畑と建物のあいだの石塀を読む

久保家の外塀が公道の路地に面するのに対し、内塀はその仕事を人目につかない敷地の内側で果たす。敷地南西の菜園と建物とのあいだに立ち、南北方向に6.6メートル、高さ1.7メートルで延び、上部に小さな瓦葺屋根をのせる。大正期(1912-1925年)に築かれ、江戸期の外塀より新しい。街路に面するためではなく、一つの働く区画を別の区画から分けるために造られた塀である。

その用途の違いは、石積みに表れている。塀は主に玉石を用い、その積み方には明快な文法がある。竪目地は段ごとにずらし、横目地は水平に揃え、端部には大きめの石を据えて全体を締める。外塀より控えめな造作だが、意図の明確さは劣らない。

登録の理由と価値

内塀は平成19年(2007年)10月2日、周囲の建造物と同じ基準「国土の歴史的景観に寄与しているもの」により登録された(登録番号39-0226)。私有地の内部にある塀がこうした登録の対象になるのは意外に思えるかもしれず、そこにこの塀の面白さの一端がある。その価値は、土佐の商家の敷地がどう構成されていたかの記録を完結させる点にある。街路の塀に用いられたのと同じ地域の石積みが、屋敷内の区画をも形づくっていたことを示すからだ。

外塀、蔵、門、離れとあわせることで、この敷地全体を、ばらばらの構造物の寄せ集めではなく、まとまりのある地域的な構成として読み取ることができる。各要素が地元の材料と地元の技法を用いており、内塀は、その理屈を敷地の私的な中心へと運ぶ一片である。

見どころ

内塀の見どころは、その目地にある。石と石のあいだの竪目地が段ごとに移動する一方、横の線が水平に保たれる様を見たい。この組み合わせが塀に強さと一定の律動の双方を与えており、それに気づけば、路地に沿ってより自由に積まれた外塀と技法を比べられる。二つの塀は、同じ地域の言葉をわずかに異なる方言で語っている。

あわせて、塀が動きに最も弱い端部に据えられた大きめの石にも注目したい。内塀は私有の敷地内にあるため、路傍の外塀より見づらく、その眺めは敷地の開き具合に左右される。敷地の境界を尊重し、公道から見える範囲で眺めていただきたい。

Q&A

Q内塀は外塀とどう違いますか。
A内塀は敷地内に立って建物と菜園を分け、大正期のものです。外塀は路地に面し、より古い江戸末期のものです。どちらも土佐の川石を用いた石積みです。
Q目地の積み方から何が分かりますか。
A竪目地をずらしつつ横目地を水平に揃えるのは、塀を強くし、一定の律動を与える技法です。端部の大きめの石が全体を支えて動きを抑えます。
Q玉石とは何ですか。
A水に洗われて丸くなった川石です。安田川のような川の近くで豊富に得られたため、この地域では塀の自然な建築材料となりました。
Q内塀は見学できますか。
A私有の敷地内にあり、路傍の外塀より近づきにくい場所です。公道から見える範囲で眺め、住宅の境界を尊重してください。

基本情報

名称久保家住宅内塀
所在地高知県安芸郡安田町大字安田1849
指定区分登録有形文化財(建造物)/登録 平成19年(2007年)10月2日
登録番号39-0226
員数1基
時代大正期(1912-1925年)
構造石造、川石の石積み・瓦葺笠木、延長6.6メートル、高さ1.7メートル
公開状況私有敷地内/公道から見える範囲で見学可

参考文献

国指定文化財等データベース(文化庁):久保家住宅内塀
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00006759
高知県:国登録有形文化財<建造物>
https://www.pref.kochi.lg.jp/doc/2023062200186/
安田町役場
https://www.town.yasuda.kochi.jp/

最終更新日: 2026.07.11