旧田村呉服店炊事場とは

旧田村呉服店炊事場は、茨城県つくば市北条にある大正期の木造建築で、平成27年(2015年)11月17日に国の登録有形文化財に登録された。呉服店の主屋から北東へ離れた位置、商品蔵の東に建つ、南北に細長い平屋である。

規模は桁行5間弱、梁間1間強。木造平屋建で、屋根は切妻造桟瓦葺、建築面積は18平方メートル。壁は柱を見せる真壁造で、仕上げは荒壁のまま。基礎の切石は、一部を高く積んである。

内部は南から順にスイジバ、ヨクシツ、ベンジョが一列に並ぶ。台所と風呂と便所を1棟にまとめ、主屋から切り離した建物である。文化庁の国指定文化財等データベースは、旧田村呉服店炊事場が当初から別棟であったと記している。あとで分離したのではなく、初めからそう建てられた。

火と水を主屋から離す

台所と風呂は、家のなかで火と水と煙をいちばん多く扱う場所である。土蔵造の商家にとって、火は最大の敵だった。旧田村呉服店炊事場を独立した棟として北東に置いた判断には、失火を主屋と蔵に及ばせないという明快な理由がある。煮炊きの湯気と煤が、反物を収める空間から遠ざかることにもなる。

壁が荒壁仕上のままである点も、この建物の性格に合っている。荒壁は土壁の下地となる粗い層で、通常はその上に中塗り、上塗りと重ねて仕上げる。旧田村呉服店炊事場ではそこで止めてある。人を通す表の座敷ではなく、家族が働く場所だからである。裏方の建物にどこまで手をかけ、どこで止めたのかが、壁の状態にそのまま残っている。

登録基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」。同じ平成27年(2015年)11月17日、道路に面するミセ蔵兼主屋、その後方の蔵、敷地東側の穀蔵及び浴室もそれぞれ登録された。旧田村呉服店炊事場は、その4棟のうちで最も飾り気がなく、それゆえ生活の様態をもっともよく伝えている。

見どころ

基礎を見てほしい。切石を積んだ布基礎で、一部だけを高く積み上げてある。敷地に傾斜があれば水平を出すために高さを変えるし、水を使う部屋では床下の湿気を避けるために床を上げる。旧田村呉服店炊事場のどちらの事情によるものかは、外から見ただけでは決められない。ただ、寸法をそろえない扱いは、この建物が実務から出発していることを示している。

細長い平面も見どころである。桁行5間弱に対して梁間は1間強しかない。部屋を一列に並べれば、給排水の経路も煙の抜け道も短くて済む。南のスイジバから北のベンジョまで、必要な順に一直線に並ぶ配置には無駄がない。

敷地の別の場所にも風呂がある。東側に建つ穀蔵の南端には、昭和前期に増築された浴室が接続している。旧田村呉服店炊事場のヨクシツと合わせて、屋敷には風呂が2つあったことになる。どのように使い分けられたのかを示す一次資料は見つかっていない。

建物の履歴には昭和30年(1955年)頃の改修が記録されている。大正期に建てられてから30年ほどのちの手入れで、台所と風呂が日常の変化を最も早く受ける場所であることを考えれば、無理のない時期である。

見学方法とアクセス

旧田村呉服店炊事場は敷地の奥にあり、内部は公開されていない。同じ敷地で公開されているのは、道路に面するミセ蔵兼主屋の1階店舗部分で、北条ふれあい館として土曜・日曜・祝日の午前10時から午後4時まで開いている。入館は無料。運営は地元の北条街づくり振興会で、連絡先は電話080-6788-0693。見学の可否についてはここへ問い合わせてほしい。

撮影について公表された規定は確認できなかった。敷地内で写真を撮る場合は、ふれあい館の店番の方に確認するとよい。

公共交通なら、つくばエクスプレスのつくば駅(つくばセンター)から、つくバス北部シャトルで「筑波交流センター」まで約40分、下車して徒歩約10分。つくバス小田シャトルの「北条仲町」は敷地の正面に停まるが、経路が大回りで1時間近くかかる。専用駐車場の有無は公表資料からは確認できなかった。

Q&A

Q旧田村呉服店炊事場の内部は見学できますか?
A公開されていません。同じ敷地では、道路に面するミセ蔵兼主屋の1階店舗部分が北条ふれあい館として開かれています(土曜・日曜・祝日の午前10時から午後4時、無料)。見学の可否は電話080-6788-0693へ問い合わせてください。
Q旧田村呉服店炊事場はいつ建てられ、いつ文化財になりましたか?
A大正期(1912〜1926年)の建築で、昭和30年(1955年)頃に改修されています。平成27年(2015年)11月17日に登録有形文化財に登録されました。
Q旧田村呉服店炊事場の内部はどんな造りですか?
A南から順にスイジバ、ヨクシツ、ベンジョが一列に並びます。桁行5間弱、梁間1間強の細長い平屋で、壁は真壁造の荒壁仕上のままです。
Q旧田村呉服店炊事場はなぜ主屋と別棟なのですか?
A当初から別棟として建てられています。火を使う場所を主屋や蔵から離せば失火の被害を抑えられ、湯気や煤も反物を収める空間から遠ざけられます。
Q旧田村呉服店炊事場へのアクセスは?最寄り駅からどのくらいかかりますか?
Aつくばエクスプレスつくば駅(つくばセンター)から、つくバス北部シャトルで「筑波交流センター」まで約40分、下車後は徒歩約10分です。つくバス小田シャトルの「北条仲町」は敷地の正面ですが、1時間近くかかります。

基本データ

名称旧田村呉服店炊事場
所在地茨城県つくば市北条字日向39-1
指定区分登録有形文化財(建造物)
指定年平成27年(2015年)11月17日登録
員数1棟
寸法木造平屋建、瓦葺、建築面積18平方メートル。桁行5間弱、梁間1間強
所有者個人(田村家)
公開状況非公開。同一敷地のミセ蔵兼主屋1階が北条ふれあい館として公開(土曜・日曜・祝日の午前10時から午後4時、無料)

参考文献

文化庁 国指定文化財等データベース「旧田村呉服店炊事場」
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00010742
つくば市「文化財の保護」
https://www.city.tsukuba.lg.jp/soshikikarasagasu/kyoikukyokubunkazaika/gyomuannai/2/1/1001638.html
つくば市「つくば市の登録有形文化財」
https://www.city.tsukuba.lg.jp/material/files/group/156/R8_tsukuba_tourokubunkazai.pdf
北条街づくり振興会 筑波山麓北条「みどころ」
https://tsukuba-hojo.jp/highlights/
北条街づくり振興会 筑波山麓北条「まちづくり(北条ふれあい館)」
https://tsukuba-hojo.jp/town/
つくば市「コミュニティバス『つくバス』利用案内」
https://www.city.tsukuba.lg.jp/soshikikarasagasu/toshikeikakubusogokotsuseisakuka/gyomuannai/2/1/1001471.html

最終更新日: 2026.09.07