T字路の角地に構える見世

平井家住宅店舗及び主屋は、茨城県桜川市真壁町真壁264にある明治中期の町家建築で、平成16年(2004年)6月9日に国の登録有形文化財に登録された。

建物はT字路の西南角地を占め、北面して通りに向く。店舗部分は桁行4間半、梁間2間の東西棟。切妻造、桟瓦葺の木造2階建で、前面には約5尺の下屋庇が差し出される。1間を約1.82メートルとすれば、間口はおよそ8.2メートル、奥行きは3.6メートルほど。角地の建物としては控えめな寸法で、真壁の商家群のなかでは中規模に属する。

店舗の奥は角屋状に張り出す。6畳と床付き8畳から成る主屋部分で、接客と居住の機能をここに収めている。建築面積は99平方メートル。

特徴は西面にある。隣家に接するこの面だけが土蔵風に仕上げられ、柱や板を見せる通常の真壁造ではなく、厚い塗り壁で覆われている。文化庁の解説文もこの点を建物の特色として挙げる。

天保の大火と登録の理由

真壁の町割は、国指定史跡である真壁城に付属した集落に起源をもち、遅くとも慶長20年(1615年)までには成立していたと考えられている。近世には笠間藩の陣屋が置かれ、周辺の物産が集散する在郷町として発展した。北関東から東北へ木綿を送り出す販売拠点でもあった。

町並みを変えたのは天保8年(1837年)の大火である。それまで茅葺家屋が主体であったとみられる町に、以後、蔵造の町屋が次第に普及していった。平井家の店舗が建てられたのは大火から半世紀余りのちだが、隣家沿いの西面を土蔵風とする処理は、この延焼への警戒が明治の町家にも受け継がれていたことを示す。角地に建つ以上、火の回りやすい面は隣家側であり、そこを厚く固めるという判断である。

登録有形文化財の制度は、重要文化財の指定とは性格が異なる。平成8年(1996年)の文化財保護法改正で創設されたもので、築50年以上の建造物を幅広く対象とし、外観の変更などについては届出制をとる。使いながら守る、という発想に立つ。平井家住宅店舗及び主屋は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」の基準により、第42回登録で登録番号08-0131を得た。官報告示は同年6月24日。

桜川市は平成11年度からこの制度を積極的に活用し、短期間で真壁の建造物を次々と登録した。登録棟数については資料により101棟、102棟、104棟と幅があり、公表時期の違いによるものと考えられる。平成22年(2010年)6月29日には約17.6ヘクタールが重要伝統的建造物群保存地区に選定された。全国で87地区目、茨城県内では最初の選定である。

通りから読み解く細部

個人の住宅であり、内部は非公開。拝観料も開館時間も設定されていない。見学は道路上からの外観観察に限られるが、登録有形文化財が守ろうとしているのは町並みに対する外観の寄与であるから、それで足りるともいえる。

まず下屋庇と2階壁面が接する線を見る。庇の出が約5尺あるため、店先には一日の大半、深い影が落ちる。

次に数歩西へ移動すると、木造の正面と塗り込めの西面が一つの視野に並ぶ。構法の異なる二つの面が角で出会う、その1メートルほどの範囲にこの建物の性格が凝縮している。

主屋の東南隅からは、道路に沿って通り庭と長屋門が南へ延び、その先に平井家住宅土蔵(登録番号08-0132、明治26年)が南北棟で建つ。同日登録の2棟を続けて見ることで、通りに商いの顔を向け、敷地の奥へ収蔵空間を伸ばすという真壁の商家の敷地構成が把握できる。

真壁の民家が一斉に扉を開くのは、例年2月4日頃から3月3日まで開催される「真壁のひなまつり」の期間である。平成15年(2003年)2月、寒中に訪れる人をもてなそうとした住民有志の発案から始まり、現在は100軒を超える家々や店舗が雛人形を飾り、見学は無料。来訪者は7万人規模とされる。参加は各戸の自由意思によるため年によって変動する。訪問前に桜川市観光協会の最新のマップを確認されたい。

