通りに東面して構える、酒造家の主屋

小島家住宅主屋は、愛知県犬山市の犬山城下町にある明治30年(1897年)頃の町家で、平成17年(2005年)に登録有形文化財に登録された。

木造2階建、瓦葺、建築面積は150平方メートル。屋根は切妻造桟瓦葺で、平入の構えをとる。2階は階高の低いつし二階である。1階は間口の広い通り庭を通し、その南側に居室を2列6室並べる。表側は1階も2階もほぼ全面が格子で、通りに面した長い格子の面がこの建物のいちばん目につく部分になる。

小島家は慶長2年(1597年)創業とされる酒造家で、スイカズラを用いた薬酒である忍冬酒を代々醸してきた。小島家住宅主屋は、その商いの正面にあたる建物である。文化庁の国指定文化財等データベースは、この家を約千坪の敷地をもつ酒造業の家として記載している。

敷地の大きさについては、建築史学会の2019年の研究発表で、間口57メートル、奥行およそ50メートルという数値が示され、江戸時代を通じて大きく変わっていないと報告された。城下町の1軒としては破格の広さで、主屋はその東端、通りに接する位置を占める。

登録の理由は「歴史的景観への寄与」

小島家住宅主屋が登録された基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」である。建物単体の古さや格式より、町並みの中で果たしている役割を評価する基準で、登録番号は23-0173。

登録は平成17年(2005年)2月9日で、この日、小島家住宅では主屋のほかに座敷、南蔵、北酒蔵及び北蔵、西酒蔵及び仕込場、寄付、屋根塀を加えた7件が一度に登録された。犬山市の一覧によれば、同じ日に城下町の東古券地区では真野家住宅、旧磯部家住宅、遠藤家住宅、伊藤家住宅を含む19件が登録されている。個々の家ではなく、町並みをつくる建物群として扱われたことがわかる。

間口を大きくとった町家であることが、小島家住宅主屋の性格を決めている。城下町の町家は間口を狭く奥行きを深くとる例が多いが、この主屋は通りに沿って長く構えを見せる。表を覆う格子と重い瓦屋根が、周囲の町並みに対して基準になる大きさを与えている。

格子と通り庭、実物で見るところ

通りに立って最初に目に入るのは、1階と2階を覆う格子である。細い縦材が隙間なく並び、面全体が一枚の織物のように見える。日中は外から内部がほとんど見えず、内側からは通りの様子がよく見える。町家の格子はそうした働きをもつ。

2階を見上げると、階高の低さに気づく。つし二階は本来、人が立って過ごす階ではなく、物置や使用人の寝所に使われた低い階である。明治の建築でありながら江戸の町家の形式を引き継いでいることが、この低さに出ている。

戸口から奥をのぞくと、土間が細長く続いているのがわかる。通り庭は表から奥の作業場まで一本に通る土間で、酒造家では原料や道具、樽の出し入れがここを通った。小島家住宅主屋の通り庭は間口が広く、居室2列6室がその南側にまとまる。

敷地を囲う屋根塀には弁柄が塗られている。朝鮮の宮殿を模したという言い伝えが小島家に残り、2019年の研究発表でも紹介されたが、裏づけとなる史料は示されていない。忍冬酒の製法が朝鮮半島から伝わったという家の由緒と重ねて語られてきた話として聞いておきたい。

主屋の南西には座敷が接続する。表で商う建物と、客を迎える建物が別棟で連なる構成は、規模の大きな商家に見られるつくりである。

見学方法とアクセス

小島家住宅主屋は個人の所有で、内部は公開されていない。外観は通りから自由に見ることができ、格子の面と屋根の構えはいつでも観察できる。

敷地内では小島醸造が忍冬酒を販売している。犬山市観光協会の犬山観光ナビによれば、営業時間は午前10時から午後4時で、正午から午後1時は昼休み。定休日は日曜日と水曜日の午前で、電話番号は0568-61-0165、駐車場は10台分ある。買い物のために店舗部分へ入ることはできるが、住居部分の見学ができるわけではない。

令和7年(2025年)からは、敷地の一部が宿泊施設として使われている。運営する宿の公式サイトによれば、小島家の敷地は「練屋棟」として客室と日本料理店にあてられており、宿泊や食事の利用者は建物の中で時間を過ごすことになる。

行き方は簡単で、名鉄犬山駅西口から徒歩およそ10分。名鉄名古屋駅から犬山駅までは約30分である。犬山城や城下町の町歩きの途中に自然に通りかかる位置にある。

撮影は、通りからの外観であれば問題ない。敷地の内側は私有地であり、店舗や宿の営業空間でもあるため、立ち入りや内部の撮影には所有者・運営者の了解が必要になる。

Q&A

Q小島家住宅主屋の内部は見学できますか。
A住居部分は公開されていません。外観は通りからいつでも見られます。敷地内の小島醸造の店舗には買い物のために入ることができ、2025年からは敷地の一部が宿泊施設と飲食店として使われています。
Q小島家住宅主屋はいつ建てられましたか。
A文化庁の国指定文化財等データベースは明治30年(1897年)頃としています。木造2階建、瓦葺で、建築面積は150平方メートルです。
Q小島家住宅主屋へのアクセスと最寄り駅を教えてください。
A名鉄犬山駅西口から徒歩およそ10分です。名鉄名古屋駅から犬山駅までは約30分。所在地は愛知県犬山市大字犬山字東古券633で、犬山城下町の通り沿いにあります。
Q小島家住宅主屋で忍冬酒は買えますか。
A敷地内の小島醸造で販売しています。犬山観光ナビの案内では営業時間は午前10時から午後4時、正午から午後1時は昼休み、休みは日曜日と水曜日の午前です。訪問前に電話(0568-61-0165)で確認すると確実です。
Q小島家住宅主屋はどんな文化財ですか。
A登録有形文化財の建造物で、平成17年(2005年)に登録されました。登録基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」、登録番号は23-0173で、町並みへの貢献が評価されています。

基本情報

名称小島家住宅主屋(こじまけじゅうたくしゅおく)
所在地愛知県犬山市大字犬山字東古券633
指定区分登録有形文化財(建造物)
指定年平成17年(2005年)登録
員数1棟
寸法木造2階建、瓦葺、建築面積150平方メートル
所有者個人
公開状況外観のみ見学可、内部は非公開

参考文献

文化庁 国指定文化財等データベース「小島家住宅主屋」
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00004569
文化遺産オンライン「小島家住宅主屋」
https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/195569
犬山市「犬山市の文化財」(登録有形文化財一覧)
https://www.city.inuyama.aichi.jp/kurashi/bunka/1001063/1001068.html
長谷川良夫「小島家住宅の史的考察 朝鮮伝来の忍冬酒釀造元」建築史学 第73巻
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsahj/73/0/73_63_1/_article/-char/ja/
犬山観光ナビ(犬山市観光協会)「小島醸造」
https://inuyama.gr.jp/souvenir/detail/15/

最終更新日: 2026.08.31