細部を読ませる小さな建物
旧札幌農学校図書館のよく知られた閲覧棟の隣に、控えめな煉瓦の箱が建っている。蔵書を収めるために明治35年(1902年)に建てられた図書館書庫である。二階建で切妻屋根、一見すると素朴な倉庫のようだが、面白さは細部の仕事にある。
壁の腰部には焼過煉瓦が積まれている。通常の煉瓦より色が濃く緻密で、湿気や摩耗に強いため地際によく用いられた。隅の要所には石が据えられ、妻の笠石は平らに流れるのではなく段状に積み上がる。どれも派手ではないが、実用の建物に設計者が細やかに手を入れていることを示している。
登録の理由
近隣の建物と同じく、書庫も新キャンパス整備の一環として中條精一郎が設計した。平成12年(2000年)4月28日に登録有形文化財として登録され、告示は同年5月25日。登録基準は「造形の規範となっているもの」である。
書庫は機能を突き詰めた建築だ。増えていく蔵書を守るため壁は厚く安定していなければならず、その要求には木造よりも煉瓦が適した。二十世紀初頭の専用書庫が、仕えた閲覧棟とともに残っていることで、明治の図書館という一つの構想を二つの棟から読み取れる。
見どころ
妻側に回り、笠石を目で追い上げてほしい。段状の石が屋根の稜線に、なめらかな線では出せない引き締まった輪郭を与えている。次に視線を低くし、腰の焼過煉瓦を見る。濃く焼かれた煉瓦が上部の普通の壁と接するところで、色と表面が切り替わる。隅石は小さな構造上の句読点のように働いている。
書庫は稼働中の札幌キャンパスにあり、構内を歩けば外観を見られる。内部は公開していない。旧閲覧棟の隣に立つため二棟をまとめて訪ねやすく、煉瓦の書庫と木造の閲覧棟を見比べると、同じ図書館という機能が石造と木造の二つの解法で示されていることがわかる。
Q&A
- 図書館書庫とは何ですか。
- 図書館の蔵書を収める建物で、収蔵品を守るため堅牢に造られます。ここでは旧閲覧棟の隣に立っています。
- 腰の煉瓦が違うのはなぜですか。
- 腰積には普通より硬く色の濃い焼過煉瓦を用いています。煉瓦造の地際によく使われる手法です。
- 誰がいつ設計しましたか。
- 設計は中條精一郎で、明治35年(1902年)に新キャンパスの一部として竣工しました。
- 閲覧棟も見られますか。
- はい。旧閲覧棟が同じキャンパスの隣に立ち、両方の外観をあわせて見られます。
基本情報
| 名称 | 北海道大学旧札幌農学校図書館書庫 |
|---|---|
| 所在地 | 北海道札幌市北区北9条西8丁目 |
| 指定区分 | 登録有形文化財(登録 平成12年4月28日/告示 平成12年5月25日) |
| 建築年 | 明治35年(1902年) |
| 構造 | 煉瓦造2階建、建築面積119㎡、1棟 |
| 設計 | 中條精一郎 |
| 所有者 | 国立大学法人北海道大学 |
| 公開 | 札幌キャンパスで外観見学可、内部は一般非公開 |
References
- 国指定文化財等データベース(文化庁)— 北海道大学旧札幌農学校図書館書庫
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00001649
- 北海道大学 公式サイト
- https://www.hokudai.ac.jp/
最終更新日: 2026.07.02