加世田麓に残る明治の屋敷構え

鮫島家住宅は、鹿児島県南さつま市加世田武田の加世田麓にある明治後期の住宅で、主屋・内蔵・蔵・井戸・門・坪庭門・石塀の7件が平成23年(2011年)7月25日に国の登録有形文化財となった。読みは「さめしまけじゅうたく」。日本遺産の構成文化財としては、同じ麓の鮫島博家住宅と区別するため「鮫島(健志)家住宅」の名で紹介されている。

麓(ふもと)は、江戸時代の薩摩藩が領内に置いた外城(とじょう)のうち、郷士と呼ばれる武士が暮らした区画を指す。加世田麓は中世の山城である別府城のまわりに生まれた武家地を起こりとし、15世紀中頃からこの地を治めた島津家のもとで地割が整えられた。18世紀中頃には益山用水が開削され、屋敷の石垣の前を水路が流れる現在の町並みの骨格ができたと考えられている。

鮫島家住宅はこの麓の山裾、傾斜地に屋敷地を占める。日本遺産の解説によれば、築造は明治35年(1902年)頃。鮫島家は農園や漁業を手がけ、南薩摩銀行を創業した家とされる。武士の身分がなくなってから30年余りのちに建てられた屋敷でありながら、門・蔵・石垣・生垣で通りを固める構えは江戸時代の武家屋敷の形を受け継いでおり、石垣と生垣は当時のものが残るという。

7件の登録と屋敷の配置

7件は平成23年7月25日付の第70回登録で、登録番号は46-0095から46-0101まで連番になっている。登録基準はいずれも「国土の歴史的景観に寄与しているもの」。主屋・内蔵・蔵・門の建築物4棟に加え、井戸・坪庭門・石塀の工作物3件が含まれており、建物単体ではなく屋敷の構え全体が登録の対象になっている。

通りに面した南側には、土蔵造の蔵と2階建の長屋門が東西に並び、どちらも通り側の足元を切石で高く積み上げている。石塀は蔵の西側から始まり、門から通り沿いに東へ延びて屋敷の東面を画し、北端で西へ折れる。延べ72メートルに及ぶこの石塀と、その上の生垣が、鮫島家住宅を外から見たときの輪郭をつくっている。

井戸は屋敷正面の通りの奥にあり、主屋などとは別の地番(18274-1)で登録されている。屋敷の内側では、坪庭門が主屋へ向かう通路と座敷前の庭とを仕切る。主屋は座敷棟と台所棟の2棟を組み合わせた分棟型で、台所棟の北には内蔵が南北に棟を通して建つ。南さつま市観光協会の町歩き地図は、かつて湧き水を引いていた庭が、水が絶えたいまは枯山水になっていると記している。

年代はいずれも明治後期とされ、主屋・内蔵・坪庭門には平成10年(1998年)の改修が記録されている。東へ約120メートル離れた加世田武田17824-1には、明治前期にさかのぼる鮫島博家住宅があり、こちらも主屋・門・石塀・蔵の4件が登録されている。

加世田麓という町並みの中で

加世田麓は令和元年(2019年)12月23日、「南さつま市加世田麓」として国の重要伝統的建造物群保存地区に選定された。面積は20.0ヘクタール。選定の理由には、曲線を描く街路と地割、益山用水とそこに架かる石橋、敷地を画する石垣と生垣、腕木門などが一体となって麓の歴史的な景観を伝えていることが挙げられている。

同じ令和元年には、鹿児島県内の麓をめぐる日本遺産「薩摩の武士が生きた町~武家屋敷群「麓」を歩く~」が認定され、加世田麓とともに鮫島家住宅もその構成文化財に数えられた。知覧や出水の武家屋敷群が江戸時代の姿で知られるのに対し、加世田麓には明治以降に建て替えられながら武家屋敷の構えを守った住宅が多い。鮫島家住宅は、その明治後期の例として位置づけられる。

見学とアクセス

鮫島家住宅は個人が所有する住宅で、内部は公開されていない。南さつま市や南さつま市観光協会の案内にも、見学の受け付けや特別公開の情報は見当たらない(2026年9月確認)。外から見られるのは、通りに面した蔵と長屋門、そして石塀と生垣である。主屋・内蔵・坪庭門は蔵と門の奥に位置し、通りから全体を見渡すことはできない。敷地には入らず、撮影も道路から、住まいの様子が写り込まない範囲にとどめたい。

公共交通は鹿児島交通の路線バスを使う。鹿児島中央駅から加世田へ向かう便のうち、南薩横断道路・スカイラインを経由する直行便なら約55分、伊作経由の便では約1時間30分かかる。運賃は大人1,380円(南さつま市観光協会の案内、2025年10月現在)。終点の「加世田」バス停から鮫島家住宅までは、地図上の目安で徒歩10分前後である。

車の場合は、麓の南端にある竹田神社に無料の駐車スペースがあり、そこから石垣と生垣の続く通りを北へ歩いて向かえる。屋敷の位置は、南さつま市観光協会が公開している「加世田麓まち歩きマップ」で確かめられる。

参考文献

国指定文化財等データベース(文化庁):鮫島家住宅主屋
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00008793
国指定文化財等データベース(文化庁):鮫島家住宅石塀
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00008799
国指定文化財等データベース(文化庁):南さつま市加世田麓
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/103/00000125
文化遺産オンライン:鮫島家住宅主屋
https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/161404
日本遺産ポータルサイト(文化庁):鮫島(健志)家住宅
https://www.japan-heritage.bunka.go.jp/ja/culturalproperties/result/4679/
薩摩の武士が生きた町(日本遺産魅力発信推進協議会):鮫島(健志)家住宅
https://kagoshima-fumoto.jp/minamisatsuma/%E9%AE%AB%E5%B3%B6%E5%81%A5%E5%BF%97%E5%AE%B6%E4%BD%8F%E5%AE%85/
南さつま市:重要伝統的建造物群保存地区「加世田麓」地区概要書
https://www.city.minamisatsuma.lg.jp/living/kyoiku-bunka-sports/bunka/kasedafumoto/e022379.html
南さつま市観光協会:加世田麓の武家屋敷群めぐり
https://kanko-minamisatsuma.jp/feature/9161/
南さつま市観光協会:加世田麓まち歩きマップ(PDF)
https://kanko-minamisatsuma.jp/wp-content/uploads/2018/03/feature-kasedamachiaruki.pdf
南さつま市観光協会:交通アクセス
https://kanko-minamisatsuma.jp/access/
南さつま市:路線バス時刻表 加世田~鹿児島線
https://www.city.minamisatsuma.lg.jp/living/assets_c/2025/03/1kasedakagoshima20250401busrosen1-58076.html

最終更新日: 2026.09.25

基本情報

名称鮫島家住宅
所在地鹿児島県南さつま市加世田武田字下上鴻巣18275
指定登録有形文化財 7件
座標31.41356, 130.31738