主屋の南西に続く、客を迎えるための棟
小島家住宅座敷は、愛知県犬山市の犬山城下町にある弘化4年(1847年)の接客用の建物で、平成17年(2005年)に登録有形文化財に登録された。
木造平屋建、瓦葺、建築面積は163平方メートル。主屋の南西に接続し、切妻造の桟瓦葺の屋根の四方に下屋をめぐらせる。東側の正面、やや北寄りに式台を構え、内部には15畳の広間、仏間、書院風の座敷などが並ぶ。
小島家は慶長2年(1597年)創業とされる酒造家で、忍冬酒という薬酒を代々醸してきた。商いの建物である主屋とは別に、これだけの規模の接客棟をもつことが、この家の立場を示している。小島家住宅座敷は、酒を売る場ではなく、客を迎えて座らせる場として建てられた。
登録の理由と、建立年代をめぐる議論
登録基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」で、登録番号は23-0174。平成17年(2005年)2月9日に、小島家住宅の主屋・座敷・南蔵・北酒蔵及び北蔵・西酒蔵及び仕込場・寄付・屋根塀の7件が同時に登録された。
文化庁の国指定文化財等データベースは、小島家住宅座敷の年代を弘化4年(1847年)とする。ただし、この年代には異論がある。建築史学会の2019年の研究発表で、所有者側の調査にもとづき、座敷棟は天正年間(1573年から1592年)頃に別の場所で建てられ、慶長2年(1597年)に現在地へ移されたとする推定が示された。根拠として、襖の引手金具、各室境の彫刻欄間、小屋組の梁に残る加工の痕跡が挙げられている。
これに対して発表の場では、意匠から見て年代はもっと下るのではないか、小屋組に打ち付けられていた弘化4年(1847年)の札をどう扱うのか、という質問が出された。発表者は、この札は祈祷のための札であり、室町時代の構造材がかなり残っていると考えるが、解体してみなければ確かなことは言えないと答えている。
つまり、現時点で確定しているのは文化庁データベースの弘化4年(1847年)という年代であり、それより古い部材が含まれる可能性が研究者の間で議論されている、というのが正確な状況である。小島家住宅座敷を見るときは、この宙づりの状態ごと眺めるほうが面白い。
式台から残月の間へ
東正面の式台は、駕籠や履物のための一段低い板敷きで、正式な客だけが通る玄関である。日常の出入りは主屋の側で済ませ、この式台は改まった場面のために空けておく。玄関がふたつあるという事実そのものが、この家の客の格を語っている。
式台の奥は8畳の中廊下で、そこから南に15畳の広間が開く。広間の南面には床・棚・付書院がそろい、座敷飾りの一式が正面に見える形になる。北側には7畳半の控えの間、その西に10畳の仏間が続く。
広間の西にあるのが12畳の残月の間である。千家の残月亭を写した部屋で、茶の湯の意匠を住宅の座敷に取り込んだつくりになっている。小島家住宅座敷でもっとも知られた部屋がこれで、春の特別公開ではこの部屋が中心になってきた。
材の選び方も見どころになる。柱には四方柾、天井板には神代杉といった銘木が使われ、欄間の彫刻や座敷飾りの細部にも手が込む。四方柾は四面すべてに柾目が通る柱材で、大径木からわずかしか取れない。天井を見上げ、柱の木目を横から眺めるだけで、この棟に投じられた費用の桁がわかる。
屋根については、現在の桟瓦葺の下に、勾配の緩い檜皮葺の屋根があったのではないかという推定も出されている。もしそうなら、外観の印象は今とかなり違っていたことになる。
見学方法とアクセス
小島家住宅座敷は個人の所有で、内部は通常公開されていない。主屋の背後にあたるため、通りからは屋根がわずかに見える程度で、外観の全体を眺めることも難しい。
令和7年(2025年)からは、敷地の一部が宿泊施設として使われている。運営する宿の公式サイトは、小島家の敷地を「練屋棟」と呼び、客室と日本料理店、茶室や庭園を含む区画として案内している。宿泊や食事の予約をした人は、この一画で時間を過ごすことになる。館内をめぐる体験の提供も告知されているが、内容は準備中とされているため、訪問前に運営者へ確認するのが確実である。
敷地内では小島醸造が忍冬酒を販売している。犬山観光ナビによれば営業時間は午前10時から午後4時、正午から午後1時は昼休み、休みは日曜日と水曜日の午前である。買い物のために店舗へ入ることはできるが、座敷の見学とは別の話になる。
最寄り駅は名鉄犬山駅で、西口から徒歩およそ10分。名鉄名古屋駅から犬山駅までは約30分である。
撮影については、敷地の内側が私有地であり、宿と店舗の営業空間でもあるため、所有者・運営者の了解が前提になる。通りからの外観撮影に制限はない。
Q&A
- 小島家住宅座敷の内部は見学できますか。
- 通常は公開されていません。2025年からは敷地の一部が宿泊施設と日本料理店として使われており、予約した利用者はこの一画で過ごせます。公開の予定は運営者や犬山市の案内で確認してください。
- 小島家住宅座敷はいつ建てられたのですか。
- 文化庁の国指定文化財等データベースは弘化4年(1847年)としています。所有者側の調査ではこれより古い部材が含まれるという推定も出されていますが、学会の場では意匠から年代は下るという指摘もあり、決着していません。
- 小島家住宅座敷の残月の間とはどんな部屋ですか。
- 広間の西側にある12畳の座敷で、千家の残月亭を写した部屋です。茶の湯の意匠を住宅の座敷に取り込んだつくりで、この棟でもっともよく知られています。
- 小島家住宅座敷へのアクセスを教えてください。
- 名鉄犬山駅西口から徒歩およそ10分です。名鉄名古屋駅から犬山駅までは約30分。所在地は愛知県犬山市大字犬山字東古券633で、主屋の南西に接続しています。
- 小島家住宅座敷はどんな文化財ですか。
- 登録有形文化財の建造物で、平成17年(2005年)に登録されました。登録基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」、員数は1棟、建築面積は163平方メートルです。
基本情報
| 名称 | 小島家住宅座敷(こじまけじゅうたくざしき) |
|---|---|
| 所在地 | 愛知県犬山市大字犬山字東古券633 |
| 指定区分 | 登録有形文化財(建造物) |
| 指定年 | 平成17年(2005年)登録 |
| 員数 | 1棟 |
| 寸法 | 木造平屋建、瓦葺、建築面積163平方メートル |
| 所有者 | 個人 |
| 公開状況 | 通常非公開、外観も限定的 |
参考文献
- 文化庁 国指定文化財等データベース「小島家住宅座敷」
- https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00004570
- 文化遺産オンライン「小島家住宅座敷」
- https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/189300
- 長谷川良夫「小島家住宅の史的考察 朝鮮伝来の忍冬酒釀造元」建築史学 第73巻
- https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsahj/73/0/73_63_1/_article/-char/ja/
- 犬山市「犬山市の文化財」(登録有形文化財一覧)
- https://www.city.inuyama.aichi.jp/kurashi/bunka/1001063/1001068.html
- 宿-SHUKU-(小島家住宅を用いた宿泊施設)公式サイト
- https://shuku-kokon.com/
最終更新日: 2026.08.31