町並みをつくる塀
塀が単体で文化財となる例はまれだが、旧片岡家住宅高塀はその数少ない一つである。大正4年(1915年)の築で、主屋の北から敷地北東隅まで、旧京街道に沿って延びる。一方には二階建離座敷の前庭があり、他方には通りがある。この塀は、両者を隔てつつ、街道に輪郭を与えている。
高さは約三メートルの木造で、壁は上部を漆喰塗、腰を板張とし、表側の屋根は目板瓦で葺く。中央の一間には引違の格子戸を建てて出入口とし、桟瓦葺の小さな庇を架ける。塀は単なる仕切りではなく、町に向けて示すために設計された一つの面である。
登録の理由と価値
令和3年(2021年)6月、高塀は旧片岡家住宅の他の五棟とともに登録有形文化財となった。ともに形づくる歴史的景観への評価である。この種の塀は、商家の屋敷を外から読み取らせる要素の一部であり、丁寧な腰板張と庇付きの出入口をもつこの塀は、土木ではなく建築として見られることを明らかに意図している。
とりわけ目を引く特徴が一つある。塀の北端の一間には、小さな地蔵堂が埋め込まれている。旅人や子どもを見守る菩薩を祀る堂である。私的な塀のなかに、通りへ向けて守り本尊を据えるという構えは、人通りの多い街道沿いで、この家が自らの立ち位置をどう捉えていたかを伝える。無地になりがちな外周に添えられた、めずらしく人間味のある一点である。
訪ねて見たいところ
通りから塀を端まで歩き、漆喰・板・瓦がつくるリズムを感じたい。中央の格子戸を小庇の下に見つけ、そのまま北端へ進めば、埋め込まれた地蔵堂に行き当たる。気づかず通り過ぎやすいが、見つければ報われる。二つあわせて、塀は見るべきものの小さな連なりとなる。この塀がそもそもなぜ登録されたのかを、その練られた細部が説明している。
塀の奥の屋敷は現在、鴨料理で知られる「とりなご久兵衛」であり、食事の客として敷地に入れる。塀そのものは通りから眺めるのがよく、予約は要らない。なお、通りを隔てて建つ旧片岡家別荘(現・芦田家住宅)は別に登録された物件で、この屋敷の一部ではない。
Q&A
- なぜ塀が文化財なのですか。
- 片岡家の屋敷の歴史的な通り景観を形づくるからです。練られた素材や庇付きの出入口、埋め込まれた地蔵堂により、単なる仕切りではなく設計された要素となっています。
- 塀の中の小さなお堂は何ですか。
- 塀の北端に据えられた地蔵堂です。地蔵は旅人や子どもを守るとされる菩薩です。
- 塀の高さはどのくらいですか。
- 高さは約三メートルで、旧街道沿いに延び、登録上の延長は約14.5メートルです。大正4年(1915年)の築で、令和2年(2020年)に改修されました。
- 見学に入場券は要りますか。
- 要りません。塀は公道から見られます。敷地内へ入るには、飲食店「とりなご久兵衛」の客として訪ねてください。
基本情報
| 名称 | 旧片岡家住宅高塀 |
|---|---|
| 所在地 | 京都府福知山市字下柳22-1他 |
| 指定区分 | 登録有形文化財(令和3年6月24日登録) |
| 員数 | 1棟 |
| 構造及び形式 | 木造、瓦葺、延長14.5メートル、高さ約3メートル |
| 建築年 | 大正4年(1915年)/令和2年改修 |
| 活用 | 屋敷の外周塀(飲食店「とりなご久兵衛」) |
| アクセス | 福知山駅から徒歩約15分。通りから見学可 |
参考文献
- 国指定文化財等データベース(文化庁)— 旧片岡家住宅高塀
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00013833
- 文化遺産オンライン — 旧片岡家住宅主屋
- https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/591530
- 福知山市オフィシャルホームページ — 旧片岡家住宅
- https://www.city.fukuchiyama.lg.jp/soshiki/7/46298.html
最終更新日: 2026.07.03