由良川の城下町に建つ迎賓の座敷

福知山市下柳、旧城下を貫く京街道から一歩入った屋敷地の北辺に、旧片岡家住宅二階建離座敷が建つ。大正4年(1915年)の建築である。片岡家は文政4年(1821年)に呉服を商い始めた家で、明治から大正にかけて当主片岡久兵衛は市内有数の実業家となり、明治41年(1908年)には後の京都銀行につながる治久銀行の設立に加わった。この座敷は、そうした家の格を来客に示すために設けられた建物である。

桁行六間、梁間三間半。入母屋造で桟瓦を葺き、たちの高い総二階建とする。建築面積は129平方メートル。東面には式台玄関を構え、正客を迎える構えを整える。座敷飾りを備えた部屋を一階に二室、二階に三室、東西に並べ、南側は広縁を介して庭に開く。書院造の格式を、地方都市の商家がここまで本格的に実現した点に見どころがある。

登録の理由と価値

令和3年(2021年)6月、この離座敷は主屋や土蔵など旧片岡家住宅の六棟とともに登録有形文化財となった。旧福知山城下町の歴史的景観に寄与する建物群としての評価である。六棟のうちでも二階建離座敷は最も格が高く、地方の簡略な座敷ではなく、正統な書院造として仕上げられている。

細部がそれを裏づける。襖絵や板戸、建具の類は当時の一流の作家・工芸家に依頼したもので、最も奥まった大正期の座敷は、今では入手の難しい霧島杉を天井に用いる。地元の記録は、この座敷を福知山の政財界の人々を迎えるための建物と伝えており、その用途は建物の規模と仕上げに今も読み取れる。

訪ねて見たいところ

まず東面の式台玄関から入る。段を踏んで座敷へ上がる形式そのものが、日常の空間から接客の間へと切り替わる合図となる。一階の座敷を進みながら、床や棚の座敷飾りが各室をどう引き締めているかを見る。奥の間では天井を見上げて霧島杉の材を確かめたい。南の広縁に立てば、庭は遠景ではなく室内の延長として立ち現れる。

屋敷はすでに個人の住まいではない。2020年からは鴨すきで知られる「とりなご久兵衛」として営まれており、食事とともに座敷を内側から味わえる。予約をして訪れるのがよく、あくまで営業中の食事処であって展示施設ではない点は心得ておきたい。なお、通りを隔てて建つ旧片岡家別荘(現・芦田家住宅)とは別の登録物件であり、混同しないよう注意されたい。

Q&A

Q座敷の中を見学できますか。
Aはい。建物は飲食店「とりなご久兵衛」として使われており、食事とともに内部を体験できます。とくに鴨すきは予約をおすすめします。
Qいつ、誰が建てたのですか。
A大正4年(1915年)の建築で、近代福知山の商業を支えた呉服商にして銀行家でもあった片岡家によるものです。
Q同じ敷地の平屋離座敷とはどう違うのですか。
Aこちらは来客を迎える格式ある書院造の座敷です。昭和9年(1934年)に加わった平屋離座敷は、茶の湯に通じる軽やかな数寄屋の趣で仕上げられています。
Q片岡家の別荘と同じものですか。
A別物です。近くの旧片岡家別荘は現在「芦田家住宅」として単独で登録されています。本項は下柳にある本宅と店舗の屋敷を指します。

基本情報

名称旧片岡家住宅二階建離座敷
所在地京都府福知山市字下柳15
指定区分登録有形文化財(令和3年6月24日登録)
員数1棟
構造及び形式木造2階建、瓦葺、建築面積129平方メートル
建築年大正4年(1915年)/令和2年改修
活用飲食店「とりなご久兵衛」
アクセス福知山駅から徒歩約15分。食事の際に内部見学可、要予約

参考文献

国指定文化財等データベース(文化庁)— 旧片岡家住宅二階建離座敷
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00013829
文化遺産オンライン — 旧片岡家住宅二階建離座敷
https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/544071
福知山市オフィシャルホームページ — 旧片岡家住宅
https://www.city.fukuchiyama.lg.jp/soshiki/7/46298.html

最終更新日: 2026.07.03