交通は自家用車が現実的である。常磐自動車道土浦北インターチェンジから約40分。有料の高上町駐車場は真壁町真壁279-1にあり、平井家住宅と同一街区にあたる。鉄道の場合はJR水戸線岩瀬駅、またはつくばエクスプレスつくば駅からバスを乗り継ぐ必要がある。撮影は公道からの外観に限り、居住者の生活空間である玄関先や窓辺には立ち入らない配慮が求められる。

Q&A

Q平井家住宅店舗及び主屋の内部は見学できますか。
Aできません。現に人が暮らす個人所有の住宅で、内部は非公開です。外観は公道からいつでも見学できます。2月のひなまつり期間には玄関先を開放する家もありますが、参加の可否は各戸が個別に決めています。
Q平井家住宅店舗及び主屋はいつ登録されましたか。登録有形文化財とは何ですか。
A平成16年(2004年)6月9日登録、同年6月24日官報告示、登録番号08-0131です。登録有形文化財は平成8年の文化財保護法改正で創設された制度で、築50年以上の建造物を対象とし、重要文化財の指定に比べて所有者の負担が軽い届出制をとります。
Q平井家住宅店舗及び主屋へのアクセス方法を教えてください。
A所在地は桜川市真壁町真壁264です。真壁に鉄道は通っておらず、JR水戸線岩瀬駅またはつくばエクスプレスつくば駅からバスを乗り継ぎます。自動車の場合は土浦北インターチェンジから約40分。有料の高上町駐車場(真壁町真壁279-1)が同一街区にあります。
Q平井家住宅店舗及び主屋は、稲敷市の平井家住宅と同じものですか。
A別の建物です。稲敷市柴崎の平井家住宅は江戸時代の茅葺民家で、昭和51年(1976年)に重要文化財に指定されています。本稿の平井家住宅は桜川市真壁の明治期の町家で、登録有形文化財です。千葉県佐倉市や静岡県熱海市にも同名の登録文化財があり、混同されやすいので注意が必要です。
Q平井家住宅店舗及び主屋の西面が土蔵風なのはなぜですか。
A隣家に接する面からの延焼を防ぐためと考えられます。天保8年(1837年)の大火以後、真壁では蔵造の町屋が普及しました。西面のみを塗り込める処理はその流れを引くもので、文化庁の解説文もこれを本建物の特徴として記しています。
Q平井家住宅店舗及び主屋を訪ねるのに適した時期はいつですか。
A2月上旬から3月3日までの「真壁のひなまつり」期間が最も賑わいます。100軒以上の家や店が雛人形を飾り、見学は無料です。週末には中心部で交通規制が敷かれ歩行者天国となる日もあります。それ以外の時期は静かに町並みを歩けます。

基本情報

名称平井家住宅店舗及び主屋(ひらいけじゅうたくてんぽおよびしゅおく)
所在地茨城県桜川市真壁町真壁264
指定区分登録有形文化財(建造物)/登録番号 08-0131
指定年平成16年(2004年)6月9日登録、同年6月24日官報告示(第42回登録)
員数1棟
寸法木造2階建、瓦葺、建築面積99平方メートル。店舗は桁行4間半・梁間2間(約8.2×3.6メートル)、東西棟、切妻造、桟瓦葺。前面に約5尺の下屋庇
所有者個人(文化庁データベースに所有者名の記載なし)
公開状況内部非公開。外観は公道から常時見学可。真壁重要伝統的建造物群保存地区内

参考文献

国指定文化財等データベース(文化庁)— 平井家住宅店舗及び主屋
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00004117
国指定文化財等データベース(文化庁)— 平井家住宅土蔵
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00004118
茨城県教育委員会 いばらきの文化財 — 平井家住宅店舗及び主屋
https://kyoiku.pref.ibaraki.jp/bunkazai/bunkazai-registered-6301/
茨城県教育委員会 — 桜川市真壁伝統的建造物群保存地区
https://kyoiku.pref.ibaraki.jp/bunkazai/bunkazai-8557/
桜川市 — 桜川市真壁伝統的建造物群保存地区
https://www.city.sakuragawa.lg.jp/page/page003423.html
全国伝統的建造物群保存地区協議会 — 桜川市真壁
https://www.denken.gr.jp/archive/sakuragawa-makabe/index.html

最終更新日: 2026.08.06