遠藤家住宅主屋とは

遠藤家住宅主屋は、愛知県犬山市の城下町を南北に貫く本町通りに面して建つ明治33年(1900年)建築の町家で、平成17年(2005年)に国の登録有形文化財に登録された。木造2階建、瓦葺、建築面積は119平方メートル。間口4間(約7.3メートル)、奥行7間半(約13.6メートル)という、犬山の町家に共通する細長い敷地に建つ。

建つ場所が変わっている。犬山城から名古屋へ向かう本町通りと、西の坂下から東の寺町へ抜ける道が交わる、その角地である。町家は普通、片側だけが通りに面する。ここは西と南の二方が通りに開いている。

愛知県の文化財解説によれば、遠藤家はこの角で江戸時代から料理業を営んでいた。現在の建物は明治33年に建てられたもので、料理屋として設計されている。

改造と、上階に残ったもの

遠藤家住宅主屋の来歴には、20世紀の町家がたどった典型的な道筋が刻まれている。

昭和26年(1951年)、建物は遠藤硝子店の所有となった。正面には鉄板張りのパラペットが取り付けられ、1階は帳場や台所に改められた。愛知県の解説は、この改造によって1階が原型の分からないほど変わったと記す。2階も座敷の北側に中廊下が差し込まれた。

それでも失われなかったものがある。2階座敷の天井には神代杉の板がそのまま残り、幅の広い障子も残された。料理屋時代の座敷の空気は、上階に温存されたことになる。

近年になって、2階の出格子が別の建物から出た古材を再用して復原された。1階はアルミサッシの手前に格子戸を建てて修景されている。元に戻したのではなく、通りに対する見え方を整えた措置である。

登録有形文化財としての価値

遠藤家住宅主屋の登録年月日は平成17年(2005年)2月9日、官報告示は同年2月28日で、登録番号は23-0180である。適用された登録基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」の一つだけで、単体の建築的完成度ではなく、町並みの中で果たしている役割が評価された。

同じ日に、犬山城下町では真野家住宅の4件、旧磯部家住宅の5件、小島家住宅の7件、伊藤家住宅の2件が一括して登録されている。個々の建物というより、本町通りに残る町家群をまとめて残す判断だった。

犬山市はさらに、この建物を歴史まちづくり法にもとづく歴史的風致形成建造物にも位置づけている。国の登録と市の指定が二重にかかる形である。

なお、登録有形文化財は「指定」ではなく「登録」である。平成8年(1996年)に始まった制度で、外観を大きく変えなければ内部の改装や商業利用ができる。硝子店として使われ、いま別の店舗が入るこの建物が文化財でいられるのは、この制度の性格による。

通りから何を見るか

角地であることが、屋根の形に直接あらわれている。通りに面さない北の妻は切妻造、南の妻は入母屋造で、二方向から見られる建物の南側だけが格を上げた形になっている。1階の庇は西面から南面へ回り込み、角を曲がっても軒が途切れない。

もう一つ、目に付くのは背の高さである。料理屋として2階にも本格的な座敷を構えたため、階高が大きい。周囲の町家は2階を低く抑えた平入の建物が多く、その並びの中で遠藤家住宅主屋だけが一段高く立ち上がる。城下町を歩いていて視線が止まるのは、この高さの差による。

屋根は桟瓦葺。2階の出格子は近年復原されたもので、材の色と表面の風化具合が周囲の部材と少し違う。立ち止まって見比べると、どこが新しく入れられた部分なのか判別できる。

見学方法とアクセス

遠藤家住宅主屋は私有の建物で、文化財としての内部公開は行われていない。1階は店舗として使われており、営業中であれば買い物客として土間まわりの空間に入ることはできる。ただしテナントは入れ替わるため、来訪時に店が営業しているとは限らない。2階の座敷は公開されていない。

外観は本町通りの歩道から自由に見学でき、撮影も制限されていない。店舗の内部を撮る場合は、その時々の営業者の指示に従ってほしい。

アクセスは名鉄犬山駅の西口から本町通りを北へ徒歩約10分。犬山城の入口からは南へ約700メートル、徒歩9分ほどである。すぐ南約50メートルには無料公開されている旧磯部家住宅、さらに南約110メートルには犬山祭の車山を展示するどんでん館がある。歩く順路の途中で自然に通り過ぎる位置にある。

本町通りは毎年4月第1土曜・日曜の犬山祭で13輌の車山が曳かれる道で、この角は通行の要所になる。祭の当日は人出が多く、建物の前で立ち止まって観察するのは難しい。建築を見る目的なら平日のほうが向く。

本項の見学情報は2026年8月30日時点の内容である。店舗の営業状況は変わりうるため、現地の掲示を確認してほしい。

Q&A

Q遠藤家住宅主屋の内部は見学できますか。
A文化財としての内部公開はありません。1階は店舗として使われているため、営業中であれば客として入ることはできますが、2階の座敷は非公開です。外観は本町通りからいつでも見られます。
Q遠藤家住宅主屋へのアクセスは。最寄り駅から何分かかりますか。
A名鉄犬山駅西口から本町通りを北へ徒歩約10分です。犬山城の入口からは南へ徒歩9分ほど。住所は愛知県犬山市大字犬山字東古券662で、本町通りが東西の道と交わる角に建っています。
Q遠藤家住宅主屋はいつ建てられ、いつ登録有形文化財になりましたか。
A現在の建物は明治33年(1900年)の建築です。国の登録有形文化財に登録されたのは平成17年(2005年)2月9日で、登録番号は23-0180です。指定ではなく登録である点にご注意ください。
Q遠藤家住宅主屋の見どころはどこですか。
A北の妻を切妻造、南の妻を入母屋造とした屋根の作り分け、西面から南面へ回る1階の庇、そして周囲の町家より一段高い階高です。2階に本格的な座敷を持つ料理屋として建てられたため、背が高くなっています。
Q遠藤家住宅主屋は写真を撮ってもよいですか。
A通りからの外観撮影に制限はありません。店舗内部を撮影する場合は、その時の営業者の指示に従ってください。犬山祭の期間は人通りが多く、建物を正面から撮るのは難しくなります。

基本データ

名称遠藤家住宅主屋
所在地愛知県犬山市大字犬山字東古券662
指定区分登録有形文化財(建造物)
指定年平成17年(2005年)登録
員数1棟
寸法建築面積 119平方メートル
所有者民間所有(文化庁データベースはスターヒルズ不動産株式会社と記載)
公開状況内部非公開。1階は店舗として使用。外観は本町通りから見学可

参考文献

文化庁 国指定文化財等データベース 遠藤家住宅主屋
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00004576
文化財ナビ愛知 遠藤家住宅主屋(愛知県)
https://www.pref.aichi.jp/kyoiku/bunka/bunkazainavi/yukei/kenzoubutu/kunitouroku/1199.html
犬山市 犬山市の文化財(登録有形文化財一覧)
https://www.city.inuyama.aichi.jp/kurashi/bunka/1001063/1001068.html
犬山市 犬山市歴史的風致維持向上計画(第2期)
https://www.city.inuyama.aichi.jp/kurashi/bunka/1001072/1001074.html
犬山市 登録文化財制度
https://www.city.inuyama.aichi.jp/kurashi/bunka/1001063/1001067.html

最終更新日: 2026.08.30