旧邸御室門及び塀 ― 場の性格を定める境界の意匠

昭和12年(1937年)竣工の旧邸御室を訪れる者は、主屋や庭園、茶室を目にする前に、まず門と向き合う。敷地の北面から西面の北寄りを画すように瓦葺の塀がめぐり、その塀の北面に門が開く。門と塀は一件の登録有形文化財としてまとめて登録され、建造物ではなく、塀や柵の類を扱う「その他工作物」の区分に置かれている。

門は木造、切妻造の桟瓦葺で、間口は3.5メートル。その引戸は近寄って見る価値がある。上部には桟を入れ、外面には名栗(なぐり)を施す。名栗は釿で削り、平滑に鉋がけせず、道具の残す浅く律動的な削り跡をそのまま生かす仕上げである。塀そのものは木造・瓦葺で、柱を壁面に見せる真壁造とし、総延長は62メートルに及ぶ。西面では土台を舟肘木状の部材で受けるなど、単なる境界に終わらせない特色ある意匠を備えている。

塀が登録に値する理由

門及び塀は文化審議会の答申を経て、平成29年(2017年)5月2日に国の登録有形文化財となった。登録番号は26-0519。登録基準は「造形の規範となっているもの」で、主屋・茶室・待合と同じ基準による。

境界の塀が邸宅と並んで登録されると聞くと、意外に映るかもしれない。答えは、そこに注がれた意匠の手数にある。門扉の名栗仕上、真壁造の塀、西面土台の舟肘木状の部材。いずれも境界を保つだけなら不要のものである。それらは、敷地の縁までも室内と同じ洗練された言葉で語らせようとした家の選択そのものである。通りを行く人にとって、門と塀は旧邸御室の唯一目に見える部分であり、ここに払われた配慮が、誰かが敷居を越える前に場の格を示し、その基調を定める役目を果たしている。

最初に、そして最後に目にするもの

門を入ると、一際大きな石灯籠のかたわらを抜けて石畳の道が受付へと導く。境界はそのまま、来訪者が敷地をめぐる道筋の起点でもある。塀が敷地の北面と西面北寄りをたどるため、この一件は多くの人が中に入らずとも出会う部分であり、双ヶ岡の麓、仁和寺にほど近い小径から望まれる。

旧邸御室は貸空間として運用され、観光目的での常時公開は行っていない。門が来訪者に開かれるのは、初夏や秋に催される不定期の特別公開の折である。その時期を外れても、門と塀の外観は通りから眺めることができ、仁和寺界隈の御室を歩く人にとってのささやかな見どころとなっている。

Q&A

Qなぜ門と塀は一件の文化財として数えられるのですか。
A門と塀は一件の工作物としてまとめて登録されています。建造物ではなく塀や柵の類を扱う「その他工作物」の区分に置かれ、瓦葺の塀とそこに開く門を一つの構成として扱います。
Q門扉の「名栗」とは何ですか。
A名栗は釿で削り、平滑に仕上げずに道具の残す浅い削り跡を生かす仕上げです。門の引戸の外面にこの名栗が意匠として施されています。
Q塀の長さはどのくらいですか。
A木造の塀は敷地の北面から西面北寄りにかけて総延長62メートルにわたり、その北面に間口3.5メートルの門が開きます。
Q中に入らずに門を見られますか。
Aはい。門と塀の外観は通りから眺められます。門が来訪者に開かれるのは、初夏や秋に催される不定期の特別公開の折に限られます。

基本情報

名称旧邸御室門及び塀(きゅうていおむろもんおよびへい)
所在地京都府京都市右京区御室岡ノ裾町5
区分登録有形文化財(その他工作物)/登録番号 26-0519
登録年月日平成29年(2017年)5月2日
建築年昭和12年(1937年)頃
構造及び形式門 木造、瓦葺、間口3.5m/塀 木造、瓦葺、総延長62m
員数1棟
公開状況個人所有・貸空間として運用。外観は通りから見学可、門は不定期の特別公開時のみ開放

References

国指定文化財等データベース(文化庁) ― 旧邸御室門及び塀
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00011530
旧邸御室 ― 公式サイト
https://omuro-kyoto.jp/history/
KYOTOdesign ― 旧邸御室
https://kyoto-design.jp/spot/45354

最終更新日: 2026.07.02