龍口寺 ― 日蓮の龍ノ口法難の地に開かれた寺

龍口寺は、神奈川県藤沢市片瀬にある日蓮宗の寺院で、延元2年(1337年)に日蓮の直弟子日法が堂を建てたことに始まり、境内の4棟が令和3年(2021年)に登録有形文化財となった。山号は寂光山。寺は自らを龍口法難の霊跡本山と位置づけている。

江ノ電の江ノ島駅から歩いて3分ほどの片瀬の地に境内がある。仁王門から入ると山門、その奥に大本堂が建ち、参道の両脇、本堂の東南、境内の南東にそれぞれ登録された建物が散っている。妙見堂は江戸時代中期、手水舎は幕末、鐘楼は明治、大書院は昭和初期と、建った時代が棟ごとに大きく異なるのが龍口寺の境内の特徴である。

刑場跡から霊跡の寺へ

龍口寺の境内は、鎌倉幕府の時代に刑場が置かれた場所にあたる。寺の解説によれば、幕府の記録『吾妻鏡』には腰越や龍の口で斬首が行われたという記事がたびたび出てくる。

文永8年(1271年)9月12日の夜、『立正安国論』で幕府を諫めた日蓮は、鎌倉の松葉谷で捕らえられてこの刑場へ引き立てられた。いよいよ首を斬られるという時に、江ノ島の方角から満月のような光が飛来し、役人たちが恐れて倒れ伏したと、日蓮自身の書状に記されている。処刑は中止され、日蓮は佐渡へ流された。この出来事が龍口法難と呼ばれ、日蓮の生涯の四大法難のひとつに数えられる。

それから66年後の延元2年(1337年)、日法がこの地に一堂を建て、日蓮の像と「首の座」とされる敷皮石を安置した。これが龍口寺の始まりである。長く住職を置かず、近隣の8か寺が順番に寺を守る輪番の形で維持されてきた。いまは貫首のもとで寺が営まれている。

龍口寺の境内を歩く

龍口寺の入口は、昭和48年(1973年)に建てられた鉄筋コンクリート造の仁王門である。境内には日蓮が引き立てられた龍ノ口刑場の跡も整えられている。仁王門の先には元治元年(1864年)の山門があり、中国の故事を刻んだ8枚の彫刻が門を飾る。

山門から大本堂へ向かう参道では、西側に妙見堂が東を向いて建ち、その向かいの東側に手水舎が南北に棟を通して建つ。二つの登録建物が参道をはさんで向き合う配置になっている。

参道の突き当たりが天保3年(1832年)に完成した大本堂で、間口約21メートル、奥行約27メートルの大きな堂である。本堂の東南の基壇には鐘楼があり、鐘楼と大本堂のあいだに日蓮の像が立つ。さらに境内の南東に大書院が建ち、寺の案内では大書院と鐘楼堂のあいだに手洗いがある。

境内にはこのほか、明治43年(1910年)の五重塔や、昭和45年(1970年)に建てられた仏舎利塔もある。仏舎利塔は片瀬の山の頂近くにあり、湘南の街並みと相模湾を見渡せる。

龍口寺の4棟が同時に登録された

妙見堂・大書院・鐘楼・手水舎の4棟は、令和3年(2021年)2月26日に登録有形文化財となった。登録番号は14-293から14-296までの連番で、4棟とも「国土の歴史的景観に寄与しているもの」という基準による。

建築年代の幅が広いのが龍口寺の登録建物の特徴である。文化庁の記載では、最も古い妙見堂が享保5年(1720年)、手水舎が慶応3年(1867年)、鐘楼が明治14年(1881年)、大書院が昭和7年(1932年)の建築で、200年余りのあいだの建物が一つの境内に集まっている。鐘楼は昭和44年(1969年)に龍口寺へ移築された建物であり、大書院も寺の案内では長野県の松代から昭和10年(1935年)に移したものとされる。龍口寺の境内の景観は、昭和期に入ってからも姿を変え続けてきた。

同じ年の10月1日には、大本堂・山門・五重塔の3件が藤沢市の指定文化財になった。龍口寺の主要な建物は、令和3年(2021年)の1年のうちに国と市の両方の制度で保護の対象に加わったことになる。

龍口寺への行き方

龍口寺は鉄道の駅に近い。江ノ島電鉄の江ノ島駅と湘南モノレールの湘南江の島駅は、どちらも徒歩3分ほどである。小田急江ノ島線の片瀬江ノ島駅からは徒歩15分ほどかかる。江ノ電バスと京急バスには「龍口寺」停留所があり、降りてすぐが寺の入口になる。

車の場合、駐車場は10台分しかなく、参拝者と檀信徒の専用である。観光目的の車は近隣の有料駐車場を使うよう寺が案内している。行事の日は周辺道路が混み合うので、電車かバスで向かうほうがよい。

龍口寺の拝観と撮影の条件

龍口寺に拝観料はなく、境内は自由に歩ける。大本堂にも自由に上がってよいと寺は案内している。公式サイトのアクセス案内では、通常の参拝時間を午前9時30分から午後4時までとしている。ただし同じサイトのよくある質問では、拝観時間を午後4時30分までと書いており、表記が揃っていない。夕方に訪ねるなら、午後4時までに着くように計画しておくと確実である。

寺の問い合わせ先は電話0466-25-7357で、受付は午前9時30分から午後4時までである。

撮影については、法要や儀式の最中は原則として控えるよう求められている。境内でのドローン撮影は原則禁止で、撮影した映像や写真を営利目的で使う場合は別に申請して許可を受ける必要がある。

龍口寺の龍口法難会

龍口寺で最も大きな行事は、毎年9月11日から13日にかけて営まれる龍口法難会である。12日の夕方から夜にかけて、近隣の講中が奉納する万灯が境内に並び、門前には夜店が出る。日蓮が法難の際に牡丹餅の供養を受けたという故事にちなみ、手作りの「難除けの牡丹餅」が参拝者に配られる。

この期間は境内も周辺の道も人で埋まる。登録建物を落ち着いて見たいなら、行事のない日を選ぶほうがよい。

参考文献

国指定文化財等データベース 龍口寺妙見堂(文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00013696
国指定文化財等データベース 龍口寺大書院(文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00013697
国指定文化財等データベース 龍口寺鐘楼(文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00013698
国指定文化財等データベース 龍口寺手水舎(文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00013699
国登録有形文化財(建造物)一覧(藤沢市)
https://www.city.fujisawa.kanagawa.jp/bunkazai/tourokubunkazai/sakuseichuu.html
指定文化財目録(藤沢市)
https://www.city.fujisawa.kanagawa.jp/bunkazai/kyoiku/bunka/bunkazai/mokuroku.html
龍口寺を知る(寂光山龍口寺)
https://ryuukoji.com/about/
よくあるご質問(寂光山龍口寺)
https://ryuukoji.com/faq/
メディア取材に関して(寂光山龍口寺)
https://ryuukoji.com/coverage/

最終更新日: 2026.09.15

基本情報

名称龍口寺
所在地神奈川県藤沢市片瀬三丁目2822
所有者宗教法人龍口寺
指定登録有形文化財 4件
座標35.31139, 139.48960