本堂の北にある、小さいほうの建物

本行寺旧納骨堂は、北海道釧路市弥生の本行寺境内、本堂の北に接して建つ昭和6年(1931年)建築の納骨堂で、令和7年(2025年)3月13日に国の登録有形文化財(建造物)に登録された。

見落としやすい建物である。建築面積841平方メートルの本堂に対し、こちらは88平方メートル。木造平屋建、鉄板葺の、ごく素直な矩形をしている。本堂とのあいだには渡廊下が架かる。この一本の廊下が、旧納骨堂を単体で読んではいけないという最初の手がかりになる。

そしてこの関係こそが、登録の理由そのものだった。

造形ではなく、景観で登録された

登録有形文化財の登録基準は三つあり、いずれか一つを満たせばよい。隣の本堂は「造形の規範となっているもの」に該当した。旧納骨堂が該当したのは別の基準、「国土の歴史的景観に寄与しているもの」である。

文化庁の解説文は「重厚な外観が本堂とともに境内景観をつくる」と端的に述べている。登録番号は本堂が01-0172、旧納骨堂が01-0173と連番で、いずれも第109回の登録、令和7年3月13日付の官報告示で効力を生じた。

境内に立つとき、この違いは覚えておく価値がある。一方の建物は、それ自体が何であるかを問われた。もう一方は、周囲に対して何をしているかを問われた。

納骨堂という建築

納骨堂は、火葬した遺骨を安置するための建物を指す。日本では遺骨を家ごとの墓に納める方法のほかに、寺が管理する堂内の区画に納め、命日や彼岸に墓参と同じように訪ねるという方法がある。

本行寺旧納骨堂の内部は、板敷の一室のみ。納骨棚は南西側に設けられている。区画を細かく分けることも、参拝の順路を設けることもしない。一つの部屋が、一つの役目を果たしている。

本行寺が属する浄土真宗は、明治期に北陸などから移り住んだ人々によって北海道に広がり、道内で最大の門徒数を持つ。納骨堂は真宗寺院の境内でむしろ標準的な施設であり、だからこそ昭和初期の遺構が残っていることに意味がある。

一度も直されていない

寺の説明によれば、この建物は昭和6年の竣工以来、修復を受けたことがない。いま目にする姿は、建てられたときのままだという。

太平洋に面した北海道の、しかも霧の多い土地で、木造建築が90年余りを無修理で過ごしたことになる。防火と防腐の工夫は当初から織り込まれていた。屋根は本堂の銅板ではなく鉄板葺。外壁はモルタル塗仕上で、腰の部分には目地が切られ、石造のように見せている。これは6年前に建った本堂とまったく同じ手法である。手がけたのも同じ職人だった。寺は新潟県間瀬の宮大工集団「間瀬大工」の施工と伝えている。

ここに残っているのは、修復された建物ではない。修復されなかった建物であり、そちらのほうが、はるかに数が少ない。

足を止めて見たいところ

旧納骨堂は西を向いて建つ。屋根は入母屋造で、妻入、つまり出入口を妻側に置く形式をとる。その正面には入母屋造の庇が張り出す。単なる収蔵庫であれば要らない格式が、ここには与えられている。

側廻りには上下窓が並び、それぞれの上に櫛形の欄間が付く。この繰り返しが壁面にリズムを生み、どことなく洋風に見える。上に載る和風の屋根との取り合わせが、妙に心地よい。

内部にも、知って見ると忘れがたい細部がある。照明器具の根元に、洋風の植物装飾が施されているのだ。遺骨を納めるための建物に、それだけの手が入っている。

見学できるのか

旧納骨堂は現在、倉庫として使われており、常時公開はされていない。寺は2026年ごろの一般公開を目指して整備を進めるとしている。内部の見学を希望する場合は、事前に0154-41-5329へ現在の状況を問い合わせてから出かけたい。建物は境内から全体が見える位置にあり、外観の撮影に支障はない。

