隅を切り落とした鉄筋コンクリートの銀行
旧福知山信用金庫本店は、京都府福知山市字中ノ21にある昭和3年(1928年)竣工の鉄筋コンクリート造2階建の銀行建築で、令和7年(2025年)8月6日に国の登録有形文化財(建造物)となった。
建つのは福知山城跡の北西、市街地の角地である。南西の角は直角に立てず、斜めに切り落とした隅切りとし、そこに出入口を据える。立面はこの隅切り部を中軸として左右対称にまとめられており、向かいの歩道に立てば、細部を追う前に構成が把握できる。
外壁はモルタル塗仕上。腰の部分には花崗岩の切石が貼られ、灰色の硬質な帯が路面との境界をつくる。装飾らしい装飾は二つだけで、出入口に架かる庇と、半円形に削り出した窓台。それ以上のものは付いていない。この抑制のきいた造りが、地方の金融機関が華やかさよりも堅固さを外観に求めた昭和初期という年代を示している。
登録上の建築面積は212平方メートル。
登録の経緯と評価
登録は第110回の登録回に含まれ、登録番号は26-0701。文化審議会が令和7年3月21日に文部科学大臣へ答申し、同年8月6日付で官報告示された。
適用された登録基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」である。福知山は明智光秀の築城以来の城下町で、その商業地は明治から大正にかけて城の北から西へと広がった。昭和3年に鉄筋コンクリートの銀行が建ったことは、この商業地が近代的な金融のかたちを備えた時期の目印になっている。
肝心の金融機関のほうは、すでに存在しない。福知山信用金庫は平成14年(2002年)、京都府北部の他の三信用金庫とともに京都北都信用金庫へ吸収合併された。建物は看板を掲げていた組織より20年以上長く残り、平成26年(2014年)に改修を受け、現在は民間企業の所有下にある。
登録有形文化財は、重要文化財に比べて規制のゆるやかな制度である。外観を大きく変更する際に届出を要する代わりに、税制上の優遇や修理費の補助を受けられる。平成8年(1996年)に創設されたこの仕組みが想定していたのは、ほかでもなくこうした建物、つまり使われ続けている近代の日常的な建築だった。
いまの中身は和菓子屋
建物には現在、福知山の株式会社足立音衛門が営む和菓子店「丹波鶴屋」が入っている。文化庁は答申の資料のなかで「現在は菓子販売店舗として活用」と現況を記した。文化財の解説に転用後の用途がわざわざ書き込まれるのは珍しく、この活用への評価と読める。
扉を開けてまず気づくのは天井の高さである。1920年代の銀行の営業室は預金者を圧するために高く造られており、ここでもその寸法が手つかずで残る。かつて窓口カウンターが並んでいたあたりには、いまは丹波大納言小豆を使ったどら焼きや羊羹が並ぶ。店側が「幅の狭い窓」と呼ぶ縦長の開口から、光が細い帯になって床に落ちる。
喫茶コーナーは設けられていない。店内に腰掛けベンチが置かれ、駐車場も用意されている。
営業時間は11時から16時。定休日は月曜・木曜と元日。美術館の開館時間ではなく一民間店舗の営業時間なので変更もあり得る。遠方から向かうなら、電話(0773-25-0268)で確認しておきたい。
行き方と周辺
JR福知山駅から北へ約700メートル、徒歩10分ほど。福知山駅にはJR山陰本線とJR福知山線が乗り入れ、京都・大阪からの特急でおよそ2時間弱である。
そこからさらに南東へ数分歩けば福知山城。現在の天守は昭和61年(1986年)の再建だが、足元の石垣は築城当時のもので、自然石を積んだ野面積みのなかに転用された石塔の断片が混じる。天守内部は郷土資料館として公開され、火曜を除いて開いている。
足立音衛門の本店は東へ約1キロ、字内記44-18にある。こちらは明治末から大正初めにかけて建てられた松村家住宅を使ったもので、平成9年(1997年)に京都府指定文化財となった。敷地内には主屋のほか洋館・茶室・撞球場などが建ち、外観を見学できる。
銀行建築の外観を路上から撮ることに制限はない。ただし内部は営業中の店舗なので、撮影の前にスタッフへ一声かけたい。
Q&A
- 旧福知山信用金庫本店の内部は見学できますか。営業時間は?
- 和菓子店「丹波鶴屋」として営業しており、11時から16時まで入店できます。定休日は月曜・木曜および元日。店舗なので拝観料はかかりません。
- 旧福知山信用金庫本店はいつ建てられ、いつ文化財になったのですか。
- 昭和3年(1928年)竣工、平成26年(2014年)改修です。国の登録有形文化財となったのは令和7年(2025年)8月6日で、文化審議会の答申は同年3月21日でした。
- 福知山駅から旧福知山信用金庫本店までどう行けばよいですか。
- 駅から北へ約700メートル、徒歩10分程度です。福知山城跡の北西にあたる市街地の角地に建っています。車の場合は駐車場が利用できます。
- 旧福知山信用金庫本店の建築上の見どころはどこですか。
- 南西角の隅切り部を中軸に据えた左右対称の立面構成です。腰は花崗岩切石貼、その上はモルタル塗で、装飾は出入口の庇と半円形窓台に絞られています。角地に建つ昭和初期の銀行建築の典型的な解き方といえます。
- 旧福知山信用金庫本店で写真を撮ってもよいですか。
- 道路からの外観撮影に制限はありません。内部については営業中の店舗のため、事前にスタッフへ確認してください。
基本情報
| 名称 | 旧福知山信用金庫本店(きゅうふくちやましんようきんこほんてん) |
|---|---|
| 所在地 | 京都府福知山市字中ノ21 |
| 指定区分 | 登録有形文化財(建造物) 登録番号 26-0701 |
| 指定年 | 令和7年(2025年)8月6日登録(第110回) |
| 員数 | 1棟 |
| 寸法 | 鉄筋コンクリート造2階建、建築面積212平方メートル |
| 所有者 | 株式会社足立音衛門 |
| 公開状況 | 和菓子店「丹波鶴屋」として営業(11:00〜16:00/月曜・木曜・元日休) |
参考文献
- 国指定文化財等データベース(文化庁) — 旧福知山信用金庫本店
- https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00015486
- 文化庁 — 文化審議会の答申(登録有形文化財(建造物)の登録)令和7年3月21日
- https://www.bunka.go.jp/koho_hodo_oshirase/hodohappyo/94187801.html
- 足立音衛門 — 姉妹店「丹波鶴屋」
- https://www.otoemon.com/tanba-tsuruya/
- 足立音衛門 — 本店のご案内
- https://www.otoemon.com/main-store/
最終更新日: 2026.08.08