敷地の北端で、2棟の蔵が直交して建つ
小島家住宅北酒蔵及び北蔵は、愛知県犬山市の犬山城下町にある江戸時代末期(1830年から1867年)の土蔵造の建物で、平成17年(2005年)に登録有形文化財に登録された。
名称に「及び」が入るとおり、この登録は北酒蔵と北蔵という2つの蔵をひとまとまりとして扱う。両者とも土蔵造2階建、切妻造、桟瓦葺で、東西に棟をとる北酒蔵と、南北に棟をとる北蔵が隣り合って建つ。建築面積は合わせて150平方メートル、員数は1棟である。
小島家は慶長2年(1597年)創業とされる酒造家で、スイカズラを用いた薬酒である忍冬酒を代々醸してきた。小島家住宅北酒蔵及び北蔵は、約千坪の敷地の北の端、作業の場が集まる一帯に位置している。
棟の向きが違うことで生まれる外観
この建物を特徴づけているのは、2棟の棟の向きが90度ずれていることである。東西棟と南北棟が接すると、屋根の妻面と平側が交互に現れ、正面から見たときの輪郭が単純な箱にならない。文化庁の国指定文化財等データベースは、この姿を複雑で変化に富んだ外観と評価している。
さらに、北酒蔵の南面の西半分には下屋が葺き下ろされ、2棟と一体になっている。この下屋にあてられていたのが絞り場である。醪を搾って酒と酒粕に分ける工程の場で、蔵の内部ではなく庇の下に置かれた。搾りは水と液体を大量に扱う作業であり、風の通る半屋外がむしろ都合がよい。
結果として、閉じた土蔵が2つ、開いた下屋が1つ、それぞれ別の高さと向きで組み合わさる。設計というより、必要な機能を必要な場所へ足していった結果できあがった形である。小島家住宅北酒蔵及び北蔵の外観が入り組んで見えるのは、そのためである。
登録基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」で、登録番号は23-0176。平成17年(2005年)2月9日に、小島家住宅では主屋・座敷・南蔵・北酒蔵及び北蔵・西酒蔵及び仕込場・寄付・屋根塀の7件が同時に登録された。敷地の北半分の作業空間を代表する建物として位置づけられている。
見るべきところ
まず屋根の重なりを追いたい。棟の向きが違う2棟が接する部分では、屋根同士の取り合いが生じる。雨仕舞いをどう処理したかが、瓦の納まりに出る。
次に、下屋の低さである。土蔵の壁面が立ち上がる途中から屋根が張り出すため、下屋の下は天井が低く、暗い。搾りの作業はこの薄暗い空間で行われた。半屋外の作業場を蔵に貼り付ける形式は、規模の大きな造り酒屋に共通するつくりである。
壁の厚みも見どころになる。土蔵造は木の軸組の外側に土を厚く塗り重ねる工法で、開口部は最小限に絞られる。火にも温度変化にも強い代わりに、内部は暗い。西側の酒蔵が3階建で高さを競うのに対し、小島家住宅北酒蔵及び北蔵は2階建で低く、横に広がる。同じ敷地の蔵でも役割によって形が変わることが、並べて見るとよくわかる。
見学方法とアクセス
小島家住宅北酒蔵及び北蔵は個人の所有で、内部は公開されていない。敷地の北端に建つため、通りに面した主屋の側からは見えず、外観を確かめるには敷地の外周を回ることになる。
敷地内では小島醸造が忍冬酒を販売している。犬山観光ナビによれば、営業時間は午前10時から午後4時、正午から午後1時は昼休み、定休日は日曜日と水曜日の午前で、電話番号は0568-61-0165、駐車場は10台分ある。
令和7年(2025年)からは、敷地の一部が宿泊施設として使われている。運営する宿の公式サイトは、小島家の敷地を「練屋棟」として客室と日本料理店にあてていると案内している。蔵を含む館内の体験も告知されているが、内容は準備中とされているため、訪問前の確認が必要である。
最寄り駅は名鉄犬山駅で、西口から徒歩およそ10分。名鉄名古屋駅から犬山駅までは約30分である。
撮影は、通りや公道から見える範囲であれば自由に行える。敷地の内側は私有地であり、店舗と宿の営業空間でもあるため、立ち入りと内部の撮影には所有者・運営者の了解が必要になる。
Q&A
- 小島家住宅北酒蔵及び北蔵はなぜ2つの蔵で1件なのですか。
- 東西棟の北酒蔵と南北棟の北蔵が隣接し、北酒蔵南面の下屋によって一体化しているためです。文化庁の登録では員数1棟として扱われ、建築面積は合わせて150平方メートルです。
- 小島家住宅北酒蔵及び北蔵の下屋は何に使われていたのですか。
- 絞り場です。醪を搾って酒と酒粕に分ける工程の場で、蔵の内部ではなく庇の下の半屋外に置かれました。水を多く使う作業に適した配置です。
- 小島家住宅北酒蔵及び北蔵はいつ建てられましたか。
- 文化庁の国指定文化財等データベースは江戸時代末期、西暦では1830年から1867年としています。構造は土蔵造2階建、瓦葺です。
- 小島家住宅北酒蔵及び北蔵は見学できますか。
- 内部は公開されていません。敷地の北端にあるため、外観を見るには敷地の外周を回る必要があります。2025年からは敷地の一部が宿泊施設と日本料理店として使われています。
- 小島家住宅北酒蔵及び北蔵へのアクセスを教えてください。
- 名鉄犬山駅西口から徒歩およそ10分です。名鉄名古屋駅から犬山駅までは約30分。所在地は愛知県犬山市大字犬山字東古券633です。
基本情報
| 名称 | 小島家住宅北酒蔵及び北蔵(こじまけじゅうたくきたさかぐらおよびきたぐら) |
|---|---|
| 所在地 | 愛知県犬山市大字犬山字東古券633 |
| 指定区分 | 登録有形文化財(建造物) |
| 指定年 | 平成17年(2005年)登録 |
| 員数 | 1棟 |
| 寸法 | 土蔵造2階建、瓦葺、建築面積150平方メートル |
| 所有者 | 個人 |
| 公開状況 | 非公開、外観は敷地外から |
参考文献
- 文化庁 国指定文化財等データベース「小島家住宅北酒蔵及び北蔵」
- https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00004572
- 文化遺産オンライン「小島家住宅北酒蔵及び北蔵」
- https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/169882
- 犬山市「犬山市の文化財」(登録有形文化財一覧)
- https://www.city.inuyama.aichi.jp/kurashi/bunka/1001063/1001068.html
- 犬山観光ナビ(犬山市観光協会)「小島醸造」
- https://inuyama.gr.jp/souvenir/detail/15/
- 宿-SHUKU-(小島家住宅を用いた宿泊施設)公式サイト
- https://shuku-kokon.com/
最終更新日: 2026.08.31