訪ねるには坂を上ることになる。本行寺はJR釧路駅からおよそ2キロ、幣舞橋を渡って米町方面へ上る道のりで、徒歩30分ほど。タクシーなら10分足らずで着く。境内は日中入ることができ、拝観料はかからない。現役の寺院であるから、法要の予定が優先される点は心得ておきたい。

隣接する米町公園には灯台を模した展望台があり、港を見渡せる。本行寺2棟の登録により釧路市の文化財は29件となり、登録証は令和7年7月1日、本堂において釧路市長から住職へ手渡された。

Q&A

Q本行寺旧納骨堂の内部は見学できますか。
A常時公開はされていません。現在は倉庫として使われており、寺は2026年ごろの一般公開を目指して整備を進めるとしています。見学の可否は0154-41-5329へ事前にご確認ください。外観は境内から自由に見ることができ、撮影も可能です。
Q本行寺旧納骨堂はいつ建てられ、いつ登録されたのですか。
A昭和6年(1931年)の建築です。令和6年11月22日に文化審議会が答申し、令和7年(2025年)3月13日付の官報告示により、本堂とともに登録有形文化財となりました。登録番号は01-0173です。
Q本行寺旧納骨堂は何が評価されて登録されたのですか。
A登録基準のうち「建設後50年を経過し、国土の歴史的景観に寄与しているもの」に該当します。重厚な外観が本堂とともに境内の景観をつくっている点が評価されました。本堂は「造形の規範となっているもの」という別の基準での登録です。
Q本行寺旧納骨堂はどのような建物なのですか。
A納骨堂は火葬した遺骨を安置するための堂です。旧納骨堂の内部は板敷の一室で、南西側に納骨棚が設けられています。本堂とは渡廊下でつながっており、二棟で一体の構成をなしています。
Q本行寺旧納骨堂の外観の見どころはどこですか。
A妻入の入母屋造と、その正面に張り出す入母屋造の庇。側面に並ぶ櫛形欄間付の上下窓。そしてモルタル塗の外壁で、腰に目地を切って石造風に仕上げた部分です。最後の一点は本堂と共通の手法です。
Q本行寺旧納骨堂と本堂は何が違うのですか。
A主に規模と材料です。旧納骨堂は88平方メートル、本堂は841平方メートル。屋根は鉄板葺と銅板葺。建築年は昭和6年と大正14年です。ただし施工は同じ間瀬大工と伝えられ、石造風の外壁仕上げも共通しています。

基本データ

名称本行寺旧納骨堂(ほんぎょうじきゅうのうこつどう)
所在地北海道釧路市弥生二丁目31他(郵便住所は釧路市弥生2丁目11-22)
指定区分国登録有形文化財(建造物)/登録基準「国土の歴史的景観に寄与しているもの」/登録番号 01-0173
指定年令和7年(2025年)3月13日登録(令和6年11月22日答申)
員数1棟
寸法木造平屋建、鉄板葺、建築面積88平方メートル、渡廊下付。昭和6年(1931年)建築
所有者宗教法人本行寺
公開状況外観は境内から日中見学可、拝観料なし。内部は常時非公開(2026年ごろの一般公開を目指し整備中)。問い合わせ0154-41-5329

参考文献

文化庁 国指定文化財等データベース — 本行寺旧納骨堂
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00015272
釧路市 — 「本行寺本堂」及び「本行寺旧納骨堂」(国登録有形文化財)
https://www.city.kushiro.lg.jp/museum/bunkazai/1005708/bunkazai/hongyoji.html
本行寺公式サイト — 国登録有形文化財・旧納骨堂
https://hongyouji946.com/oldossuary/
本行寺公式サイト — 本行寺について
https://hongyouji946.com/about-hongyouji/
文化遺産オンライン — 北海道・釧路市
https://online.bunka.go.jp/heritages/region/1/1206

最終更新日: 2026.08.28