旧邸御室茶室双庵 ― 御室の景を一望に収める開放的な茶室

昭和12年(1937年)竣工の旧邸御室は、双ヶ岡北斜面の庭園を擁する。その庭を登った南東隅、小高い位置に木造平屋建の一棟が構える。旧邸御室茶室双庵である。名は敷地の背後に横たわる双ヶ岡に由来し、この一室が高所に置かれた理由は、何よりもまず眺望にあった。

双庵は木造平屋建、桟瓦葺、建築面積は約23平方メートルにすぎない。主室は四畳半。その東側に平床と主人席を配し、東端には水屋を設ける。特筆すべきはその開放性である。多くの茶室が閉じた小宇宙をつくるのに対し、双庵は北面に付書院状の窓を開き、御室の町並みと遠くの山並みを一つの視界に収める。庭に向かって大きく開いた、明るい茶室である。

閉じない茶室 ― 登録の理由

双庵は文化審議会の答申を経て、平成29年(2017年)5月2日に国の登録有形文化財となった。登録番号は26-0517、登録基準は「造形の規範となっているもの」である。登録有形文化財の制度は、明治以降の建造物を幅広く記録・保存するため平成8年(1996年)に設けられた枠組みで、指定文化財より規制が緩やかな点に特色がある。

茶の湯の空間は本来、内へと閉じる。薄暗く、簡素で、点前と道具に意識を集める囲いのなかにこそ茶室の理想がある。双庵はそこから外れる。北面を風景へ開くことで、双ヶ岡の借景と御室の甍を室内の設えの一部として取り込む。この種の茶室としては異例の開放性こそ、評価の核心にあった。世を離れる庵というより、景色に丁寧に枠を掛けた一室と呼ぶべき造りである。

庭を登って双庵へ

旧邸御室の敷地は約半分を庭園が占め、双ヶ岡の斜面を借景とする池泉回遊式に構成される。鞍馬石の飛石が石灯籠のあいだを縫って高台の茶室へと導く。室内の畳に座すと、晴れた日には視線が遠く愛宕山にまで届く。双庵は庭の最高所に位置するため、登りきった先で庭園がそれまで抑えていた広い眺めを一気に解き放つ、その到達点でもある。

旧邸御室は観光目的での常時公開を行っていない。現在は貸空間として運用され、庭園と茶室が公開されるのは初夏や秋などに催される不定期の特別公開に限られる。日程が合えば、双庵はわずかな登りを費やす価値のある一棟である。

Q&A

Q「双庵」という名の由来は。
A邸宅が背にする双ヶ岡にちなんだ名です。茶室は庭園の南東隅、小高い位置に建ち、御室の町並みを見晴らします。
Qこの茶室の特色はどこにありますか。
A多くの茶室が閉じた空間であるのに対し、双庵は北面に大きな窓を開き、町並みと山並みを室内に取り込みます。この開放性が「造形の規範」として登録の評価点となりました。
Qどのくらいの大きさですか。
A建築面積は約23平方メートル。主室は四畳半で、東側に平床と主人席、東端に水屋を備えます。
Q内部を見学できますか。
A邸宅の不定期な特別公開の折に限られ、初夏や秋に催されることが多いです。ふだんは貸空間として運用されています。訪問前に公式サイトをご確認ください。

基本情報

名称旧邸御室茶室双庵(きゅうていおむろちゃしつならびあん)
所在地京都府京都市右京区御室岡ノ裾町5
区分登録有形文化財(建造物)/登録番号 26-0517
登録年月日平成29年(2017年)5月2日
建築年昭和12年(1937年)頃
構造及び形式木造平屋建、瓦葺、建築面積23㎡
員数1棟
公開状況個人所有・貸空間として運用。常時非公開(不定期の特別公開あり)

References

国指定文化財等データベース(文化庁) ― 旧邸御室茶室双庵
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00011528
旧邸御室 ― 公式サイト
https://omuro-kyoto.jp/history/
KYOTOdesign ― 旧邸御室
https://kyoto-design.jp/spot/45354

最終更新日: 2026.07.02