京都移転とともに建てられた煉瓦の校舎
平安女学院明治館は、京都市上京区下立売通室町東入にある明治28年(1895年)竣工の煉瓦造2階建の校舎で、平安女学院が大阪から京都へ移った際に建てられ、平成16年(2004年)6月9日に国の登録有形文化財に登録された。
学院の沿革は、京都での開校と明治館の竣工を明治28年の出来事として記す。一方、文化庁のデータベースは建築年代を明治27年(1894年)としている。校名を平安女学院と改めて京都へ移ったのが明治27年であり、工事と竣工のどちらに年を置くかで記載が分かれているとみられる。
設計は、英国出身の建築家アレクサンダー・ネルソン・ハンセル(1857〜1940年)、施工は清水組(現在の清水建設)である。建設当時は「本学教場」と呼ばれ、教室・職員室・事務室など学院の主な機能をこの1棟が担った。
登録の理由:日本で最初期のクイーン・アン・リバイバル
平安女学院明治館に適用された登録基準は「造形の規範となっているもの」である。文化庁の解説は、この建物を日本におけるクイーン・アン・リバイバル様式の最初期の事例としている。
クイーン・アン様式は、19世紀のイギリスで流行し、学校の校舎に好んで用いられた様式である。平安女学院の説明によれば、煉瓦をそのまま外に見せ、上げ下げ窓を付け、屋根をにぎやかに飾るのが特徴で、煉瓦の上に石を貼って石造に見せる一般的な西洋建築とは発想が異なる。明治館は、本国の学校建築の流行をいち早く取り入れた例になる。
ハンセルは明治21年(1888年)に来日し、神戸の居留地を拠点に活動した建築家で、京都では同志社ハリス理化学館、神戸では旧ハッサム住宅などを手がけた。
見どころ:ダッチ・ゲーブルと白い石の帯
外観の主役は妻面である。南北に棟を通した切妻造の屋根3棟を並べ、それぞれの妻壁の上端を、反転する曲線でふち取ったダッチ・ゲーブル(オランダ破風)で仕上げている。京都登文会の解説では、外から見える特徴的な妻壁は7か所を数える。
赤い煉瓦の壁には白い石の帯がまわり、1階と2階の境などで色の対比を強めている。煉瓦はイギリス積で、建物の隅には特別な形の煉瓦を用いるなど、組積の技術も本格的である。
内部では、1階の玄関ホールからアーチを抜けて階段ホールへ進む。2階の講堂は、アーチに支えられた船底天井で、アーチをハンマービームが受ける。1階南西側の旧雨天運動場では、平成20年(2008年)の改修で煉瓦のアーチを鉄骨で補強している。室内の扉と窓の枠は落ち着いたミントグリーンで塗られている。
見学方法
平安女学院明治館は現役の校舎で、通常は見学できない。京都市京セラ美術館の資料も見学不可としている。
内部を見られるのは、京都モダン建築祭などの一斉公開の日に限られる。2026年は前期の10月31日と11月1日にパスポート公開の対象になっており、有料の建築祭パスポートが必要である。2023年の公開では撮影とウェブへの掲載が原則として認められ、学生や教職員が写り込まないことが条件だった。公開時間や撮影の条件は年ごとに変わるので、公式の案内で確かめたい。
明治館は校地の奥にあり、通りからは建物の全体を見通しにくい。ダッチ・ゲーブルが連なる正面を正対して見られるのは、公開日に構内へ入ったときである。
Q&A
- 平安女学院明治館はいつ建てられましたか?
- 平安女学院は平安女学院明治館の竣工を明治28年(1895年)としています。文化庁のデータベースは建築年代を明治27年(1894年)としています。
- 平安女学院明治館を設計したのは誰ですか?
- 英国出身の建築家アレクサンダー・ネルソン・ハンセルです。施工は清水組(現在の清水建設)が担当しました。
- 平安女学院明治館はどのような様式の建物ですか?
- 19世紀のイギリスで学校建築に好まれたクイーン・アン様式で、文化庁は日本におけるクイーン・アン・リバイバル様式の最初期の事例としています。妻面を飾るダッチ・ゲーブルが特徴です。
- 平安女学院明治館の内部は見学できますか?
- 通常は見学できません。京都モダン建築祭などの一斉公開で内部が公開されることがあり、2026年は10月31日と11月1日にパスポート公開の対象になっています。
- 平安女学院明治館の規模を教えてください。
- 煉瓦造2階建、瓦葺で、建築面積は370平方メートルです。京都市京セラ美術館の資料では延床面積を733.87平方メートルとしています。
基本情報
| 名称 | 平安女学院明治館 |
|---|---|
| 所在地 | 京都府京都市上京区下立売通室町東入五町目町178-2 |
| 指定区分 | 登録有形文化財(建造物) |
| 指定年 | 平成16年(2004年)6月9日登録 |
| 員数 | 1棟 |
| 寸法 | 煉瓦造2階建、瓦葺、建築面積370平方メートル |
| 所有者 | 学校法人平安女学院 |
| 公開状況 | 通常非公開(京都モダン建築祭などで内部公開あり) |
参考文献
- 国指定文化財等データベース(文化庁):平安女学院明治館
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00004140
- 文化遺産オンライン:平安女学院明治館
- https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/188870
- 学校法人平安女学院:明治館について
- https://head.heian.ac.jp/about/meiji
- 平安女学院大学:沿革
- https://www.heian.ac.jp/about/history/univ
- 京都市京セラ美術館:平安女学院明治館(MAK en 18)
- https://kyotocity-kyocera.museum/wp-content/uploads/MAK_en_18.pdf
- 京都登文会:平安女学院
- https://www.kyoto-tobunkai.org/catalogue/12.html
- 京都モダン建築祭2023:平安女学院大学 明治館
- https://kyoto2023.kenchikusai.jp/program/detail.php?id=2466
- 京都観光Navi(京都市観光協会):2026年京都モダン建築祭
- https://ja.kyoto.travel/event/single.php?event_id=7046
最終更新日: 2026.09.27