1955年)頃に移築
もっとも古いのは西の蔵で、主屋より18年早い。主屋と東の蔵は同じ文政9年の建築で、屋敷の中心となる住まいと米蔵が同じ時期に整えられたことになる。井戸屋形の慶応4年は、9月に明治へ改元される年にあたる。
茶室は、中門の伝えによれば、もとは御成座敷が建っていた場所に置かれている。御成座敷は、領主など身分の高い来訪者を迎えるために設けた座敷を指すことが多い。昭和30年(1955年)頃に茶室が移されてきたことで、屋敷の接客の場は江戸時代の座敷から昭和の茶室へと姿を変えた。
屋敷の配置
信岡家住宅の屋敷地は、南を旧福山府中街道に接している。文化庁の解説に記された位置を、主屋との関係で整理する。
街道側(南):長屋門
屋敷の正面、主屋の南に長屋門が東西に長く建つ。長さ31メートルの2階建で、街道を行く人の目にまず入るのはこの建物である。門口は西寄りに開く。
屋敷の北寄り:主屋
主屋は屋敷地の北寄りに東西棟で建ち、街道に南面する。東側を土間、西側を床上の部屋とし、さらに西へ仏壇を納めた座敷棟を延ばす。
主屋の西:西の蔵、茶室及び腰掛、中門
西の蔵は主屋の西に建つ。茶室は主屋の座敷棟の南に置かれ、その西に腰掛が並ぶ。中門は茶室の東南に建ち、南北に塀を延ばして茶室の一画を仕切っている。
主屋の東:東の蔵、炭小屋、井戸屋形
東の蔵は主屋の南東に南北棟で建ち、南東の端に東門を付ける。炭小屋は主屋の東、東の蔵の北にあり、井戸屋形は主屋の東南に位置する。
主屋の土間がある東側に蔵・小屋・井戸といった作業の建物が集まり、座敷のある西側に茶室と中門が置かれている。家事と農の仕事を東に、客を迎える場を西に寄せた配置として読むことができる。
登録の内容
信岡家住宅の8棟は、平成20年(2008年)4月18日付の第59回登録で登録有形文化財(建造物)となり、同年5月7日に告示された。登録番号は34-0085から34-0092までの連番である。
登録基準は3種類に分かれる。主屋と茶室及び腰掛の2件は「造形の規範となっているもの」、東の蔵、西の蔵、井戸屋形の3件は「再現することが容易でないもの」、炭小屋、中門及び塀、長屋門の3件は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」として登録された。
- 主屋(34-0085):木造平屋建、瓦葺、建築面積346平方メートル
- 東の蔵(34-0086):土蔵造2階建、瓦葺、建築面積66平方メートル、東門付
- 西の蔵(34-0087):土蔵造2階建、瓦葺、建築面積66平方メートル
- 炭小屋(34-0088):木造平屋建、瓦葺、建築面積27平方メートル、塀付
- 茶室及び腰掛(34-0089):茶室は木造平屋建、茅葺(銅板仮葺)、建築面積18平方メートル。腰掛は木造、銅板葺、面積3.5平方メートル
- 井戸屋形(34-0090):木造、瓦葺、面積5.6平方メートル
- 中門及び塀(34-0091):門は木造、瓦葺、間口1.5メートル。塀は木造、瓦葺、延長10メートル
- 長屋門(34-0092):木造2階建、瓦葺、建築面積137平方メートル
見学とアクセス
信岡家住宅は有限会社信岡地所が所有する私有の屋敷で、常時公開はしていない。福山観光コンベンション協会の案内では、公開は催しのある時だけ(不定期)で、催しによっては料金がかかる。
公開の場となっているのは、長屋門と茶室を使った「信岡フラットミュージアム」である。ミュージアムの案内によれば、開館は催しや教室がある時に限られ、古文書や万葉集を読む会、立礼式の茶道、金継ぎ・漆芸の教室などが開かれている。催しの予定はミュージアムのウェブサイトの「催物/NEWs」やInstagram(nobuoka_flat)で告知される。
主屋や蔵などほかの建物について、2026年10月時点で一般公開の案内は確認できなかった。催しのない日に訪れても、敷地に入ることはできないと考えておきたい。街道側からは長屋門の外観を眺めることができる。問い合わせ先として、協会の案内には電話0847-51-2366が掲載されている。
最寄り駅はJR福塩線の戸手駅で、福山観光コンベンション協会の案内では駅から徒歩5分ほどである。同じ案内に駐車場ありと記されている。
名称について
信岡家住宅の読みは「のぶおかけじゅうたく」。文化庁のデータベースでは、8棟がそれぞれ「信岡家住宅主屋(のぶおかけじゅうたくしゅおく)」のように、家名に建物名を続けた名称で登録されている。炭小屋は「すみごや」、井戸屋形は「いどやかた」、長屋門は「ながやもん」と読む。所在地の新市町は「しんいちちょう」、戸手は「とで」である。
参考文献
- 文化庁 国指定文化財等データベース「信岡家住宅主屋」
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00007127
- 文化庁 国指定文化財等データベース「信岡家住宅東の蔵」
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00007128
- 文化庁 国指定文化財等データベース「信岡家住宅西の蔵」
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00007129
- 文化庁 国指定文化財等データベース「信岡家住宅炭小屋」
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00007130
- 文化庁 国指定文化財等データベース「信岡家住宅茶室及び腰掛」
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00007131
- 文化庁 国指定文化財等データベース「信岡家住宅井戸屋形」
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00007132
- 文化庁 国指定文化財等データベース「信岡家住宅中門及び塀」
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00007133
- 文化庁 国指定文化財等データベース「信岡家住宅長屋門」
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00007134
- 福山観光コンベンション協会「【国登録有形文化財】信岡家住宅」
- https://www.fukuyama-kanko.com/travel/tourist/detail.php?id=122
- 信岡フラットミュージアム
- https://nobuoka-museum.jimdofree.com/
最終更新日: 2026.10.08
基本情報
| 名称 | 信岡家住宅 |
|---|---|
| 所在地 | 広島県福山市新市町大字戸手2166 |
| 所有者 | 有限会社信岡地所 |
| 指定 | 登録有形文化財 8件 |
| 座標 | 34.54892, 133.29764 |