路地に沿うイシグロの石塀

安田の久保家に登録された複数の建造物のうち、外塀は最も古い。国の登録では時代を江戸末期、およそ1830年から1867年の間としており、大正期に建てられた蔵や離れより七十年ほどさかのぼる。石積みの塀がこれほどの古さを示すことは珍しく、その残存は、木造の建物だけでは語れないより長い記憶を敷地に与えている。

塀の総延長はおよそ14メートル。離れの西端から始まり、路地に沿って西へ9.9メートル、そこで浅くくの字に折れ、敷地西辺をさらに3.8メートル続く。高さは1.7メートル、練積で築かれ、上部に小さな瓦葺屋根をのせる。これは土佐地方に特有の石塀「イシグロ」であり、この塀が登録に値した理由でもある。

登録の理由と価値

外塀は平成19年(2007年)10月2日に登録有形文化財となった(登録番号39-0225)。適用された基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」である。この区分の言葉に沿えば、塀は単体の造形物としてよりも、場所を形づくるものとして意味を持つ。イシグロは土佐の街路に固有の肌理を与え、こうした塀が残る場所では、単独の建物にはできない仕方で町並みをまとめている。

築造の技法にも触れておきたい。塀は玉石と半割石を用い、目地をずらして石を交互に積む。上部には雨を落として練積の芯を守る瓦葺屋根をのせる。洪水や台風が絶えない河口の町で育まれた土着の解法であり、丸い川石と保護のための屋根を組み合わせる点に、地域の特色がよく表れている。

見どころ

路地を歩き、塀が向きを変えるくの字の折れまで辿りたい。この折れこそ、塀全体で最も読み取りやすい瞬間だ。塀がまっすぐな背景であることをやめ、路地の空間そのものを形づくり始める地点である。石積みを近くで見れば、丸い川石が段ごとに目地をずらして据えられ、不規則でありながら制御された様子が見て取れる。

次に、上部を走る小さな瓦屋根に目を上げたい。見落としやすいが、これこそが塀を長らえさせてきた理由で、下の練積から雨を切り落としている。塀は敷地の他の要素より古いため、その延長を歩くことは、訪れる者が久保家のより古い地面に最も近づく体験となる。公道の路地に面しており、徒歩で自由に見ることができる。

Q&A

Qイシグロとはどんな塀ですか。
A高知の土佐地方に特有の石塀で、川石を用い、しばしば上部に瓦屋根をのせます。こうした塀が、地域の古い街路の見分けやすい性格の多くを与えています。
Qなぜ塀は建物より古いのですか。
A登録では外塀を江戸末期とし、蔵・離れ・門は大正期としています。塀は敷地の登録要素のなかで最も早い時期のものですが、その差の理由はここでは記録されていません。
Q塀の上の屋根は何のためですか。
A瓦の笠は練積の芯から雨を切り落とし、地域の厳しい風雨から塀を守ります。塀の存続を助けてきた実用的な要素です。
Q塀を間近で見られますか。
A見られます。外塀は公道の路地に面しており、徒歩で眺められます。公道を離れず、背後の私有地への配慮をお願いします。

基本情報

名称久保家住宅外塀
所在地高知県安芸郡安田町大字安田1849
指定区分登録有形文化財(建造物)/登録 平成19年(2007年)10月2日
登録番号39-0225
員数1基
時代江戸末期(およそ1830-1867年)
構造石造(イシグロ)、練積・瓦葺笠木、延長14メートル、高さ1.7メートル
公開状況公道の路地から見学可

参考文献

国指定文化財等データベース(文化庁):久保家住宅外塀
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00006758
文化遺産オンライン(文化庁):久保家住宅外塀
https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/144021
高知県:国登録有形文化財<建造物>
https://www.pref.kochi.lg.jp/doc/2023062200186/
安田町役場
https://www.town.yasuda.kochi.jp/

最終更新日: 2026.07.11