旧邸御室土蔵 ― 敷地北西隅を画す漆喰の蔵

昭和12年(1937年)竣工の旧邸御室、その敷地北西隅に白い蔵が建つ。土蔵造の二階建で、厚い土壁を漆喰で仕上げ、火・湿気・虫害から収蔵品を守る形式である。主屋の北西隅には後補部分を介して接続し、母屋に近接しながらも、形式と用途の両面で明確に一線を画している。

規模は小さく、建築面積は約16平方メートル。平面は二間四方、四メートル四方の正方形をなす。屋根は本瓦葺で、主屋の桟瓦とは異なる格式の高い葺き方を用いる。外壁は漆喰仕上とし、東・北面の腰部のみ竪板張として雨の跳ね返りに備える。小屋組はヒノキ材の和小屋で、良材を用いた丁寧な造りである。

景観をかたちづくる蔵 ― 登録基準の違い

土蔵は文化審議会の答申を経て、平成29年(2017年)5月2日に国の登録有形文化財となった。登録番号は26-0516。旧邸御室の登録五棟のなかで、この蔵はやや性格を異にする。登録基準が他と異なるためである。主屋・茶室・待合・門及び塀がいずれも「造形の規範となっているもの」として登録されたのに対し、土蔵は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」として登録された。

この違いには立ち止まる価値がある。評価されたのは単一の際立った意匠ではなく、白壁と瓦屋根が庭園内から、また敷地外から見たときに、場の景観をかたちづくる働きである。良材を用いて丁寧に建てられた蔵が斜面の邸宅の一隅に置かれると、それは静かな役目を果たす。構図の一辺を引き締め、通りからも庭の園路からも、御室という土地の落ち着いた性格の一部として立ち現れる。ヒノキの小屋組から端正な漆喰仕上まで、その造りの丁寧さこそが、この役割を担わせている。

蔵が収めたもの

茶を嗜む家には、道具や軸物、季節の品を安全に保つ場所が要る。この蔵はその用に供された。邸宅の特別公開では、茶室や待合とあわせて土蔵も来訪者に開かれ、光にあふれた主屋の座敷とは対照的な、ひんやりと静まった内部を見せる。防火のために厚くした土壁は、内を薄暗く、温度を一定に保ち、家人が選ばれた折にのみ取り出す品を収めるのに適した環境をつくり出した。

旧邸御室は現在、貸空間として運用され、観光目的での常時公開は行っていない。土蔵も他の建物と同様、初夏や秋に催される不定期の特別公開の折にのみ見学できる。

Q&A

Q土蔵とは、ふつうの物置とどう違うのですか。
A土蔵は厚い土壁を漆喰で仕上げた蔵です。厚い壁が火・湿気・虫害を防ぐため、家々は貴重品や道具、軸物の収蔵に用いました。
Qなぜ土蔵だけ登録基準が異なるのですか。
A主屋・茶室・待合・門及び塀が「造形の規範」として登録されたのに対し、土蔵は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」として登録されました。白壁と瓦屋根が敷地内外の景観をかたちづくる点が評価されています。
Qどのくらいの大きさですか。
A土蔵造二階建で建築面積は約16平方メートル、平面は四メートル四方の正方形です。屋根は本瓦葺、小屋組はヒノキ材の和小屋です。
Q内部を見学できますか。
A邸宅の不定期な特別公開の折に限られ、初夏や秋に催されることが多いです。ふだんは貸空間として運用され、常時公開はしていません。

基本情報

名称旧邸御室土蔵(きゅうていおむろどぞう)
所在地京都府京都市右京区御室岡ノ裾町5
区分登録有形文化財(建造物)/登録番号 26-0516
登録年月日平成29年(2017年)5月2日
建築年昭和12年(1937年)頃
構造及び形式土蔵造2階建、瓦葺、建築面積16㎡
員数1棟
公開状況個人所有・貸空間として運用。常時非公開(不定期の特別公開あり)

References

国指定文化財等データベース(文化庁) ― 旧邸御室土蔵
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00011527
旧邸御室 ― 公式サイト
https://omuro-kyoto.jp/history/
KYOTOdesign ― 旧邸御室
https://kyoto-design.jp/spot/45354

最終更新日: 2026.07.02