龍口寺手水舎 ― 波に亀と雲龍を刻んだ幕末の手水舎

龍口寺手水舎は、神奈川県藤沢市片瀬の龍口寺境内にある慶応3年(1867年)建築の手水舎で、令和3年(2021年)に登録有形文化財となった。読みは「りゅうこうじちょうずしゃ」、登録番号は14-296である。

大本堂へ向かう参道の東側、妙見堂の真向かいに、棟を南北に通して建つ。桁行1間、梁間1間の小さな建物で、面積は5.1平方メートル。登録は水盤を含めた形で行われている。寺の案内にあるとおり、柄杓で水をすくい、身と心を清めてから参拝に進むための建物である。

幕末の技巧を凝らした龍口寺手水舎

龍口寺手水舎の登録基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」である。文化庁の解説は、細部の随所に幕末らしい技巧が見られる手水舎と評している。

慶応3年は大政奉還の年にあたる。幕末の社寺建築では、彫刻で細部を飾る傾向が強まっていた。わずか5.1平方メートルの龍口寺手水舎にも、その傾向がはっきり表れている。

起りの屋根と内転びの角柱

龍口寺手水舎の屋根は、切妻造桟瓦葺である。屋根面がわずかに上へふくらむ起りを付けており、直線の切妻より柔らかい輪郭になる。

軸部は禅宗様を基調とする。4本の柱は角柱で、いずれも上に向かって内側へわずかに傾ける内転びで立つ。柱の頭をつなぐ頭貫の表面には、地紋彫と呼ばれる連続した文様の彫りが施されている。

組物は、柱の位置から一段前へ持ち出す出組とし、柱の上だけでなく柱間にも並べる詰組にしている。1間四方の建物で軒下に組物がぎっしりと並ぶ構成は、規模に比べて密度が高い。

木鼻の波に亀、妻の雲龍

龍口寺手水舎の彫刻で目を引くのは二か所である。

一つは木鼻で、頭貫などの横材が柱から外へ突き出した端部に、波の上の亀が彫り出されている。水を扱う建物にふさわしい題材である。木鼻は柱から突き出た横材の先なので、建物の角まわりを見上げると見つけやすい。

もう一つは妻飾りである。南北の妻の三角形の部分に、雲をまとう龍が丸彫りで飾られている。板に浮き彫りにするのではなく、立体として彫り出した龍で、見る角度によって頭や胴の重なりが変わる。

龍口寺手水舎の見どころと使い方

龍口寺手水舎は参道に面して建ち、誰でも使うことができる。手を清めたあと、少し下がって屋根を見上げると、軒下に並ぶ詰組と角まわりの木鼻が一度に見渡せる。

雲龍の妻飾りは棟の両端、つまり南と北の面にある。文化庁のデータベースが掲げる写真は南西側と南側から撮られており、南の妻は同じく南側から見上げると確かめやすい。

頭貫の地紋彫は細かいので、柱の脇に立って目の高さより少し上を見るとよい。水盤に向かう人の妨げにならないよう、混み合う時間は外側から眺めたい。

Q&A

Q龍口寺手水舎はいつ建てられましたか?
A慶応3年(1867年)の建築です。江戸時代の最末期にあたります。
Q龍口寺手水舎の読み方は?
A文化庁のデータベースでは「りゅうこうじちょうずしゃ」と読みます。
Q龍口寺手水舎にはどのような彫刻がありますか?
A木鼻に波に亀、妻飾りに丸彫りの雲龍が刻まれています。頭貫には地紋彫も施されています。
Q龍口寺手水舎は実際に使えますか?
A使えます。寺の案内では、柄杓で水をすくい身と心を清める場所とされています。
Q龍口寺手水舎は境内のどこにありますか?
A大本堂へ向かう参道の東側で、妙見堂の真向かいにあります。

基本情報

名称龍口寺手水舎
所在地神奈川県藤沢市片瀬3丁目2822
指定区分登録有形文化財(建造物)
指定年令和3年(2021年)登録
員数1棟
寸法桁行1間、梁間1間、面積5.1平方メートル、水盤付
所有者宗教法人龍口寺
公開状況参道に面し自由に見学・利用できる

参考文献

国指定文化財等データベース 龍口寺手水舎(文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00013699
龍口寺手水舎(文化遺産オンライン)
https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/541501
龍口寺を知る(寂光山龍口寺)
https://ryuukoji.com/about/

最終更新日: 2026.09.15