本町通りに西面して建つ商家の主屋
旧磯部家住宅主屋は、愛知県犬山市大字犬山字東古券にある江戸時代末期の商家建築で、平成17年(2005年)2月9日に国の登録有形文化財に登録された。慶応年間(1865年から1868年)の建築とされ、木造2階建、瓦葺、建築面積171平方メートルの規模をもつ。
建物が正面を向けているのは、犬山城の大手門から南へ延びる本町通りである。城下の町人地を縦に貫き、そのまま名古屋へ通じる街道でもあった。文化庁の国指定文化財等データベースは、この一帯の呼び名をとって「中本町通りに西面して建つ」と記す。
磯部家は「柏屋」の屋号で呉服商を営んでいた家である。戦後は製茶と販売に業種を変え、やがて暮らしの拠点は他所へ移った。残された建物は長く商品倉庫として使われる。平成16年(2004年)に磯部家から犬山市へ寄贈され、市が保存整備工事を経て一般公開の施設としたのが現在の姿である。
間口は3間半、奥行は8間。通りに面した幅は狭く、敷地は東へ細長く伸びる。旧磯部家住宅主屋はその入口にあたり、奥へ続く一連の建物の先頭に立つ。
登録の理由と、この主屋が担うもの
旧磯部家住宅主屋に適用された登録基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」である。ひとつの意匠が突出しているからではなく、城下町の街路の連なりを形づくる一軒として価値が認められた。登録番号は23-0168、第45回の登録にあたる。
1階は、店の奥の南側に通り庭が土間として通り、北側に仏間や座敷が並ぶ。2階は表側に座敷を配する。間口が狭いにもかかわらず内外とも細部まで凝ったつくりで、街道の歴史的景観に欠かせない建物である、というのが国指定文化財等データベースの評価である。
同じ敷地の裏座敷、土蔵、奥土蔵、物置も同じ日に登録有形文化財となった。5棟のうち旧磯部家住宅主屋だけが江戸時代の建築で、残る4棟は明治から大正にかけて建て継がれている。屋敷が一度に完成したのではなく、商いの規模に合わせて増えていったことが、建築年代の並びから読み取れる。
見どころ
入って最初に目に入るのは、南へ抜ける土間である。町家では表の店と奥の住まいをつなぐ動線で、かまどや水回りもここに置かれた。天井を見上げると、梁が低い位置で組まれているのが分かる。
北側の座敷から2階へは箱階段で上がる。段板の下が引き出しや戸棚になった階段で、限られた床面積を無駄なく使うための工夫である。
2階の和室は六畳と八畳の二間続き、合わせて52.49平方メートル。どちらも棹縁天井で、奥の八畳には織部床がつく。この八畳が家族の居室、手前の六畳が使用人部屋を兼ねた納戸だったと犬山市は説明している。旧磯部家住宅主屋を訪ねたら、この2階まで上がってほしい。表通りの喧噪が一段遠のき、町家の生活空間としての性格がはっきりする。
細部を見る目安を一つ挙げるなら、材の面取りと仕上げの丁寧さである。呉服商の店構えとして人目に触れる部分と、そうでない部分とで手間の掛け方が変えられている。
見学方法とアクセス
旧磯部家住宅主屋は「旧磯部家住宅復原施設」として通年公開されており、入館は無料である。開館は午前9時から午後5時まで、入館の受付は午後4時30分に終わる。休館日は12月29日から12月31日までの3日間で、警報が発令された場合は臨時に閉館することがある。
個人が記念に写真を撮ることは差し支えない。ただし商業・営利目的の撮影、機材を持ち込む撮影、特別な衣装を着ての撮影は、事前に犬山市役所歴史まちづくり課へ企画書を提出する必要がある。学校の校外授業や団体での見学も、施設へ電話して事前打合せを行う決まりになっている。
最寄り駅は名鉄犬山駅で、西口から徒歩約10分。名鉄名古屋駅からは快速特急または特急で約25分である。コミュニティバス「わん丸君バス」を使う場合は「駅前通り」停留所が近く、そこから徒歩2分ほど。
施設に駐車場はない。公共交通機関か、城下町周辺の有料駐車場を利用することになる。なお主屋2階の和室は有料で貸し出されており、展示会の会期中は見学の動線が変わることがある。旧磯部家住宅主屋の当日の状況は電話(0568-65-3444)で確認できる。
Q&A
- 旧磯部家住宅主屋は見学できますか。入館料はいくらですか。
- 見学できます。入館は無料です。開館時間は午前9時から午後5時までで、入館受付は午後4時30分までとなっています。
- 旧磯部家住宅主屋の休館日はいつですか。
- 12月29日から12月31日までが休館日です。それ以外は通年で開いていますが、警報が発令された場合は状況により閉館することがあります。
- 旧磯部家住宅主屋へは犬山駅からどう行けばよいですか。
- 名鉄犬山駅西口から本町通りを北へ徒歩約10分です。コミュニティバス「わん丸君バス」の「駅前通り」停留所からは徒歩2分ほど。施設専用の駐車場はありません。
- 旧磯部家住宅主屋の中で写真を撮ってもいいですか。
- 個人の記念撮影は可能です。商業・営利目的の撮影、機材を用いる撮影、特別な衣装を着用しての撮影は、事前に犬山市役所歴史まちづくり課へ企画書を提出する必要があります。
- 旧磯部家住宅主屋はいつ建てられたのですか。
- 慶応年間、西暦でいえば1865年から1868年の建築とされています。同じ敷地の裏座敷は大正期、土蔵・奥土蔵・物置は明治8年(1875年)の建築で、主屋が5棟のうち最も古い建物です。
基本情報
| 名称 | 旧磯部家住宅主屋 |
|---|---|
| 所在地 | 愛知県犬山市大字犬山字東古券72 |
| 指定区分 | 登録有形文化財(建造物) |
| 指定年 | 平成17年(2005年)登録 |
| 員数 | 1棟 |
| 寸法 | 木造2階建、瓦葺、建築面積171平方メートル |
| 所有者 | 犬山市 |
| 公開状況 | 一般公開、入館無料、9:00から17:00(入館は16:30まで) |
参考文献
- 文化庁 国指定文化財等データベース「旧磯部家住宅主屋」
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00004564
- 犬山市「旧磯部家住宅復原施設について」
- https://www.city.inuyama.aichi.jp/kurashi/bunka/1001052/1003550/1001061.html
- 犬山市「施設案内 旧磯部家住宅復原施設」
- https://www.city.inuyama.aichi.jp/shisetsu/koukyoshisetsu/1001550/1001500.html
最終更新日: 2026.08.31