旧鯵坂家住宅とは

旧鯵坂家住宅は、鹿児島県南さつま市加世田武田の加世田麓にある明治後期(1898〜1912年)の屋敷で、主屋・蔵・門・石塀の4件が平成25年(2013年)6月21日に国の登録有形文化財に登録された(文化庁)。読みは「きゅうあじさかけじゅうたく」で、4件とも南さつま市が所有している。

鹿児島県教育庁文化財課の解説では、明治35年(1902年)頃に建てられた武家住宅とされる。室内の壁を朱色に塗り、細工の細かい欄間を入れるなど、加世田麓の武家屋敷の造りをよく受け継いでおり、石垣と生垣も建てられた当時のものが残るという。日本遺産「薩摩の武士が生きた町~武家屋敷群「麓」を歩く~」の構成文化財の一つでもある。

鹿児島でいう麓は、薩摩藩が各地の山城の周りに整えた武家屋敷群のことで、藩は鹿児島城の城下に武士を集めきらず、こうした麓を外城として領内に配した(日本遺産)。

旧鯵坂正一郎邸と呼ばれた屋敷

南さつま市がまとめた加世田麓の年表では、この屋敷は「旧鯵坂正一郎邸」の名でも記されている。神奈川大学の研究室が作成した加世田麓の街歩きマップによれば、明治36年(1903年)頃に鯵坂正一郎が建てた家で、正一郎は加世田小学校の校長を務めた人物だった。家督はのちに弟の茂彦が継ぎ、茂彦は通りと用水路を挟んだ向かい側に旧鯵坂医院を建てて町医者になったという。旧鯵坂医院は平成21年(2009年)に別に登録された建物で、旧鯵坂家住宅の4件とは登録の時期が異なる。

同じ年表は、旧鯵坂家住宅が残った経緯も伝えている。平成20年度(2008年度)に住民のあいだで保存を求める動きが起こり、翌年度には住民・NPO・大学が応急修理を行った。平成22年度(2010年度)に住民から市へ保存の要望が出され、平成24年度(2012年度)に市が屋敷を取得している。登録はその翌年度のことだった。

屋敷の配置と4件の構成

文化庁の解説から屋敷の配置を読み取ると、旧鯵坂家住宅の主屋は敷地の中央に南を正面として建ち、蔵は敷地の南東の隅に置かれている。門は敷地の西面、市道に面した南の端に構えられ、石塀は住宅の西側の市道沿いと、敷地内の通路沿いに築かれている。

主屋は木造平屋建、入母屋造の桟瓦葺で、建築面積は224平方メートル。蔵は土蔵造の2階建で建築面積63平方メートル、門は間口1.9メートルの腕木門、石塀は総延長52メートルある(文化庁)。登録番号は主屋から順に46-0106から46-0109までの連番で、構造の詳細はそれぞれのページで扱っている。

通りを歩いてきた人の目に最初に入るのは、市道沿いに続く凝灰岩の石塀と、その南端に開く門である。旧鯵坂家住宅の主屋と蔵は、この塀と門の内側にある。

加世田麓のなかの旧鯵坂家住宅

加世田麓は、中世の山城の周りに生まれた武家地を起こりとする麓で、自然の地形に沿って曲がる街路や地割が江戸時代以来の姿をよく残している(南さつま市作成資料)。益山用水とそこに架かる石橋、屋敷を区切る石垣や生垣、腕木門が一体となって、この麓の景観をつくっている。

文化庁は旧鯵坂家住宅の主屋を加世田麓の住宅の形式を伝えるものとし、石塀についても加世田の屋敷構えの特徴を示すものと評している。建物だけでなく、塀と門で通りに向き合う屋敷の構え全体が登録の対象になっている点に、この4件の組み合わせの意味がある。

見学について

旧鯵坂家住宅は公開活用のための整備工事に入っており、南さつま市は当面の間閉鎖するとしている(2026年1月22日更新の市のお知らせ)。再開の時期は示されていないので、訪ねる前に南さつま市教育委員会生涯学習課文化係(電話0993-76-1810)に確かめておきたい。

門と石塀は市道に面して建つため、旧鯵坂家住宅の外観のうち通りに向いた側は道から見える位置にある。敷地内への立ち入りや撮影の可否について、公式の案内は見当たらなかった。

日本遺産「薩摩の武士が生きた町」の案内によれば、鹿児島中央駅から加世田バスセンターまでは直行バス(新幹線リレー号)で約60分、車では鹿児島中央駅から加世田麓まで約60分かかる。

参考文献

旧鯵坂家住宅主屋(国指定文化財等データベース)
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00009690
旧鯵坂家住宅蔵(国指定文化財等データベース)
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00009691
旧鯵坂家住宅門(国指定文化財等データベース)
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00009692
旧鯵坂家住宅石塀(国指定文化財等データベース)
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00009693
旧鯵坂家住宅主屋(文化遺産オンライン)
https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/269916
南さつま市加世田麓(鹿児島県)(文化庁、南さつま市作成資料)
https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkazai/shokai/hozonchiku/pdf/94105901_126.pdf
旧鰺坂家住宅(日本遺産ポータルサイト、文責 鹿児島県教育庁文化財課)
https://japan-heritage.bunka.go.jp/ja/culturalproperties/result/4681/
旧鯵坂家住宅(日本遺産「薩摩の武士が生きた町」)
https://kagoshima-fumoto.jp/minamisatsuma/%e6%97%a7%e9%af%b5%e5%9d%82%e5%ae%b6%e4%bd%8f%e5%ae%85/
加世田麓(日本遺産「薩摩の武士が生きた町」)
https://kagoshima-fumoto.jp/minamisatsuma/
薩摩藩独自の外城制度(日本遺産「薩摩の武士が生きた町」)
https://kagoshima-fumoto.jp/outer-castle/
旧鯵坂家住宅の整備工事について(南さつま市)
https://www.city.minamisatsuma.lg.jp/living/oshirase/e044092.html
加世田麓街歩きマップ(神奈川大学 島崎和司研究室)
https://www.arch.kanagawa-u.ac.jp/lab/shimazaki_kazushi/shimazaki/Traditional%20buildings/120kasedafumoto/feature-kasedamachiaruki.pdf

最終更新日: 2026.11.08

基本情報

名称旧鯵坂家住宅
所在地鹿児島県南さつま市加世田武田字下鴻巣17830-1
所有者南さつま市
指定登録有形文化財 4件
座標31.41285, 130.31853