裏庭へ南に延びる附属棟

三井家住宅渡り廊は、愛知県犬山市大字犬山字東古券にある明治中期建築の木造平屋建の附属棟で、2004年(平成16年)に登録有形文化財となった。登録番号は23-0146。文化庁は年代を1868年から1911年の幅で記録している。

この棟は主屋の南側から始まる。起点は町家の奥まで通る土間、すなわちトオリニワで、そこから街路を離れて裏庭へ向かって延びる。桁行4間5尺、およそ8.8メートル、梁間1間2尺、約2.4メートル。建築面積は27平方メートルである。

屋根は片流れで、桟瓦葺。内部は西辺に土間が全長にわたって通り、その東側に室が開く。北寄りの一郭が浴室、南寄りの一郭が便所である。腰壁のコンクリートブロックは後年の補修で、台帳にもそのまま記されている。

三井家住宅渡り廊が登録された理由

この敷地の3棟は、いずれも2004年(平成16年)の同じ日に「国土の歴史的景観に寄与しているもの」という基準で登録された。主屋と蔵にとって、その景観とは街路である。三井家住宅渡り廊は違う。文化庁はこの棟を、裏庭側の景観を構成する一要素と説明している。国の台帳が守る対象としては珍しい部類で、私的な庭から眺める浴室と便所ということになる。

種別の付け方も同じ論理をたどる。主屋と蔵は「産業3次」、つまり商家の店の側に分類されている。三井家住宅渡り廊の種別は「住宅」である。客の目に触れることのなかった部分だ、ということである。

後補のコンクリートブロックも意味を持つ。登録制度は建物を創建時の姿へ戻すことを求めない。台帳は補修を補修として書き留めるだけである。2025年(令和7年)の答申を経て犬山市が抱える登録有形文化財建造物は158件、愛知県内580件の27パーセント近くにのぼるが、その大半はこれと同じ状態にある。手を入れられてきた建物であり、制度はそれを手の入った建物として受け入れている。

間取りから読めること

町家の平面は細長く、その細長さを機能させているのが奥まで通る土間である。人も荷も煙も、畳の部屋を横切らずに表から裏まで抜けられる。三井家住宅渡り廊は、この背骨を主屋の外へ延ばした部分にあたる。店先から風呂まで、床の段差を踏まずに一続きに歩ける構成になっていた。

北から南へ順に読むと、通路、浴室、便所、そして庭という並びが出てくる。西辺を走る土間の帯があったからこそ、その全部に履物のまま行き着けた。

片流れの屋根が、この棟が附属の仕事であることを示している。明治22年(1889年)の主屋は完全な切妻を載せ、大正7年(1918年)の蔵も妻面を街路に向けて、どちらも断面が左右対称である。一方に流すだけの屋根は安く、低く、目立たない。庭の塀に沿う幅2.4メートルの棟には、それがふさわしい。

三井家住宅渡り廊の見学方法

出かける前にはっきりさせておきたい。この棟は主屋の背後にあり、公道からは見えない。犬山市は所有者を「個人」と記載しており、内部の公開はなく、観覧料も見学時間の定めもない。訪問者がこの建物を目にできる位置は、どこにもない。

現地でできるのは、敷地の正面を読んで、棟がどこへ向かっているかを見当づけることである。街路に立ち、主屋の間口の東端を見つける。その裏、間口のうち1間半弱の奥にトオリニワがある。三井家住宅渡り廊は、その通り庭の突き当たりから南へ、こちらから遠ざかる方向に延びている。棟そのものの写真は、下記の文化庁データベースで公開されている。

名鉄犬山駅の西口を出て、城下町を北へ徒歩約13分。犬山城はさらに北へ約600メートルの位置にある。この種の附属棟が町家の敷地にどう納まっていたかを実際に見たい場合は、南へ約200メートル、本町通り沿いの旧磯部家住宅が市によって無料で公開されており、午前9時から午後5時まで入ることができる。主屋の奥に裏座敷と土蔵が並ぶ構成で、表から裏へ抜ける町家の奥行きがそのまま歩ける。

Q&A

Q三井家住宅渡り廊は街路から見えますか
A見えません。主屋の背後、裏庭側にあり、公道からの視点はありません。写真は文化庁のデータベースで公開されています。
Q三井家住宅渡り廊は何に使われていた建物ですか
A水回りの棟です。北寄りに浴室、南寄りに便所があり、西辺を通る土間からそれぞれに入る構成になっています。
Q三井家住宅渡り廊はいつ建てられ、どの区分の文化財ですか
A明治中期の建築で、年代は1868年から1911年の幅で記録されています。2004年(平成16年)に登録有形文化財となり、登録番号は23-0146です。
Q三井家住宅渡り廊の壁にコンクリートブロックがあるのはなぜですか
A腰壁の後年の補修によるもので、台帳にもそのとおり記されています。登録制度は使用中の建物を守るため、後の補修は撤去されるのではなく記録されます。
Q三井家住宅渡り廊は主屋と同じ登録に含まれますか
A含まれません。明治22年(1889年)の主屋と大正7年(1918年)の蔵は、それぞれ23-0144、23-0145の登録番号を持ちます。3件とも2004年(平成16年)の同じ日に登録されました。

基本情報

名称三井家住宅渡り廊
所在地愛知県犬山市大字犬山字東古券684
指定区分登録有形文化財(建造物)、登録番号23-0146
指定年平成16年(2004年)登録
員数1棟
寸法木造平屋建、瓦葺、建築面積27平方メートル
所有者個人
公開状況非公開。主屋の背後にあり、公道からは見えない。

参考文献

文化庁 国指定文化財等データベース「三井家住宅渡り廊」
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00004252
文化遺産オンライン「三井家住宅渡り廊」
https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/169562
文化庁 国指定文化財等データベース「三井家住宅主屋」
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00004250
犬山市「犬山市の文化財」(登録有形文化財一覧を含む)
https://www.city.inuyama.aichi.jp/kurashi/bunka/1001063/1001068.html
犬山市「登録文化財制度」
https://www.city.inuyama.aichi.jp/kurashi/bunka/1001063/1001067.html
犬山市「旧磯部家住宅復原施設について」
https://www.city.inuyama.aichi.jp/kurashi/bunka/1001052/1003550/1001061.html

最終更新日: 2026.09.02