通り庭とは

通り庭は、町家の表から裏まで貫く土間の通路である。履物のまま通り抜けられる床で、通路と作業の場を兼ねる。通り土間とも書かれ、文化庁の記録では通り土間の表記が多い。

京都府の中村宗哲家住宅は嘉永7年の建築で、「京都西陣にある塗師の住宅で、南と西側に高塀を建て、通り庭を持つ町家の形式」と解説されている。敷地を貫く土間が町家の骨格をなしていたことを示す記述である。

居室は通り庭の片側または両側に並ぶ。三重県の佐佐木信綱生家主屋は「間口12m奥行10mのつし二階建。南端に通り土間を設け、床上は二列各三室とする」と解説されている。滋賀県の木村家住宅主屋は「内部は通土間沿いに三室を並べる形式」と記されている。

三重県の森家住宅主屋は「入母屋造妻入桟瓦葺で、間口は五間半に及ぶ。正面に大戸口を設けて通り土間を通し、北側に二列居室を設け」と解説されている。通りに面した大戸口から入り、そのまま奥まで抜ける構成が読み取れる。

平面を読むときの手がかり

町家の平面図は、通り庭の位置を先に押さえると理解しやすい。間口の狭い敷地では通り庭を片側に寄せ、残りの幅に居室を並べる。解説文の「二列各三室」「三室を並べる」といった表現は、この並びを説明したものである。

新潟県の益甚酒店店舗は昭和9年の建築で、「1階店舗の奥に平屋建の12畳と通り土間が付属し、2階は6畳6畳8畳の3室が並ぶ」と解説されている。近代の町家でも通り土間の構成が引き継がれている。

通り庭は採光と通風の経路でもある。奥まで細長い敷地で、表と裏の両方から光と風を通す役割を担う。棟に小さな越屋根を設けて排煙や採光を助ける例もある。

参考文献

文化庁 文化財の紹介 登録有形文化財(建造物)
https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkazai/shokai/yukei_kenzobutsu/toroku_yukei.html
国指定文化財等データベース(文化庁)中村宗哲家住宅/通り庭を持つ町家の形式
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00003108
国指定文化財等データベース(文化庁)佐佐木信綱生家主屋/つし二階建、南端に通り土間
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00009019
国指定文化財等データベース(文化庁)木村家住宅主屋/つし二階建町家、通土間沿いに三室
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00009311
国指定文化財等データベース(文化庁)森家住宅主屋/大戸口を設けて通り土間を通す妻入の大型町家
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00009305

最終更新: 2026.08.30