真鍋家住宅主屋
高松市街の南に広がる讃岐平野の一角、土塀に囲まれた敷地の中央に、桁行一四間半・梁間六間という大きな平屋が建つ。屋根は寄棟造の本瓦葺、南面の中央には一段高い式台玄関が構えられている。これが真鍋家住宅の主屋である。周囲の田を耕してきた上層農家の住まいであり、その来歴が建物の規模そのものに表れている。
竣工は明治三四年(一九〇一)。平面は大きく三つの領域に分かれる。式台玄関を入って西側には接客のための座敷が並び、東側には家人の内向きの諸室と、日々の仕事をこなす広い土間が置かれる。そして西端に、ほかの部屋から少し離して仏間が設けられている。この仏間の天井は平天井ではなく、縁を一段折り上げた折上格天井とする。住まいのなかでもっとも格の高い空間に用いられる意匠で、農家の建物でこれほどの規模のものは多くない。
登録の理由と価値
主屋は平成二九年(二〇一七)五月二日、同じ敷地に建つ八棟とともに登録有形文化財となった。登録基準は「造形の規範となっているもの」。これは装飾の多寡ではなく、大工仕事の質と平面構成のまとまりの良さを指している。見せることに走りすぎず、各室の比例や仕上げを都市の職人仕事に劣らぬ手際で整えた、質の高い大規模住宅という評価である。
登録有形文化財は、重要文化財や国宝より軽い保護の枠組みで、平成八年(一九九六)に設けられた。明治・大正から昭和初期にかけて建てられ、町や村の景観を形づくってきた膨大な建物を守るための制度である。真鍋家主屋は、貴族的ではないが確かに豊かだった一族の住まいとして、その「よくできた日常の風格」を体現している。
見どころ
南面の前に立つと、この家の論理がよく見える。中央の式台玄関を境に、西の接客棟と東の仕事棟が振り分けられ、軒の長さは全体を一度に視野に収めるには離れて眺める必要があるほどだ。建築面積はおよそ三九九平方メートル。桁行一四間半という規模は、この地域の農家住宅のなかでも大きい部類に入る。
内部の細部はゆっくり見るほど面白い。仏間の折上格天井、座敷の仕上げ、各所の造作の丁寧さは、腕のよい職人を動かせた家であったことを示している。昭和五九年(一九八四)の改修を経て今も使われており、残っているのは保存された抜け殻ではなく生きた建物である。なお当住宅は現在も個人の所有で、内部は自由に見学できない。屋敷は塀沿いの道路から外観を眺めるのがよい。
Q&A
- 主屋はいつ建てられましたか。
- 明治三四年(一九〇一)の竣工で、昭和五九年(一九八四)に改修されています。平成二九年(二〇一七)に登録有形文化財となりました。
- どのくらいの大きさですか。
- 平屋建で建築面積は約三九九平方メートル、間口は桁行一四間半、奥行は梁間六間あり、屋根は寄棟造の本瓦葺です。
- 仏間の何が特別なのですか。
- 西端の仏間は天井の縁を折り上げた折上格天井で、寺院や格式の高い住宅に用いられる意匠です。農家の住まいでこれを設けるのは珍しいことです。
- 内部を見学できますか。
- 個人の所有で、常時公開する施設ではありません。外観は道路から見られます。特別公開の有無は高松市や香川県教育委員会にご確認ください。
基本情報
| 名称 | 真鍋家住宅主屋(まなべけじゅうたくしゅおく) |
|---|---|
| 所在地 | 香川県高松市林町字宮西58-1 |
| 指定区分 | 登録有形文化財(建造物)/登録日 平成29年5月2日/登録番号 37-0419 |
| 年代 | 明治34年(1901年)/昭和59年(1984年)改修 |
| 構造・員数 | 木造平屋建、瓦葺、建築面積約399㎡/1棟 |
| 見学 | 個人所有につき常時公開なし。外観は隣接道路から見学可。 |
References
- 国指定文化財等データベース — 真鍋家住宅主屋(文化庁)
- https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00011574
- 文化遺産オンライン — 真鍋家住宅主屋
- https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/289423
最終更新日: 2026.07.11