水がこの系に入る場所
どんな水道も、ひとつの起点から始まる。佐古配水場では、その起点が源水井である。配水場の登録建物三棟のうち最も小さく、建築面積はわずか21平方メートルほど。それでもここは、大正15年(1926年)に配水場が動き出したとき、徳島市で最初の近代水道へ原水が初めて入った地点だ。この井戸を理解することは、系全体がどう働き始めたかを理解することでもある。
構造はいたって明快である。下部に鉄筋コンクリート造の箱形の井があって水をたたえ、その上に小さな上屋がかかって取水口を覆い、収める。技術としては静かに野心的だった。東京帝国大学の技師・中島鋭治が設計したこの水道全体は、調査から完成までに17年、市の年間予算のおよそ3倍を費やしている。この控えめな井戸は、その不可欠な最初の環のひとつだった。
小さな建物の、確かな意匠
源水井をもう一度見たくなるのは、造り手が実用の建物を実用一辺倒で済ませなかったからだ。上屋は方形の平面をもつ。外壁には煉瓦を用い、パラペットや窓まわりといった要所に花崗岩を配している。この仕上げは近くのポンプ場と揃えられており、配水場の最も小さな部分までが、最も大きな建物と同じ設計言語で語られている。
この統一は選択だった。技術者たちは井戸をむき出しのコンクリートで覆うこともできたはずだが、そうはせず、赤煉瓦に淡い花崗岩を添える洋風の語法を、物置ほどの大きさの建物にまで持ち込んだ。ポンプ場や集合井と並べて見れば、源水井は、明らかにひとつの一族として読ませようとした一組を完成させている。
登録の理由
源水井は平成10年(1998年)10月、登録有形文化財に登録された。区分は、国土の歴史的景観に寄与しているもの。平成9年(1997年)に徳島県で最初の登録文化財となったポンプ場に一年遅れ、集合井とは同じ日に登録されている。
ここでの価値は、建築であると同時に記録としての意味をもつ。市の近代水道の誕生期に残る取水施設として、この井戸は、日常の都市生活の近代化が大正期にどのような形をとったかを示す。安全でない井戸水が長く公衆衛生を脅かしてきた町では、その変化はとりわけ大きな意味をもった。
文脈のなかで見る
源水井は、単独よりも一群の一部として味わうのがよい。その意味は、水道の工程における位置づけから生まれるからだ。まず、小さな方形の上屋が、より大きなポンプ場とどう呼応しているかを見たい。共通する煉瓦と花崗岩の扱いが、両者が一組であることを告げる。次に、規模の違いに目を向けたい。井戸は取水口を覆えばよく、重い機械を収める必要がなかった。その差が、機能の違いを映している。
三棟はいずれも現役の水道施設の一部で、配水場の敷地内にまとまって建つ。したがって見学は主に外観からとなり、事前に確認しておくのが確実だ。産業遺産や、近代都市を住めるものにした日々の技術に関心のある人にとって、源水井は小さくも雄弁な一例である。
Q&A
- 源水井とは何ですか。
- 佐古配水場の取水施設で、徳島市最初の近代水道へ原水が入った場所です。鉄筋コンクリート造の箱形の井に、小さな煉瓦張りの上屋がかかっています。
- こんなに小さな建物がなぜ文化財なのですか。
- 建築面積は21平方メートルほどですが、大正15年(1926年)の市最初の近代水道の当初からの構成要素であり、配水場と同じ煉瓦と花崗岩の意匠をもつことから、産業遺産として価値があります。
- ポンプ場との関係は。
- 同じ配水場の一部として建てられ、パラペットや窓に花崗岩を添えた煉瓦壁という意匠を共有します。取水という単純な機能を反映して、井戸ははるかに小さく造られています。
- いつ登録されましたか。
- 平成10年(1998年)10月に、集合井と同じ日、ポンプ場の一年後に登録されました。
- 見学はできますか。
- 現役の水道施設の一部で、他の建物とともに敷地内に建つため、見学は主に外観からとなります。事前の確認をおすすめします。
基本情報
| 名称 | 徳島市水道局佐古配水場源水井 |
|---|---|
| 所在地 | 徳島県徳島市南佐古6-3-11 |
| 指定区分 | 登録有形文化財(建造物)/登録年月日 平成10年(1998年)10月9日 |
| 登録番号 | 36-0008 |
| 建築年 | 大正15年(1926年) |
| 構造・員数 | 1棟/鉄筋コンクリート造上屋、内部に源水井を附属、建築面積約21㎡。煉瓦張りに花崗岩の縁取り |
| 所有者 | 徳島市上下水道局 |
| 備考 | 現役の水道施設。配水場の登録建物三棟のひとつ |
References
- 文化遺産オンライン ― 徳島市水道局佐古配水場源水井
- https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/147515
- 文化庁 ― 国指定文化財等データベース
- https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00000905
最終更新日: 2026.07.11