米内浄水場とは
米内浄水場(よないじょうすいじょう)は、岩手県盛岡市上米内にある昭和9年(1934年)完成の盛岡市最初の浄水場で、創設時の緩速ろ過系の施設7件と旧管理事務所の水道記念館が、平成11年(1999年)8月23日に登録有形文化財に登録された。登録番号は03-0012から03-0019までの連番で、8件とも「国土の歴史的景観に寄与しているもの」として登録されている。
登録されたのは、原水を受ける着水井、濁りを沈める沈殿池、砂でこすろ過池という水の通り道と、ろ過池に1棟ずつ付く3棟の調整室、正門脇の出水井、そして水道記念館である。所有者はいずれも盛岡市水道事業管理者。米内浄水場は登録後も稼働を続けており、米内川の水を緩速ろ過と急速ろ過の2つの方式で浄水している。施設能力は1日3万2450立方メートルである。
昭和60年(1985年)5月には「近代水道百選」に選ばれた。盛岡市も平成30年(2018年)10月10日に、米内浄水場を景観重要建造物の第19号に指定している。
東北の県都で最後の水道
盛岡は北上川・中津川・雫石川の合流点に開けた町で、飲み水は浅井戸に頼っていた。盛岡市上下水道局の「もりおか水道史」によると、大正14年(1925年)11月に岩手県が市内の井戸2545か所を検査したところ、622か所が飲用に適さないと判定された。残りの井戸も、のちに水源となる米内川より水質のよいものは91か所しかなかった。
東北6県の県庁所在地では、明治40年(1907年)の秋田市を皮切りに、福島市の大正14年(1925年)までに各市が水道を持った。盛岡市は水道のない最後の県都になっていた。
中村謙蔵市長は昭和4年度(1929年度)の予算に水道調査費を計上し、同年10月には内務省技師の河口協介が米内川・中津川・雫石川を視察した。河口は米内川の水量と水質、流域にある約2000ヘクタールの県有林による水源の涵養を評価し、水源は米内川に決まった。都市計画課長の太田勇太郎らの技術陣が設計を進め、取水口から浄水場、配水池までを自然流下でつなぐ計画が昭和6年(1931年)にまとまった。
工事は昭和8年(1933年)5月に本格化した。浄水場や配水池の工事には水道の先進地だった関東・関西から作業員を招き、地元の業者が資材の運搬や管の埋設を受け持った。工事は昭和9年(1934年)8月に終わり、11月23日に通水落成式、12月1日に家庭への給水が始まった。
米内浄水場の配置と水の道筋
文化庁の解説を順に読むと、構内での水の流れがわかる。米内川の約1キロメートル上流で取り入れた水は、沈砂池で砂を落としてから導かれ、構内東端の着水井に入る。着水井で水量を量ったあと、北隣の沈殿池へ送られる。着水井と沈殿池は、構内東方の一段高い造成地に並んで築かれた。
沈殿池の南には、90メートル×37メートルの緩速ろ過池が横たわる。池は隔壁で3つに分けられ、それぞれの南辺の中央に、弁を操作する調整室の小さな上屋が建つ。東から1号、2号、3号の順で、3号は米内川に沿った敷地の西寄りにある。
正門はJR山田線の上米内駅に向き合っている。門を入ると左手に八角形の出水井の上屋、右手にろ過池と3号ろ過池調整室が広がる。木造の水道記念館は敷地の南東寄りに建ち、沈殿池とろ過池を見渡せる位置にある。
調整室と出水井の上屋は、いずれも鉄筋コンクリート造で、大谷石の縁取りや丸窓といった共通の意匠でまとめられている。盛岡市は、旧管理事務所の水道記念館と出水井の上屋、ろ過池が一体となっていまも稼働し、盛岡の水道の歩みを伝えている点を景観上の価値として挙げる。
構内のヤエベニシダレヒガンザクラも、浄水場とともに歩んできた。上下水道局によると浄水場の完成と同時に植えられた桜で、「米内のヤエベニシダレヒガン群」として市の景観重要樹木になっている。
米内浄水場の見学と行き方
米内浄水場は稼働中の浄水施設のため、ふだんは一般の人は構内に入れない。構内を歩けるのは、毎年桜の開花に合わせて行われる一般公開の期間である。令和8年(2026年)は4月22日から5月6日までの15日間、午前9時から午後4時30分まで公開され、水道記念館も午後4時まで開いた。期間は開花の状況で変わることがあり、上下水道局のホームページで知らされる。公開中は飲食や喫煙、敷物に座っての見学、ペットの同伴、ドローンでの撮影ができない。
水道記念館については、上下水道局が4月16日から11月30日までの平日(土曜・日曜・祝日は休み)、午前9時30分から午後4時30分までを開館時間として案内しており、入館は無料で、見学には事前の申し込みを求めている。問い合わせ先は米内浄水場(電話019-667-2280)である。6月の水道週間に合わせた上下水道局の水道施設見学会でも、米内浄水場が見学先に入ることがある。
最寄り駅はJR山田線の上米内駅で、駅から米内浄水場まで歩いて2分ほどである。バスを使う場合は、岩手県交通の駅桜台団地線で桜台団地東口停留所まで行き、そこから歩いて15分ほどかかる。
参考文献
- 国指定文化財等データベース 米内浄水場緩速系着水井(文化庁)
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00001214
- 国指定文化財等データベース 米内浄水場緩速沈殿池(文化庁)
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00001215
- 国指定文化財等データベース 米内浄水場緩速ろ過池(文化庁)
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00001216
- 国指定文化財等データベース 米内浄水場1号ろ過池調整室(文化庁)
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00001217
- 国指定文化財等データベース 米内浄水場2号ろ過池調整室(文化庁)
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00001218
- 国指定文化財等データベース 米内浄水場3号ろ過池調整室(文化庁)
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00001219
- 国指定文化財等データベース 米内浄水場出水井(文化庁)
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00001220
- 国指定文化財等データベース 米内浄水場水道記念館(文化庁)
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00001221
- 盛岡市上下水道局 盛岡市の浄水場
- https://www.morioka-water.jp/about/filter_morioka.html
- 盛岡市上下水道局 もりおか水道史
- https://www.morioka-water.jp/various/suidoshi.html
- 盛岡市上下水道局 水道記念館
- https://www.morioka-water.jp/about/kinenkan.html
- 盛岡市上下水道局 米内浄水場の桜
- https://www.morioka-water.jp/various/yonai_sakura.html
- 盛岡市上下水道局 水道施設見学会
- https://www.morioka-water.jp/about/kengaku.html
- 盛岡市 景観重要建造物 米内浄水場
- https://www.city.morioka.iwate.jp/kanko_sports_bunka/rkeishi_bunkazai/kenzobutsu/1009401.html
- 盛岡市 景観重要建造物 第19号 米内浄水場(PDF)
- https://www.city.morioka.iwate.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/025/940/19kenzou-2.pdf
- 盛岡市プレスリリース 米内浄水場の桜を一般公開します(令和8年4月13日、PDF)
- https://www.city.morioka.iwate.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/056/053/0413josui.pdf
- 盛岡市 国指定文化財など
- https://www.city.morioka.iwate.jp/kanko_sports_bunka/rkeishi_bunkazai/bunkazai/1009340/1009341.html
最終更新日: 2026.10.02
基本情報
| 名称 | 米内浄水場 |
|---|---|
| 所在地 | 岩手県盛岡市上米内字中居49 |
| 所有者 | 盛岡市水道事業管理者 |
| 指定 | 登録有形文化財 8件 |
| 座標 | 39.74502, 141.20256 |