札幌キャンパスのルネッサンス建築

北海道大学の歴史的建造物のなかでも、古河記念講堂はひときわ端整な一棟である。明治42年(1909年)、札幌農学校を母体とする東北帝国大学農科大学の林学科教室として建てられた。現在は同大学大学院文学研究科が使用し、「古河講堂」の名でも親しまれている。

意匠はルネッサンス様式。中央に入口を置き、左右へ翼部を伸ばす。全体は二階建で、マンサード屋根を戴く。屋根の中央にはかつて時鐘を収めた小塔が立ち上がる。過度な装飾ではなく、その均衡とフランス風の屋根の線が、近くの素朴な教室棟とは一線を画している。

登録の理由

設計は文部省技師の新山平四郎。講堂は平成9年(1997年)9月3日に登録有形文化財として登録され、告示は同月16日。この一群の北海道大学の建物のなかでも早い時期の登録である。

その名にも歴史がある。建物は古河家の寄付によって建てられた。古河家の富は足尾銅山に由来し、この寄付は足尾鉱毒事件の後の経緯に結びつけて理解されている。その寄付で建てられた教室のうち、現存するのはこの講堂だけであり、建築としての価値に加えて、大学の歩みの一章を示す唯一の物証としての意味を持つ。もと林学教室であったことから、細部には「林」の字が織り込まれている。

見どころ

まず屋根を読んでほしい。下部の勾配が急なマンサード屋根が、講堂にフランス・ルネッサンスの趣を与える。かつて時鐘を備えた中央の小塔は、空を背に見つけやすい。次に正面全体を見渡し、中央の入口と均衡のとれた翼部が、いかに一つの端整な構成としてまとまっているかを確かめてほしい。下見板張の壁や切妻の主棟など、厳密なルネッサンスの規則から外れる細部も混じっている。

講堂は稼働中の札幌キャンパスにある。大学院文学研究科が使用するため内部に入れるのは大学関係者に限られるが、外観は構内を歩けば自由に見られる。旧図書館の読書室・書庫もあわせて巡る構内散策に、無理なく組み込める一棟である。

Q&A

Q「古河」の名の由来は何ですか。
A足尾銅山に関わる古河家の寄付で建てられたことに由来し、その寄付による教室で現存するのはこの講堂だけです。
Q誰がいつ設計しましたか。
A文部省技師の新山平四郎が設計し、明治42年(1909年)に林学教室として建てられました。
Qマンサード屋根とは何ですか。
A下部が急で上部が緩い二段勾配の屋根で、フランス由来の形が講堂にルネッサンスの性格を与えています。
Q内部は見学できますか。
A内部は文学研究科が使用し、大学関係者のみが入れます。外観は自由に見られます。

基本情報

名称北海道大学古河記念講堂(旧東北帝国大学農科大学林学科教室)
所在地北海道札幌市北区北9条西7
指定区分登録有形文化財(登録 平成9年9月3日/告示 平成9年9月16日)
建築年明治42年(1909年)
構造木造2階建、鉄板葺、建築面積414㎡、1棟
設計新山平四郎
所有者国立大学法人北海道大学
公開札幌キャンパスで外観見学可、内部は大学関係者のみ

References

国指定文化財等データベース(文化庁)— 北海道大学古河記念講堂(旧東北帝国大学農科大学林学科教室)
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00000282
文化遺産オンライン — 北海道大学古河記念講堂
https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/165592
札幌市 — 文化財紹介ページ(古河記念講堂)
https://www.city.sapporo.jp/ncms/shimin/bunkazai/bunkazai/syousai/37s_furukawa.html

最終更新日: 2026.07.02