森の町に建つ真宗大谷派の本堂
順誓寺本堂は、北海道網走郡津別町字新町にある真宗大谷派の仏堂で、昭和10年(1935年)に建てられ、平成19年(2007年)7月31日に国の登録有形文化財(建造物)に登録されました。木造平屋建、鉄板葺、建築面積は203平方メートル。境内の奥寄りに、東南を向いて据えられています。
津別町は森の町です。町域のおよそ86パーセントを森林が占め、林業と木材業が長く町を支えてきました。本堂が完成した昭和10年は、津別村が美幌村から分かれて16年目にあたります。開拓の第一世代がまだ働き盛りだった時期です。木材なら地元にいくらでもある土地で、その木をどう組み上げるかに寺と大工が力を注いだ建物だと考えると、見え方が少し変わってきます。
屋根は切妻造です。真宗の本堂は入母屋造とする例が多く、切妻はやや珍しい選択といえます。妻側の三角形が正面から素直に読み取れるぶん、輪郭は簡素で力強い。その正面に、向拝が一間分だけ張り出します。葺材は鉄板。雪の重みと落雪を考えれば、道東の冬に対する現実的な答えでした。
登録の理由と、堅牢さの中身
登録有形文化財の登録基準は三つあり、順誓寺本堂は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」に該当します。個々の意匠が突出しているかどうかよりも、その土地の風景を形づくってきた建物であることが評価された、と読み取れます。登録番号は01-0093。頭の01は北海道を示す番号です。
平面は桁行七間、梁間七間。ほぼ正方形の、大きな箱です。
内部を支える木組み
文化庁の解説が具体的に触れているのは、堂内の骨組みでした。内部の柱は円柱とし、外陣(げじん)では入側柱を成(せい)の高い虹梁(こうりょう)で固めています。成が高いとは、梁の断面の縦寸法が大きいということ。太い梁を横に渡して柱どうしを強く結び、広い外陣の空間を無柱に近い状態で支えているわけです。参詣者が座る側から見上げると、その太さがそのまま天井近くの景色になります。
構造材に彫られた装飾
質実な構造だけで終わらないのが、この本堂の面白いところです。内陣と外陣の境には彫刻欄間が入り、その上部にさらに絵様虹梁と大斗実肘木(だいとさねひじき)が重ねられています。絵様とは、梁の側面に彫り込まれた雲や渦の文様のこと。構造をになう部材そのものに装飾を施す手法で、力を受け止める部分ほど手が込んでいる、という真宗本堂らしい考え方が表れています。文化庁はこれを、全体に堅牢で華やかなつくりと評しました。
訪ねるときに知っておきたいこと
順誓寺は今も法要が営まれている寺院です。登録有形文化財という制度は、所有者が建物を使い続けることを前提としています。観光施設として整備されているわけではありません。内部の拝観を希望する場合は、事前に寺院へ問い合わせてください。境内は私有地ですので、撮影の可否についても寺院の指示に従うのが筋です。
アクセスは車が現実的です。JR石北本線の美幌駅から津別町の市街地まではおよそ14.5キロ、車でおよそ20分。女満別空港からは30分ほどで町に入れます。新町地区は市街の中心に近く、町役場からも歩ける範囲です。
冬に訪れる方へ。津別町は降雪量が多く、特別豪雪地帯に指定されています。内陸の山間部という立地から、氷点下25度前後まで下がる日もあります。鉄板葺の屋根は雪を落とすための屋根でもありますから、軒下に長く立ち止まるのは避けたほうが安全です。
そして、津別まで足を延ばすなら本堂だけで帰るのは惜しい。屈斜路湖を見下ろす津別峠、原始の森に囲まれたチミケップ湖、廃線となった旧北見相生駅を公園化した相生鉄道公園。いずれも町内にあります。
Q&A
- 順誓寺本堂は拝観できますか。拝観料はかかりますか。
- 順誓寺は現役の寺院で、観光公開を目的とした施設ではありません。拝観の可否や条件は寺院の判断によりますので、訪問前に必ず問い合わせてください。拝観料の設定についても同様です。
- 順誓寺本堂へはどう行けばよいですか。最寄り駅からどのくらいかかりますか。
- 最寄り駅はJR石北本線の美幌駅で、津別町市街まではおよそ14.5キロ、車で20分ほどです。女満別空港からは車でおよそ30分。鉄道は町内まで通じていないため、レンタカーかバスの利用になります。
- 順誓寺本堂の写真は撮ってもよいですか。
- 境内は私有地です。撮影については寺院の指示に従ってください。道路から外観を眺めるだけでも、切妻の妻面と一間の向拝という構成は十分に読み取れます。
- 順誓寺本堂が登録された「登録有形文化財」は、重要文化財と何が違うのですか。
- 重要文化財が国による指定で強い保護と現状変更の制限を伴うのに対し、登録有形文化財は届出制を基本とする緩やかな制度です。建てられてからおおむね50年を経た建造物が対象で、所有者が使い続けながら守っていくことを想定しています。
- 順誓寺本堂の建築で、特に注目すべき点はどこですか。
- 外からは切妻造という屋根形式です。真宗本堂では入母屋造が多く、切妻はやや珍しい選択にあたります。内部では、外陣の入側柱を成の高い虹梁で固めた木組みと、内外陣境の彫刻欄間の上に絵様虹梁と大斗実肘木を重ねた部分が見どころとされています。
基本データ
| 名称 | 順誓寺本堂(じゅんせいじほんどう) |
|---|---|
| 所在地 | 北海道網走郡津別町字新町16 |
| 指定区分 | 登録有形文化財(建造物)/登録基準「国土の歴史的景観に寄与しているもの」/登録番号 01-0093 |
| 指定年 | 平成19年(2007年)7月31日登録 |
| 員数 | 1棟 |
| 寸法 | 桁行七間、梁間七間、正面向拝付/木造平屋建、切妻造、鉄板葺/建築面積203平方メートル |
| 所有者 | 非公開(文化庁の国指定文化財等データベースに所有者名の記載なし) |
| 公開状況 | 現役の寺院。観光公開施設ではなく、内部拝観の可否は寺院への事前問い合わせが必要 |
参考文献
- 国指定文化財等データベース(文化庁)— 順誓寺本堂
- https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00005790
- 文化遺産オンライン(文化庁)— 順誓寺本堂
- https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/141558
- 津別町 — 津別町について(沿革・地勢)
- https://www.town.tsubetsu.hokkaido.jp/soshiki/tsubetsuchoyakuba/12/739.html
最終更新日: 2026.08.27