寛政の茅葺屋根を残す農家の主屋

岩崎家住宅主屋は、高知県安芸市井ノ口にある寛政7年(1795年)頃に建てられた茅葺の農家の主屋で、平成22年(2010年)4月28日に国の登録有形文化財となった。三菱の創業者・岩崎彌太郎が天保5年12月11日(1835年1月9日)に生まれた家として知られ、岩崎家住宅の屋敷の中央に南を正面にして建っている。

建てたのは彌太郎の曽祖父・弥次右衛門と伝わる。木造平屋建で、規模は桁行12メートル、梁間9.4メートル、建築面積104平方メートル。屋根は寄棟造の茅葺とし、正面と背面に桟瓦葺の下屋庇を付け、両側面は茅を軒先まで低く葺き降ろしている。昭和55年(1980年)に改修を受けた。

間取りは西寄りを土間とし、東側に床上部を置く。床上部は仕切りの線がずれて並ぶ食違い四間取りで、表側の座敷には床(トコ)と床脇を構える。安芸市観光協会の案内によれば、表の8畳とその脇の4畳半2間、9畳の茶の間から成り、茶の間の左手が土間の通り庭になっている。

7件のうち主屋だけに適用された登録基準

岩崎家住宅の7件のうち、岩崎家住宅主屋だけが「造形の規範となっているもの」として登録された。蔵や番屋など残る6件の基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」である。文化庁の解説は、この主屋を18世紀にさかのぼる小規模民家の好例と位置づけている。

評価の中心は、小さな農家の住まいが当初の骨格を保ったまま残っている点にある。土間と四間の床上部、表座敷の床構えという構成は、江戸時代の土佐の農村で暮らした家の標準的な姿を示している。有名な人物の生家であることとは別に、建築そのものの価値が認められた登録である。

彌太郎は安政元年(1854年)に江戸へ遊学するまで、この家で育った。のちに三菱の基礎を築いた人物の少年時代の住まいが、増築や洋風化を経ずに農家の姿のまま残ったことも、岩崎家住宅主屋の見どころを分かりやすくしている。

土間に立って見るもの

見学者が入れるのは土間までである。入口から土間に立つと、右手の東側に床上部の部屋が並び、奥に茶の間が見える。茅葺の屋根裏は高く、土間の上で煙に燻された小屋組の暗さが、外観の明るい茅の色と対照をなしている。

茶の間の床下には芋を貯えた芋壺があり、通り庭から身をかがめるとのぞくことができる。農家としての暮らしを具体的に示す設備で、見落としやすいので意識して探したい。

外から見るなら、屋根の形に注目したい。正面と背面では瓦葺の下屋が茅の裾を切っているが、両側面は茅が低い位置まで葺き降ろされ、屋根の量感がそのまま地面近くまで下りてくる。側面へ回ると、茅の寄棟と瓦の下屋が組み合わされた断面がよく分かる。岩崎家住宅主屋の正面には石組の小さな庭があり、少年時代の彌太郎が日本列島になぞらえて石を並べたと伝えられている。

見学の条件

岩崎家住宅主屋は屋敷の開放時間内であれば無料で外観を見学でき、土間まで立ち入ることができる。座敷や茶の間には上がれない。茅葺の建物であることから、敷地内での火気の使用と喫煙は禁じられている。

報道などの撮影には所有者の許可が必要で、安芸市が取り次いでいる。開放時間・休日・行き方は岩崎家住宅のページにまとめてある。

Q&A

Q岩崎家住宅主屋はいつ建てられましたか?
A寛政7年(1795年)頃の建築で、岩崎彌太郎の曽祖父・弥次右衛門が建てたと伝わります。昭和55年(1980年)に改修されています。
Q岩崎家住宅主屋の中に入ることはできますか?
A室内には上がれませんが、土間までは立ち入ることができ、そこから部屋や芋壺をのぞけます。見学は無料です。
Q岩崎家住宅主屋はなぜ登録有形文化財になったのですか?
A18世紀にさかのぼる小規模な民家の好例として、「造形の規範となっているもの」の基準で平成22年(2010年)4月28日に登録されました。
Q岩崎家住宅主屋の間取りはどうなっていますか?
A西寄りが土間、東側が食違い四間取りの床上部です。表の8畳、4畳半2間、9畳の茶の間から成り、表座敷に床と床脇があります。
Q岩崎家住宅主屋は岩崎彌太郎の生家ですか?
Aはい。岩崎彌太郎は天保5年12月11日(1835年1月9日)にこの家で生まれました。

基本情報

名称岩崎家住宅主屋(いわさきけじゅうたくしゅおく)
所在地高知県安芸市井ノ口字杉ケ本甲1696他
指定区分登録有形文化財(建造物)、登録番号39-0253
指定年平成22年(2010年)4月28日登録
員数1棟
寸法木造平屋建、寄棟造茅葺、建築面積104平方メートル、桁行12メートル・梁間9.4メートル
所有者個人(岩崎家)
公開状況外観は無料で見学可。室内は非公開、土間まで立ち入り可

参考文献

国指定文化財等データベース(文化庁):岩崎家住宅主屋
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00008200
文化遺産オンライン:岩崎家住宅主屋
https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/168921
安芸市:岩崎彌太郎生家
https://www.city.aki.kochi.jp/life/dtl.php?hdnKey=45
安芸市観光協会:岩崎彌太郎生家
https://www.akikanko.or.jp/kanko/yatarouseika.html

最終更新日: 2026.09.25