樹々の間に立つ宣教師の家

北海道大学植物園の中、重要文化財である農学部博物館本館の西隣に、簡潔な木造二階建の家が立つ。バチェラー記念館、すなわちアイヌの伝道と研究で知られる英国国教会の宣教師ジョン・バチェラーの旧宅である。建物は明治31年(1898年)に建てられ、明治38年(1905年)に現在地へ移築された。

全面を下見板で覆い、寄棟屋根を鉄板で葺いた洋館である。正面は静かで左右対称。一階に出窓が張り出し、二階には縦長の上げ下げ硝子窓が均整のとれた対で並ぶ。誇張はどこにもない。結果として、簡素でありながら瀟洒でもある家に仕上がっている。

登録の理由

この建物の価値は、人物と建築の両方に拠る。ジョン・バチェラーは数十年を北海道で過ごし、アイヌの言語と文化に深く関わったことで広く知られ、ここはその住まいだった。建築としては、明治期の北海道に現れた簡素な洋風住宅の良好な一例で、外装も細部も抑制をもってまとめられている。

バチェラー記念館は平成12年(2000年)4月28日に登録有形文化財として登録され、告示は同年5月17日。登録基準は「造形の規範となっているもの」である。登録有形文化財の農学部博物館本館と並び立ち、植物園内に保存された初期建築群の一角をなす。

見どころ

正面に向き合い、左右対称を読み解いてほしい。一階に張り出す出窓が構成の要となり、二階の対の窓がそれに応じる。下見板は外装全体を途切れず走り、面は静かに保たれ、わずかな要素が意匠を担う。解説文が「簡素で瀟洒」と評したのは、この抑制のことである。

記念館は北海道大学植物園の中に立つ。植物園は有料で季節公開される公共施設のため、稼働中のキャンパスの建物より訪ねやすい。園そのものと、二十世紀に移築された登録有形文化財の植物園庁舎をはじめとする保存建築群をあわせて巡ることができる。

Q&A

Qジョン・バチェラーとは誰ですか。
A北海道で長く活動した英国国教会の宣教師で、アイヌの言語と文化への関わりで知られます。ここはその旧宅です。
Q最初からこの場所にありましたか。
Aいいえ。明治31年(1898年)に建てられ、明治38年(1905年)に現在の植物園内へ移築されました。
Q見学できますか。
A北海道大学植物園内にあり、園は有料・季節公開のため、来園時に外観を見られます。
Q出窓とは何ですか。
A一階の壁から外へ張り出す窓で、左右対称の正面に中心の見せ場を与えています。

基本情報

名称北海道大学農学部博物館バチェラー記念館
所在地北海道札幌市中央区北3条西8丁目(北海道大学植物園内)
指定区分登録有形文化財(登録 平成12年4月28日/告示 平成12年5月17日)
建築年明治31年(1898年)/明治38年(1905年)移築
構造木造2階建、鉄板葺、建築面積129㎡、1棟
所有者国立大学法人北海道大学
公開北海道大学植物園内(有料・季節公開)で外観見学可

References

国指定文化財等データベース(文化庁)— 北海道大学農学部博物館バチェラー記念館
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00001539
北海道大学 公式サイト
https://www.hokudai.ac.jp/

最終更新日: 2026.07.02